研究課題/領域番号 |
23KJ1081
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分43040:生物物理学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
西山 尚来 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 数理モデル / B型肝炎ウイルス / データ解析 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、エンドサイトーシスを利用して内在化するHBVを具体例に、細胞機能を利用する疾患の発症メカニズムを解明するための汎用的な理論の構築を行うことを目的とする。HBVの細胞内での遷移動態を記述する数理モデルを開発し、HBV内在化動態を定量的に説明する。さらに、確率的な影響を考慮したシミュレーションを実施することで、自然感染時を模倣した少数ウイルスが細胞内に侵入していく過程を定量的に再現する。このような異分野融合研究を通して、新たに阻害標的になりうるHBV感染プロセスを探索し、抗HBV薬開発の現場へと繋げていく。
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研究実績の概要 |
生命活動に細胞機能は重要な役割を果たしているが、時として疾患発症の原因を媒介する。特に、ウイルスは、宿主因子を利用し細胞内への感染を成立させる。ここでは、B型肝炎ウイルス(HBV)の感染成立に至るまでの侵入・内在化過程に着目した。 先行研究において、HBVは細胞表面への吸着には胆汁酸トランスポーターであるNTCPが必要であり、内在化には上皮成長因子受容体であるEGFRが必要であることが報告されている。さらに、細胞内に侵入したHBVはエンドソームを利用した内在化動態を示すことが近年の研究により明らかになった。HBVがエンドサイトーシスを利用して観戦を成立させる生物学的重要性を解明するために、それぞれのエンドソーム間の遷移を説明する数理モデルを構築した。細胞でのHBV感染実験データに対して、構築した数理モデルでのフィッティングを行い、HBVが各エンドソーム間を遷移する速度を定量化した。また、化合物処理した場合のHBV内在化動態についても同様に数理モデルにより遷移速度を定量化した。さらに、マルコフ連鎖モンテカルロ法を用いたベイズ推定も実験データに適用し、各条件下におけるHBVの遷移速度を推定した。コントロールと化合物処理条件を比較し、摂動によってもたらされるHBV輸送の違いを定量化することで特定のエンドソームがHBV内在化動態のボトルネックになり得ることを見出した。 今後は、HBVのエンドソーム間遷移の確率シミュレータを開発し、HBV内在化動態の定性的・定量的な解釈し、抗HBV薬標的の同定を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HBV内在化動態の実験データの解析に成功し、HBV感染成立のボトルネックを説明する枠組みは構築できた。さらに、HBV内在化動態の確率シミュレータの開発に取り掛かっており、当初の計画通りに研究は進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画に従って、HBV内在化動態の確率シミュレータを構築する。さらに、数理モデルのパラメータに摂動を加えた網羅的なシミュレーションにより抗ウイルス効果を検証するこ とで、どのエンドソーム間の遷移を促進/抑制することが感染抑制・促進に効果的かを明らかにする。
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