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本質的な酸素空孔の幾何学的配列に注目した新型イオン伝導体の探索と構造物性

研究課題

研究課題/領域番号 23KJ0953
研究種目

特別研究員奨励費

配分区分基金
応募区分国内
審査区分 小区分26020:無機材料および物性関連
研究機関東京工業大学

研究代表者

齊藤 馨  東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2023-04-25 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2025年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
キーワードプロトン伝導体 / 新物質 / ペロブスカイト / 結晶構造解析 / 第一原理分子動力学シミュレーション / 中性子準弾性散乱
研究開始時の研究の概要

本課題では,従来の高イオン伝導体の材料設計法である「ドーピングによる伝導度向上」と全く異なる新しい手法「本質的な酸素空孔と,その幾何学的配列」に注目し,新型イオン伝導体を探索する.申請者は 1 次元,2 次元,3 次元と孤立した配列等の「本質的な酸素空孔の特異な幾何学的配列」を持つ物質を探索する事を着想した.候補材料の合成と電気化学測定により新型イオン伝導体を探索する.200 °C で実用化に必要となる 0.01 S cm-1 のイオン伝導度を目標とする.中性子・放射光 X 線回折構造解析と理論計算により,酸素空孔の配列と伝導度の関係を調べ新しい構造物性分野を確立する.

研究実績の概要

本課題は従来の高イオン伝導体の材料設計法である「アクセプタードーピングによる伝導度向上」とは全く異なる新しい手法「本質的な酸素空孔の幾何学的配列に着目した新型高イオン伝導体の探索」を提案して実証すること,イオン伝導の構造的要因を明らかにすることを目的としている.2023年度は,新規プロトン伝導体を発見し,高いプロトン伝導度を示す要因を熱重量分析,中性子回折,第一原理分子動力学シミュレーションにより解明した.プロトン伝導体は,プロトン(H+)が伝導する物質であり,水素ポンプやプロトンセラミック燃料電池など幅広い応用のある,クリーンエネルギー材料として期待されている.プロトン伝導度を向上させる従来の戦略はアクセプタードーピングである.しかし,アクセプタードーピングはアクセプター近傍におけるプロトントラッピングを引き起こし,プロトン伝導度が中低温で低くなる課題があった.一方で近年,従来戦略とは大きく異なる「本質的な酸素空孔」という新戦略で新しいプロトン伝導体がいくつか報告されている.しかしながら,研究は二次元に規則化した本質的な酸素空孔を持つ材料に集中していた.本課題では,三次元に不規則化した本質的な酸素空孔を持つ材料BaScO2.5に着目し,研究を行った.新物質であるMoドナーを添加したBaScO2.5が世界最高のプロトン伝導度を示すことを発見し,その要因を解明することで,「不規則化した本質的な酸素空孔を持つ酸化物へのドナードーピング」というプロトン伝導体の新しい設計戦略を提案・実証することが出来た.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本課題は世界最高のプロトン伝導度を示す新物質を発見しているだけではなく,その伝導メカニズムを明らかにすることにより,従来戦略とは全く異なる新しい材料設計戦略の提案まで行っており,当初の計画以上に進展している.
不規則化した本質的な酸素空孔を持つBaScO2.5にMoドナーを添加したBaSc0.8Mo0.2O2.8は,中低温で世界最高のプロトン伝導度を示すことが明らかになった.BaSc0.8Mo0.2O2.8は化学的安定性も高いことが分かった.中性子回折データを最大エントロピー法により解析して中性子散乱長密度分布を得ると,デューテロンがサイト間で連結しており,プロトンのホッピングが示唆された.また,結合原子価法により得られたプロトンのエネルギー等値面は三次元のプロトン拡散経路を示しており,BaSc0.8Mo0.2O2.8における不規則化した酸素空孔が三次元のプロトン拡散を可能にしている.BaSc0.8Mo0.2O2.8の拡散係数の活性化エネルギーを見積もると,従来のアクセプタードーピングされたプロトン伝導体に比べてBaSc0.8Mo0.2O2.8の活性化エネルギーが低く,プロトントラップの軽減が示唆された.第一原理シミュレーションを行うと,Mo6+ドナーとプロトンH+の反発が示され,プロトントラップの軽減を支持している.本成果はハイインパクトジャーナルNature Communicationsに掲載され,プレス発表も行い,日刊工業新聞・科学新聞・Chem-Stationなどに取り挙げられた.この成果により国際会議・国内会議で発表を行った.2023年度の学会等での受賞は4件にもなっている.以上の理由により,研究は当初の計画以上に進展していると言える.

今後の研究の推進方策

2023年度は不規則化した本質的な酸素空孔を持つBaScO2.5にMoドナーを添加したBaSc0.8Mo0.2O2.8を発見することに成功した.この成果は従来の高イオン伝導体の材料設計法である「アクセプタードーピングによる伝導度向上」とは全く異なる新しい手法「本質的な酸素空孔の幾何学的配列に着目した新型高イオン伝導体の探索」により実現された.2024年度以降は本質的な酸素空孔を持つより多くの新物質を探索することに挑戦していく.本質的な酸素空孔を含むプロトン伝導体や酸化物イオン伝導体の伝導機構は殆ど研究されておらず,構造物性の研究も多くの成果が上がると期待できる.
材料探索の結果,BaSc0.8Mo0.2O2.8よりプロトン伝導度の高い新物質も複数発見しつつあるので,これまで同様中性子回折により静的な構造を調べるとともに,実験的な中性子準弾性散乱と第一原理分子動力学シミュレーションを組み合わせることにより動的な構造を調べ,新しい構造科学分野を切り開いていく.また,実用化に向けた研究を国際的な共同研究により推進していく.国際学会・国内学会にも積極的に参加し,国際的なプレゼンスも高めていく予定である.

