研究課題/領域番号 |
23KJ1075
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分28030:ナノ材料科学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
李 旭 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 酸化物準結晶 / 走査型トンネル顕微鏡 / X線光電子分光 / 密度汎関数理論 / 第一原理計算 / 光電子ホログラフィー |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、Pt(111)及びIr(111)表面上に希土類金属(セリウム、イッテルビウム、ランタン)酸化物準結晶と近似結晶超薄膜を創製する。LEED-AES-XPS-STM-RBS法から、酸化物準結晶超薄膜のクラスターと対称性、各元素の組成比、表面原子密度と化学結合状態を明らかにし、構造モデルを構築する。さらに、サファイア表面上Pt(111)の薄膜表面上に希土類酸化物準結晶多層薄膜を創製する。STMを用いて、近藤効果とスピン間の相互作用を評価する。また、XASなどを用いて、希土類酸化物準結晶と近似結晶の電子状態、バンド状態また磁性を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、希土類酸化物準結晶と近似結晶超薄膜を創製することと、酸化物準結晶多層薄膜の磁性と誘電性の物性開拓をすることを目的とする。 超高真空チャンバー内でPt(111)表面上にCe-Ti-O準結晶関連構造薄膜とYb-Ti-Oハイパーマテリアルを作製した。Ce-Ti-O準結晶関連構造に対して、オージェ電子分光から計算した組成比を明らかにし、X線光電子分光、X線吸収分光、ラザフォード後方散乱分光から計算した原子密度と化学結合状態を明らかにした。実験データに基づいて、構造の対称性を考慮して、構造モデルを提案した。2023年、Ce-Ti-O準結晶関連構造の内容を論文にまとめて投稿した。また、2023年10月、フランスのロレーヌ大学に2週間訪問し,共同研究を始めた。ロレーヌ大学のEXPLOR センターのスーパーコンピューターを用いて、密度汎関数理論に基づく第一原理計算による構造最適化、構造の安定性、磁性とSTMシミュレーションを行っている。 酸化物準結晶の磁性と誘電性の物性開拓するために、2023年3月から、名古屋大学工学研究科の山田先生の協力で、高周波スパッタ蒸着を使って、サファイア(0001)表面上に200 nm厚さの白金を蒸着した。そして、Pt(111)/サファイア(0001)表面上にCe-Ti-O準結晶関連構造薄膜とYb系のハイパーマテリアルを作製できたことが確認できた。 また、並行実験として、Pt(111)以外のIr(111)単結晶基板を用いて、表面上に0.5 ML のCeと0.8 MLのTiを蒸着し、600℃での酸素雰囲気加熱と700℃での真空加熱を行うことでCe-Ti-O薄膜を作製した。現時点では、Ce-Ti-O準結晶関連構造に近いLEEDスポットが観察されたが、スポットはシャープではない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの進捗状況の自己点検による評価は、おおむね順調に進展しているである。理由としては、①超薄膜試料作製が期待通りである②準結晶関連構造の分析方法が予想以上挑戦し進めている③新しい準結晶超薄膜はまだ発見されてなかったことである。 ①超薄膜試料作製が期待通りである:超高真空チャンバー内でPt(111)表面上にCe-Ti-O準結晶関連構造薄膜とYb-Ti-Oハイパーマテリアルを作製した。また、Pt(111)/サファイア(0001)表面上にもCe-Ti-O準結晶関連構造を作製できた。 ②準結晶関連構造の分析方法が予想以上挑戦し進めている:Ce-Ti-O準結晶関連構造を分析するために、あいちシンクロトロン光センターで共鳴光電子分光とX線吸収分光を用いて、各元素の化学結合状態を明らかにした。Spring 8 のBL25SUで、橋本先生(奈良先端大) 、木下先生(SPring-8)、松下先生(奈良先端大)と共同研究をし、光電子ホログラフィーを測定し、構造モデルを決定する。また、理論計算も合わせて準結晶関連構造のモデルを議論している。ロレーヌ大学のEXPLOR センターのスーパーコンピューターを用いて、密度汎関数理論に基づく第一原理計算による構造最適化を計算している。 ③新しい準結晶超薄膜はまだ発見されてなかった:現時点で、Ce-Ti-O準結晶関連構造とYb-Ti-Oハイパーマテリアが創製された。しかし、Yb-Ti-Oハイパーマテリアの高分解能STM像はまだ取っていないため、原子配列はどうなるのかわからない。また、希土類金属酸化物準結晶はまだ観察されなかった。Ba-Ti-O酸化物準結晶と違う新しい準結晶超薄膜はまだ作製されていない。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の2024年度の実施計画は以下のとおりである。①光電子ホログラフィー測定によって、セリウム準結晶関連構造のモデルを決定する。また、DFT計算によって、Ce-Ti-O準結晶関連構造の最適化、構造の安定性、磁性とSTMシミュレーションを行う。②サファイア(0001)表面上の白金薄膜表面上に、イッテルビウム系酸化物準結晶関連構造超薄膜の創製と構造の解明する。③Ir(111)表面上にセリウムやイッテルビウム系酸化物準結晶と近似結晶超薄膜の創製する。 これらを遂行するための今後の推進方策は以下のとおりである。 ①2023年11月、Spring 8 のBL25SUで、ピーク観測とホログラム観測において感度よく測定するために、超薄膜試料専用の新しい試料ホルダーを設計した。今後は新しい試料ホルダーを用いてCe-Ti-O準結晶関連構造を測定する予定である。また、DFT計算も順調に進んでいる。したがって実施に問題はない。 ②今後準結晶薄膜の物性を評価するために、サファイア(0001)表面上の白金薄膜表面上に、イッテルビウム系酸化物準結晶関連構造超薄膜を作製する。現在既にCe-Ti-O準結晶関連構造が作製できたため、イッテルビウム系に対して実施に問題はない。 ③現時点では、Ce-Ti-O準結晶関連構造に近いLEEDスポットが観察されたが、スポットはシャープではない。今後はCeとTiの蒸着量を調整し、酸化物準結晶を創製する予定で、実施に問題はない。
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