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内受容感覚に基づく自己感の生起過程の検討ー心理・神経・生理学的研究ー

研究課題

研究課題/領域番号 23KJ1078
研究種目

特別研究員奨励費

配分区分基金
応募区分国内
審査区分 小区分10040:実験心理学関連
研究機関名古屋大学

研究代表者

柴田 浩史  名古屋大学, 情報学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2023-04-25 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
キーワード生理心理学 / 内受容感覚 / 身体的自己 / バイオフィードバック / 心拍 / 呼吸
研究開始時の研究の概要

本研究では、呼吸や心拍などの身体内部感覚である「内受容感覚」が、自分が行動したことを感じる「自己主体感」にどのように影響するかを調べる。自己主体感は、感覚と運動に基づく過程と、運動の結果を自己や他者に帰属する過程に分けられる。本研究では、内受容感覚がそれらの自己主体感の処理過程に及ぼす影響を、実験参加者の覚醒レベルの無自覚的な操作や、心拍のリアルタイムフィードバック法を用いて、実験的に検証する。

研究実績の概要

内受容感覚は、心拍、呼吸、胃腸の運動などの身体内部状態の感覚、およびその制御を指す。これまでの研究により、内受容感覚が認知や感情、精神疾患と関連することが明らかになってきたが、さらに近年では身体的な自己感の生成に関与することが示唆されている。自己感とは、「この運動を行ったのは自分だ」という自己主体感や、「この身体はまさに自分のものだ」という自己所有感などの概念から構成される。しかし、内受容感覚が自己所有感の生成に関わることは示唆されているものの、内受容感覚と自己主体感の関係はほとんど論じられていない。さらに、内受容感覚は、身体からの連続的な信号入力である側面と、身体的な覚醒度を伝える側面があると考えられているが、それぞれが自己感の生成にどう作用するかは未解明のままである。本研究は、内受容感覚が自己感の生成に果たす役割の理解を目的としている。今年度の研究は二つのフェーズに分かれ、前期は心拍の同期が自己感に及ぼす影響を検討した。後期は、英国サセックス大学での実験を通じて、呼吸のリズムと自己主体感との関連を調べた。
今年度の前期は、心拍などの内受容感覚の連続した信号が、自己感にどのように影響するかを検討した。具体的には、参加者の心拍と同期または非同期で輝度が変化するオブジェクトをモニターに呈示し、オブジェクトへの自己帰属に及ぼす効果を検討した。これまでに、40名程度の参加者のデータを収集し、分析を行っている。本実験の構想と部分的な結果は、米国で行われたSociety for Affective Science: 2024 Conferenceで、ポスター発表を行なった。今年度の後期は、英国サセックス大学で、自己主体感の生起に対する、呼吸と心拍の周期の影響を検証した。現地では、40名程度の参加者のデータを取得して、現在詳細な分析を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

まず、本年度はリアルタイムで取得した参加者の心拍に合わせてオブジェクトの輝度を変化させるシステムを構築した。これにより、高精度で安定した生体信号のフィードバックが可能となった。このシステムは心拍だけでなく、呼吸や血圧などの他の生体信号のリアルタイムフィードバックも可能であり、今後のバイオフィードバック実験の基礎となる。
さらに、本年度は以下の2つの実験を実施した:
1. 日本において、心拍と同期して輝度が変化する刺激に対する、自己帰属感を測定する実験を行い、40名程度のデータを収集。
2. 英国において、呼吸・心拍のリズムと自己主体感の行動指標の関連を調べる実験を行い、40名程度のデータを収集。
両実験ともに分析が進行中であり、本研究課題の核となるデータを収集することができた。また、国内外で合計4件の学会発表を行ったが、研究成果を論文として発表するには至らなかった。現在、これらの実験結果を論文として発表するための準備を進めており、来年度の発表を予定している。
加えて、共同研究者のサポートを受けて、ヘッドマウントディスプレイ(HMD)を用いた無自覚的な覚醒を引き起こす実験システムを構築した。内受容感覚は視覚や聴覚に比べて実験的な操作が難しく、多くの先行研究が相関研究にとどまっている。そこで本課題では、内受容感覚の実験的な操作を試みる。来年度には、実際に参加者の覚醒状態を操作できるかどうかを実験を通じて検討する予定である。

今後の研究の推進方策

今後の研究では、以下の二つの点を重点的に進める予定である。
一点目は、今年度に取得したデータを分析し、研究成果として発表することである。今年度は、前期と後期に行った実験ともに、十分な参加者のデータを取得することができた。特に、英国で行った実験のデータについては、サセックス大学の共同研究者と緊密に協力し、心拍と呼吸のリズムが自己感に与える影響を分析する。研究結果は、2024年9月にイタリアで行われるシンポジウムでの発表を予定している。2つの実験ともに、来年度の論文出版を目指している。
二点目は、今年度に行なった実験を発展させることである。生体信号のフィードバックシステムの構築や、自己主体感を測る実験課題の作成が終わっており、新たな実験が実行できる状態にある。解析結果についての議論を進めた後、心拍同期と自己感、呼吸と運動の認知に関する、新たな課題を設計する。さらに、内受容感覚を実験的に操作する課題の開発を計画している。これまでは、内受容感覚を操作する困難さから、内受容感覚の個人差と認知機能の相関関係を調べた研究が中心であった。そこで、参加者に無自覚的な覚醒を喚起させる刺激を作成し、身体信号を変化させ、因果的な介入を目指す。実験課題の作成はすでに終わっているため、来年度は予備実験と本実験を行う計画である。課題の有効性が担保された後は、開発した課題を内受容感覚と自己感の研究に応用する予定である。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (4件)

すべて 2024 2023

すべて 学会発表 (4件)

  • [学会発表] DOES SYNCHRONIZATION WITH THE HEARTBEAT ATTRIBUTE A NON-BODILY OBJECT TO THE SELF?2024

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi Shibata, Tiokiko Harada, Hideki Ohira.
    • 学会等名
      2024 Society for Affective Science Conference
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 無自覚的な覚醒が感情知覚に及ぼす効果.2023

    • 著者名/発表者名
      柴田 浩史, 大平英樹.
    • 学会等名
      日本感情心理学会第31回大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 心拍との同期が刺激の印象評価に及ぼす影響.2023

    • 著者名/発表者名
      柴田 浩史, 大平英樹.
    • 学会等名
      第41回日本生理心理学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] UNCONSCIOUS AROUSAL EFFECT ON EMOTIONAL PERCEPTION IS MODULATED BY INTEROCEPTIVE ACCURACY AND HEART RATE VARIABILITY2023

    • 著者名/発表者名
      Hiroshi Shibata, Hideki Ohira.
    • 学会等名
      2023 Society for Affective Science Conference
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-26   更新日: 2024-12-25  

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