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (19件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (16件) (うち国際学会 3件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Structural and electrical properties of Bi3GaSb2O11 at high temperatures2024

    • 著者名/発表者名
      Matsuzaki Kohei、Zhang Wenrui、Saito Kei、Fujii Kotaro、Yashima Masatomo
    • 雑誌名

      Journal of Solid State Chemistry

      巻: 329 ページ: 124380-124380

    • DOI

      10.1016/j.jssc.2023.124380

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] High proton conductivity within the ‘Norby gap’ by stabilizing a perovskite with disordered intrinsic oxygen vacancies2023

    • 著者名/発表者名
      Saito Kei、Yashima Masatomo
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 14 号: 1 ページ: 7466-7466

    • DOI

      10.1038/s41467-023-43122-4

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] イオン伝導体の機能コアの解明と新材料探索2024

    • 著者名/発表者名
      齊藤馨,藤井孝太郎,作田祐一,松崎航平,安井雄太,八島正知
    • 学会等名
      新学術領域研究「機能コアの材料科学」2023年度公開シンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 不規則化した「本質的な酸素空孔」を持つペロブスカイトの安定化によるNorby gap内の高いプロトン伝導度2024

    • 著者名/発表者名
      齊藤馨,八島正知
    • 学会等名
      日本金属学会2024年春期講演大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 完全に水和する六方ペロブスカイト関連酸化物の高プロトン伝導2024

    • 著者名/発表者名
      松崎航平,藤井孝太郎,齊藤馨,池田陽一,南部雄亮,八島正知
    • 学会等名
      日本金属学会2024年春期講演大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 酸素欠損が多い新規ペロブスカイトの完全水和による高プロトン伝導2024

    • 著者名/発表者名
      梅田健成,齊藤馨,藤井孝太郎,森一広,八島正知
    • 学会等名
      日本セラミックス協会2024年年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 大量の酸素空孔を含む物質に着目した新規超イオン伝導体の創製2024

    • 著者名/発表者名
      八島正知,作田祐一,齊藤馨,藤井孝太郎
    • 学会等名
      日本セラミックス協会2024年年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Discovery of Novel Proton Conductors with 'Intrinsic Oxygen Vacancy’2023

    • 著者名/発表者名
      齊藤馨,藤井孝太郎,八島正知
    • 学会等名
      学術変革A「超セラミックス」領域会議
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 本質的な酸素空孔を持つ新規プロトン伝導体の発見2023

    • 著者名/発表者名
      齊藤馨,八島正知
    • 学会等名
      機能コア若手の会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 構造解析による機能発現メカニズム解明2023

    • 著者名/発表者名
      松崎航平,張文鋭,藤井孝太郎,齊藤馨,八島正知
    • 学会等名
      学術変革A「超セラミックス」領域会議
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Discovery of Novel Proton Conductors with 'Intrinsic Oxygen Vacancy'2023

    • 著者名/発表者名
      Kei Saito, Kotaro Fujii, Masatomo Yashima
    • 学会等名
      IUCr2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Discovery of a New Structural-Type Oxide-Ion Conductor by Screening2023

    • 著者名/発表者名
      Kohei Matsuzaki, Wenrui Zhang, Kotaro Fujii, Kei Saito, Masatomo Yashima
    • 学会等名
      IUCr2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Discovery of Novel Proton Conductors with 'Intrinsic Oxygen Vacancies'2023

    • 著者名/発表者名
      Kei Saito, Masatomo Yashima
    • 学会等名
      SSPC-21
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] ペロブスカイト型新物質の発見とNorby gapにおける超高速プロトン伝導2023

    • 著者名/発表者名
      齊藤馨,八島正知
    • 学会等名
      日本セラミックス協会第36回秋季シンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Bi3GaSb2O11の高温における電気・構造特性2023

    • 著者名/発表者名
      松崎航平,張文鋭,藤井孝太郎,齊藤馨,八島正知
    • 学会等名
      日本セラミックス協会第36回秋季シンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 酸化物イオン伝導性新物質の発見2023

    • 著者名/発表者名
      青木望, 矢口寛, 齊藤馨, 松崎航平, 藤井孝太郎, 八島正知
    • 学会等名
      第39回日本セラミックス協会関東支部研究発表会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 新規ペロブスカイトの発見とNorby gapにおける高プロトン伝導度2023

    • 著者名/発表者名
      齊藤馨,八島正知
    • 学会等名
      第49回固体イオニクス討論会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 不規則化した「本質的な酸素空孔」を持つペロブスカイトの安定化によるNorby gap内の高いプロトン伝導度2023

    • 著者名/発表者名
      齊藤馨,八島正知
    • 学会等名
      第一回水素が関わる材料科学の課題共有研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] 中低温域で世界最高のプロトン伝導性を示す新規酸化物を発見

    • URL

      https://www.titech.ac.jp/news/2023/067853

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2023-04-26   更新日: 2024-12-25  

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