研究課題/領域番号 |
23KJ0922
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
荒井 宣裕 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
2024年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
2023年度: 800千円 (直接経費: 800千円)
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キーワード | 電気磁気四重極子 / 線形応答 / 空間非一様性 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、物性物理学において電子の波動関数のトポロジーに起因して出現する「トポロジカル物性」が盛んに研究されている。トポロジカル物性において磁性の果たす役割が大きいことが認知されている一方で、それと磁気多重極子との関係は明らかではない。そこで、本研究では磁気多重極子に起因する応答理論を構築し、そのトポロジカル物性への寄与を明確にする。また、磁気秩序に起因する応答理論を定性的に説明し、それを実現する物質を探索することも目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は以下の二つの内容について研究を行った。 第一に、電気四重極子の量子論について、非一様な系における分極の観点から考察した。四重極子は角電荷とのバルクエッジ対応について盛んに研究されている。一方で、四重極子はその空間勾配が分極を生むという性質をもち、我々はその観点から研究を行った。同様の試みが半古典論を用いて行われているが、そこでは電荷密度から分極を計算しているため、回転の自由度が残っている。そこで、本研究では、非一様性を空間座標に比例する外場として導入し、それに誘起される電気分極の式を直接計算した。そして分極が、局所的なハミルトニアンと、ハミルトニアンの非一様性の二つの寄与から構成されることを明らかにした。また、我々の結果と、先行研究で提案された四重極子の式を比較し、その物理的意味について議論を行った。 第二に、一次元量子スピン系の問題において重要な役割を担って来た、半古典的有効理論とLieb-Schultz-Mattis (LSM) 定理の関係について考察した。LSM定理は低次元磁性体の基底状態について、励起ギャップの有無を判定するものであり、半古典的有効理論とともに、より現代的な視点から理解を深める意義がある。そこで、我々はZhang-Schulz-Ziman (ZSZ)理論におけるゲージ変換を用いて、トポロジカル項を持つ非線形シグマ模型が、LSMの方法が明らかにする基底状態に関する情報を含むことを明らかにした。また、ZSZ理論の立体角によるゲージ変換と、LSM定理におけるゲージ変換の違いについて議論を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は磁気四重極子より物理描像がシンプルな電気四重極子の量子論について研究を行った。非一様な系における電気分極の表式を量子論で計算し、その起源を明確にすることができた。先行研究で定義された電気四重極子との対応関係についても調べることができ、上記の内容については学会発表を行った。 一方で、一次元磁性体の基底状態におけるトポロジカルな性質の有無を判定するLSM定理についても研究を行い、その内容について学会発表を行った。我々が行った、LSM定理についてより現代的な視点から俯瞰する研究は、磁性とトポロジカル物性に関する包括的な理論をつくるにあたって有意義なものである。
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今後の研究の推進方策 |
今までは電気四重極子について研究を進めてきたが、その内容を論文にまとめた後、磁気四重極子の量子論についての研究に取り掛かる。現在まで行ってきた電気四重極子の研究に沿って、非一様な系における軌道磁化の表式を導出し、それと先行研究で定義された軌道磁気四重極子との関係を明確にする。LSM定理に関する研究については、本年度得られた一次元磁性体に関する研究成果を、二次元量子スピン系に拡張することを目標に研究を行う。
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