研究課題/領域番号 |
23KJ1076
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分63010:環境動態解析関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
江刺 和音 名古屋大学, 環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | アイスコア / 鉱物粒子 / ダスト / ヒマラヤ / 山岳氷河 / エアロゾル |
研究開始時の研究の概要 |
ネパール・ヒマラヤで掘削された山岳氷河アイスコアを用いて、特に鉱物粒子に着目して分析を行い、過去数百年間における大気循環変動を復元することを目的とする。アイスコア中の不溶性微粒子は粒径別に定量分析を行うことで局所的な供給と遠距離輸送とを区別し、再解析気象データや氷河の現地観測データを用いて、エアロゾル輸送を駆動する大気環境を推定する。また、この過程において、融解の影響を受けたアイスコアの年代決定法の確立とアイスコア中成分の沈着後の変質過程の解明を目指す。
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研究実績の概要 |
2023年度は主にアイスコア中の鉱物粒子(ダスト)の定量分析を行なった。昨年までに山岳氷河のダスト高濃度サンプルの分析手法を確立したため今年度は円滑に分析を行うことができた。81.2mのアイスコア全層に相当する1437試料の測定を完了し、過去146年間のダスト濃度プロファイルを明らかにした。測定の結果、本研究のトランバウ(TB)氷河コアのダスト濃度は近隣のアイスコアと比較して2-12倍高濃度で、粒径サイズは約30%小さく、TBサイトには微小粒子が大量に供給されていることが分かった。また、TBコアのダスト濃度は1880年代に最大濃度を示し、1900年以降現在にかけて増加傾向にあることも明らかになった。2023年秋以降はダスト濃度の増減の要因推定のため、再解析気象データを用いた大気場解析や気候指数との比較解析を行なった。その結果、TBコアのダスト濃度はAMO(Atmospheric Multi-decadal Oscillation:大西洋数十年規模振動)の位相の正負に同期して20-30年周期で増減していることが明らかになった。再解析気象データを用いた解析から、ダスト供給源と考えられる地域の地表面の乾湿状態がAMOの位相に応じて変化し、それがTBサイトへのダスト供給量に影響を与えていることが考えられた。これらの成果をまとめて、学会発表を3件(うち国際学会2件)行った。 2023年10-11月にはネパール・ヒマラヤ、トランバウ氷河において氷河観測を実施した。2019年にアイスコアを掘削した標高5860m地点において水同位体比分析用の積雪試料のサンプリングを行い、アイスコアのデータ解釈の補助となる試料を取得した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の主題である鉱物粒子(ダスト)の定量分析を全長81mのアイスコア全層について完了し、先行研究がほぼないヒマラヤ山脈南斜面における過去146年間のダスト濃度プロファイルを明らかにすることができた。また、ネパール・ヒマラヤ、トランバウ氷河において氷河観測を実施し、アイスコア解析の補助となる積雪サンプルを取得した。さらに、ダスト分析に加えて、すでに測定が完了している水安定同位体比やイオン成分などの解析を行い、アイスコアの年代決定も進んでいるため、概ね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
測定が完了した鉱物粒子(ダスト)については粒径サイズごとの解析や近隣の山岳コアとの比較解析、要因推定のための大気場解析などを引き続き行う。また、2023年秋の観測で取得した積雪試料は日本へ持ち帰り、すでに酸素・水素同位体比の測定が完了している。今後はこの積雪試料とアイスコア試料の水同位体比測定結果を合わせて解析し、融解再凍結による影響やアイスコア中成分の沈着後の変質過程を明らかにしていく予定である。
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