研究課題/領域番号 |
23KJ1017
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分26040:構造材料および機能材料関連
|
研究機関 | 長岡技術科学大学 |
研究代表者 |
野田 大智 長岡技術科学大学, 工学(系), 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2025年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
|
キーワード | 水酸アパタイト / 生体鉱化機構 / 有機無機複合界面 / ナノバイオ材料 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、高い生体安全性と発光特性をもつナノ粒子創製により微小がん部位のイメージングと治療を両立する。先ず、ポルフィリン (Por) を水酸アパタイト (HAp) のリン酸サイト置換によって表面へ固定した『Por固定HApナノ粒子』を創製する。その後、Por-HAp複合状態を制御し、最適な発光特性を見出す。最後に、がん細胞へ特異的に取込される分子をナノ粒子表面のカルシウムサイトへ配位させ、がん細胞の標的・診断・治療の3つの機能を結集したHApナノ粒子を創製する。そして、微小がんのみを高感度に光検出し、その場でPorの光増感に伴う一重項酸素によりがん細胞のみを死滅するナノ粒子として実用する。
|
研究実績の概要 |
本年度は水酸アパタイト(HA)表面にがん治療分子であるポルフィリン(Por)を固定し、またそのPorの分子状態を制御することに取り組んだ。具体的に、生体骨鉱化機構を模倣しカルシウム欠損型HA(CDHA)と炭酸含有水酸アパタイト(CHA)にTCPPと呼ばれるPorを導入して、TCPPが粒子表面に垂直または平面配向することを見出した。この研究成果を第25回生体関連セラミックス討論会で発表し、日本セラミックス協会より、若手優秀研究発表賞を受賞した。また、この研究に関連して、がん診断が可能なクエン酸被覆ユウロピウムドープHA粒子の発光色制御についても研究を行い、ACS Appl. Nano Materにて発表した。さらに、有機分子だけでなくタンパク質も同様のメカニズムで立体性の制御が可能であることを見出し、第29回高専シンポジウムin Nagaokaで発表した。さらに、より生体骨の構造に近づける研究として、HAナノ粒子と生体高分子であるヒアルロン酸のナノハイブリッド化を行った。具体的に、生体骨に含まれるコラーゲン、HA、介在分子を模倣し、ヒアルロン酸、HA、Citをモデル分子として用い、ナノハイブリッド化を行った。この研究成果によりMaterials Advancesに掲載された。 並行して、がん細胞に特異的に結合する分子として葉酸(FA)に着目し、HA表面に固定する研究にも取り組んだ。先のTCPP吸着形態制御技術を用い、CDHAの核形成段階と、粒成長段階でのFA導入を行い、FAの垂直または平面配向制御を達成した。この研究成果を、第12回日本バイオマテリアル学会 北陸信越ブロック若手研究発表会で報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は水酸アパタイト表面にがん治療分子であるポルフィリン(Por)を固定し、またそのPorの分子状態を制御することに取り組んだ。また、がん細胞に特異的に結合する分子として葉酸(FA)に着目し、HA表面に固定した。 Porとして、α,β,γ,δ-tetrakis(4-carboxyphenyl)porphyrin(TCPP)を用いた。TCPP固定HAの合成は生体骨鉱化機構を模倣し、カルシウム欠損型水酸アパタイト(CDHA)と炭酸含有水酸アパタイト(CHA)の核形成段階で、TCPPを加えた。評価はXRF、光吸収スペクトル、蛍光スペクトル、内部蛍光量子収率、一重項酸素生成効率によって行った。XRFの結果よりTCPP/HA間相互作用を評価したところ、CDHAへはリン酸イオン置換、CHAへはCaイオン配位によってTCPPが固定されたと示唆された。その後、光吸収スペクトル、蛍光スペクトルよりTCPPの固定状態を評価したところ、CDHA表面ではTCPPが垂直分子配向しており、CHA表面では平面分子配向していることが分かった。以上より、本年度の目標であった。水酸アパタイト表面にポルフィリン(Por)を固定し、またそのPorの分子状態を制御を達成した。 FA固定HAの合成は、CDHAの核形成段階でFAを導入した場合とCDHA合成後にFAを導入した場合の2種類を行った。評価は、UV-vis光吸収スペクトルとXRFにて行った。UV-visより,核形成段階でFAを導入した場合ではFAが垂直に固定されたと推察された。CDHA合成後にFAを導入した場合,FAが平面的に固定されたと考えられた。さらに、核形成段階でFAを導入した試料ををTCPP水溶液(100μM)に浸漬したところ、FAに加えてTCPPに由来する吸収が得られたことから、FAとTCPPの共吸着が可能であるという知見を得た。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度は、ポルフィリン(Por)の分子状態を制御して水酸アパタイトナノ粒子表面に固定する技術を確立した。本年度は、この技術を用いて創製した「生体安全性の高いPor固定HApナノ粒子」において、表面のカルシウム(C)サイトへがん細胞特異結合分子である葉酸を固定する技術を確立する。葉酸の分子配向を制御して、がん細胞結合部位を再表面に露出させ、効率的にがん細胞へ取込させるために、固定分子の密度を制御する。以上によりがん細胞の標的・診断・治療の3つの機能を結集したHApナノ粒子の創製を達成する。
|