研究課題/領域番号 |
23KJ0952
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
ARAUJO DIAS ANTONIO JUN 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2025年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 光化学 / 反応開発 / 長波長光 |
研究開始時の研究の概要 |
有機金属錯体は、有機化合物の中で最も多く存在する炭素-水素(C-H)結合を有用な官能基に変換する「C-H結合官能基化反応」の触媒として幅広く利用されている。近年は金属錯体と光励起を組合せた新規反応系が注目されているが、未だに適応できる基質が制限されている。そこで、本研究では光エネルギーを直接吸収・利用できる新規有機金属触媒を創製することで、基質に依存しない幅広いC-H結合官能基化反応を実現する。具体的には、錯体の ①光吸収の増大と②光吸収波長の長波長化 の2つを実現することにより、基質に依存することなく光励起状態を作り出すことを計画している。
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研究実績の概要 |
長波長光を化学反応のエネルギー源としてより効率よく利用するべく、次世代のハーフサンドイッチ型錯体の創製を計画した。まず始めに、長波長光の吸収を期待して設計したアセナフチレン縮環型シクロペンタジエニル配位子を合成した。本配位子を用いてロジウム錯体を合成した結果、目的物の生成は検出できたものの、錯体の溶解性および空気安定性が低く、精製が困難であり、高純度の錯体を得ることはできないことがわかった。そのため、他にデザインした錯体も溶解性や安定性の観点から精製が困難であると予想している。 一方、並行して着手したロジウム触媒を用いた長波長光での反応探索では、電子不足な修飾シクロペンタジエニルロジウム錯体(CpE)を用いることで、アセタニリドの酸化的オレフィン化が緑色光(~520nm)で進行することを見出した。この反応は空気中、室温、添加剤無添加という、非常に温和な条件で進行する。また、触媒を再設計することなく、反応中間体が長波長吸収することにより反応が進行していると考えている。 さらに、反応探索を行っていたところ、新たに金属触媒を必要としない長波長光を用いた分子変換反応を見出した。具体的には、緑色光(~520nm)や赤色光(~600nm)を用いることで、N-Cl結合をもつ特定の化合物の光分解が進行し、対応するラジカルを発生でき、ラジカル反応に応用できることを発見した。従来の分光学的測定ではそのような長波長での吸収は見られず、ごくわずかな長波長光吸収が存在することを初めて明らかにした。現在論文投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
電子不足な修飾シクロペンタジエニルロジウム錯体(CpE)を用いることで、アセタニリドの酸化的オレフィン化が緑色光(~520nm)で進行することを見出した。この反応は空気中、室温、添加剤無添加という、非常に温和な条件で進行する。本知見を足がかりとすることで、より多様多種な分子変換反応に対して、「長波長光を化学反応のエネルギー源としてより効率よく利用する」という目的が実現できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
電子不足な修飾シクロペンタジエニルロジウム錯体(CpE)および緑色光(~520nm)を利用したアセタニリドの酸化的オレフィン化について、今後詳細な反応機構の解析や基質適応範囲の調査を行う。 また、緑色光(~520nm)や赤色光(~600nm)を用いたN-Cl結合をもつ化合物の光分解について、引き続き現象の解明と光反応への応用を行う予定である。
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