研究課題/領域番号 |
23KJ0950
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分27020:反応工学およびプロセスシステム工学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
巽 由奈 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 医薬品共結晶 / 脂質 / 高圧二酸化炭素 / 分光イメージング法 |
研究開始時の研究の概要 |
体内における医薬品成分の溶解性向上を目的とした医薬品共結晶の形成について, 人体への安全性が高い脂質と無毒な超臨界二酸化炭素を組み合わせ, 脂質中に二酸化炭素が溶け込んで形成される混合相を活用することで, 脂質と共結晶の複合体である脂質メディア共結晶の高速形成を達成する. また, 「超臨界二酸化炭素による脂質の抽出技術」を応用し, 脂質メディア共結晶の脂質含有量を制御することで, 医薬品成分の溶解性を精密に制御・デザインする.
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研究実績の概要 |
本研究では、医薬品成分(原薬)の溶解性改善を目的とした医薬品共結晶に関し、共結晶の高速形成場・共結晶中の原薬の溶解制御性の双方の達成が期待される添加剤として、脂質の活用に着目している。今年度は、前者の共結晶の高速形成場に関し、脂質を活用した共結晶の形成[1]と、後者の原薬の溶解制御性に関し、脂質添加による共結晶の溶解メカニズムの解析[2]を試みた。 [1]共結晶形成:超臨界CO2雰囲気下で液体脂質を添加し形成される「液体脂質相中へCO2分子が入り込んだ混合相」を、共結晶の形成場として用いることで抗真菌薬Itraconazoleの共結晶形成に成功した。超臨界CO2と似た溶媒特性を有するHexaneの活用時は共結晶が形成されなかったことから、CO2分子が関与する媒体環境が共結晶形成に作用した可能性がある。 [2]溶解メカニズム解析:メカニズム解析のため固相の結晶形変化を解析することを目標とした。そのために、成分分布の可視化を可能とする全反射フーリエ変換赤外分光法を用いたイメージング技術に着目した。試料と水の接触界面へイメージング法を適用して、溶解中の原薬分布の経時変化・固体試料の赤外スペクトルの経時変化を追跡し、メカニズム解析を試みた。その結果、共結晶と原薬単体の比較に関し、原薬の分布画像の経時変化より、共結晶中の原薬はその溶解速度が非常に速いことが示された。赤外スペクトルの経時変化から、原薬が水と接触することで生じる水和反応が確認され、その水和化により原薬の溶解速度が低下したことが示唆された。さらに脂質を形成場として作製した共結晶に関し、脂質が共存することで原薬の水和反応が抑制されることが示唆された。 以上の研究成果をまとめ、国内外で研究発表を行った。研究[1]に関し、筆頭著者として1報の学術論文を発表した。また研究[2]に関し、筆頭著者として1報の学術論文を投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脂質を活用した共結晶の高速形成において、脂質のみの利用では形成されなかった抗真菌薬Itraconazoleの共結晶形成に関し、超臨界二酸化炭素と脂質の共利用により形成に成功した。また共結晶の溶解挙動の解析において、溶解中の固相の結晶形変化を追跡したことで、脂質が共存することで原薬の水和反応が抑制され、高い原薬濃度を保つことが示唆された。このように、脂質を活用することで共結晶の形成が促進されるだけでなく、共結晶の溶解性も改善されるといった成果が得られている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究より、脂質を活用した共結晶の形成に関して、超臨界CO2と脂質の共利用が共結晶形成に有効であることがわかった。そこで今後は量子化学計算と熱力学モデルを融合することで、超臨界CO2と脂質の融合媒体中における共結晶の形成メカニズムの解析を図る。それにより、共結晶の高速形成を指向した媒体のデザイン指針の確立を目指す。
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