研究課題/領域番号 |
23KJ1119
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
|
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大竹 優也 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,100千円 (直接経費: 4,100千円)
2025年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,300千円)
2023年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
|
キーワード | 可換環 / ネーター環 / Gorenstein環 / シジジー / ねじれ自由性 / 安定圏 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、AuslanderとBridgerが創始した安定加群論の深化とその可換環論への応用を主目的とする。Auslander-Bridger理論の主役であったn捩れ自由加群やn球加群、nシジジー加群、全反射加群たちについて、それらのなす圏の構造が現在に至るまで活発に研究されてきたが、本研究では安定加群論的手法と可換環論独自の技法を織り混ぜたアプローチによりこれらの圏の構造解析に取り組む。これらの研究を通じ、未解明部分の多いGorensteinホモロジー代数学の発展や、Auslander-Reiten予想をはじめとする環の表現論における重要な未解決問題たちへの貢献を目指す。
|
研究実績の概要 |
(1) 加群の高次ねじれ自由性を考察し、有限射影包絡の存在によりシジジーの高次ねじれ自由性を特徴づける結果を得た。これはFoxbyやTakahashi-Yassemi-Yoshinoによる環のGorenstein性の特徴付けの精密化とみなせる。またこの結果の応用として、剰余体のシジジーが高次ねじれ自由性を有することにより環のGorenstein性を特徴付けた。これはDey-Takahashiによる結果の一部を良化し、Miller-Rahmati-Striuliが提起した予想の高次版に部分的な肯定的回答を与える。 (2) 局所環の種々のホモロジカルな性質とその高次元への持ち上げについて考察した。加群のテンソル積の深さ公式に関するChristensen-Jorgensenの定理の逆を証明し、Gorenstein局所環が深さ公式を満たすことと環のAB性が等価であることを示した。この結果と環の性質の持ち上げを考察することで、孤立特異点を持つGorenstein UFDという極めて良い性質を持つ環であって、深さ公式を満たさない、あるいはExt群の消滅が対称的とならないものの存在を示した。 (3) 安定加群論の複体への拡張であるYoshinoの安定複体論について考察した。有限生成射影複体を扱う安定複体論においては、無限個のコホモロジーの情報を複体の(コ)シジジーの振る舞いにより調べることができる。本研究では安定複体論特有の現象の解析をもとに射影複体の高次ねじれ自由性や全反射性を導入し調べた。とりわけAuslander-Buchweitz型近似定理が安定複体論の枠組みにおいて得られた。これは局所的Gorenstein環上では射影複体のホモトピー圏という巨大な圏の理解が高次ねじれ自由複体や全反射複体たちの理解に帰着されることを示す結果であって、さらに従来の加群に対する近似定理を含む。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
安定圏の理論を中心としたホモロジー代数の手法を用いることにより、可換環の性質を特徴付ける種々の結果を得ることができた。さらに、安定加群圏よりも巨大な安定複体圏を扱うという新たな視点を獲得することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
引き続き、安定圏の手法に立脚した可換環のホモロジー代数的研究を行う。とりわけ今年度得られた高次ねじれ自由加群の圏についての諸結果をもとに、より広い圏である高次シジジー加群圏をその加法閉包や拡大閉包に着眼して調べる。
|