研究課題/領域番号 |
23KJ0997
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分80010:地域研究関連
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
川上 香 総合研究大学院大学, 文化科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 山村 / 焼畑 / 在来作物 / 地カブ / 常畑 / 緑肥 |
研究開始時の研究の概要 |
日本の山村は、人口減少や高齢化などで衰退が進んでいるが、自給的農耕は現在も持続している。しかし、その実態は、自給用で小規模なため掴みにくく、自給的農耕と在来作物の持続理由は十分に解明されてこなかった。そこで本研究では、1950年代から2020年代までの農耕の変化を、焼畑の衰退や山村の変容、個人の土地利用の変化などから明らかにし、在来作物が、山村の生活と自給的農耕をいかに支えてきたのかを考察する。
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研究実績の概要 |
研究実施計画書に基づいて、春と秋に静岡市上坂本集落に通算28日間滞在し、農耕の参与観察を行いながら、土地利用、栽培技術、作物の変化などについて聞き取り調査を行った。また、上坂本集落と比較するため、古くから井川地域との交流があったと伝えられている飯田市上村下栗集落の巡検と聞き取り調査を実施した。 上坂本集落の自給的農耕と在来作物栽培の継承理由を解明するため、以下の項目と内容について調査した。 1)土地利用の変化と持続について、焼畑が行われていた範囲や、焼畑衰退後の耕作地の変化、現在維持されている複数の常畑の場所や面積について確認した。2)栽培技術の変化と持続について、緑肥の内容の変化や、焼畑衰退後の常畑の輪作や連作方法などを世帯ごとに調査した。3)作物の変化と持続について、現在栽培している商業品種と在来作物の種類、その種苗の保存や調達方法、料理を主とした在来作物の利用方法、在来作物の植物的特徴を聞き取り調査した。 この他に、高齢化した栽培者の農作業を支援している市街地の親族から、支援内容や、広範囲に維持されている茶畑の栽培方法と加工方法などについて聞き取り調査を行った。更に獣害の激化によって耕作地が限定されつつある現状を確認し、耕作が行われている16か所の常畑について、2023年5月から6月の作物ごとの作付け範囲を記した略図を作成した。この結果、現在は、主に親族への贈答を目的とした耕作が行われていることがわかった。また、これまでに、在来作物の地カブの栽培方法を明らかにしてきたが、地カブだけでなく、カキナと呼ばれる在来カラシナもこぼれ種子を用いて常畑で栽培されており、それぞれの菜花が咲く時期が違うことを利用して、3月中旬から6月上旬までの長期間、ニホンミツバチの蜜源に用いていることが明らかになった。学会でポスター発表を行い、在来作物と生業の結びつきの一例を示すことができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年は、にし阿波地域で土地利用についての比較調査を計画していた。しかし、上坂本集落での具体的な農作業支援や、茶栽培、椎茸栽培などの参与観察を行えることとなったため2024年に行う予定であった、これらの調査を前倒して行った。また、常畑の複数か所の栽培内容の観察と聞き取り調査が進捗したため、上坂本集落の農耕の現状を把握することに集中して調査を進めた。調査内容を変更する形となったが、結果的に調査が進捗し、在来作物と生業の結びつきを学会でポスター発表できたことなどから、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
山村の土地利用、栽培技術、作物栽培の変化と持続を、過去半世紀以上に渡って通時的に調査している。自給的農耕と在来作物の栽培継承の要因の解明のためには、これらのデータを検討して考察することが重要である。一方、現在の農耕の持続要因については、高齢化した栽培者世帯を支える、市街地の親族との関係や、最近の獣害の激化、気候変動について栽培者世帯がどのように対応しているかについても視野に入れる必要があることがわかった。これらの内容は各世帯ごとに多様であるため、聞き取り調査を更に行って現状を把握する必要がある。
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