研究課題/領域番号 |
23KJ1124
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分29010:応用物性関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
蓮生 雄人 名古屋大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2025年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 2次元トポロジカル絶縁体 / インターカレーション / 層状物質 / 遷移金属カルコゲナイド / 新物質 |
研究開始時の研究の概要 |
ABTe4(A/B=Ti,Zr,Hf)は、単層にすることで2次元トポロジカル絶縁体となることが理論的に予測されていたが、詳細な物性の報告は存在していなかった。 申請者はこれまで、ABTe4バルク単結晶を育成し、輸送特性からその電子状態を明らかにした。そこで本研究では、劈開及び電気化学エッチングによる極薄膜化と、層間への有機分子挿入による層間距離の増大という2つの手法を用いることで、単結晶試料の2次元性を向上させる。さらに、得られた試料の輸送特性を測定し、2次元トポロジカル絶縁体の性質が見られるかを明らかにする。将来的には、上記の手法を他の物質にも適応し、新奇トポロジカル物質開発へと展開したい。
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研究実績の概要 |
ABTe4 (A/B = Ti, Zr, Hf)単結晶の二次元性の向上を目的として、イオン液体を用いた有機分子のインターカレーションを行った。イオン液体にDEME-TFSIを用いて印加電圧等の最適化を行ったところ、層間距離は2倍程度まで増大した。さらに、磁場中輸送特性において弱反局在効果と呼ばれる2次元系に期待される振る舞いを観測した。また、バンド計算を行ったところ、インターカレーションをすることで、単層の場合とほぼ同様の2次元的なバンド構造となることが予測された。しかし一方で、ABTe4を2次元化してもバルク状態の影響を排除することができず、2次元トポロジカル絶縁体に特有の輸送特性が観測できない可能性が高いことも分かった。そこで、新たにMRhTe4 (M = Nb, Ta)に着目した。単層MRhTe4はそのバンド構造から、エッジ状態由来の輸送特性が現れると期待され、2次元トポロジカル絶縁体状態の観測に向けて有望な物質であると考えられる。MRhTe4のうちTaRhTe4は、先行研究を参考に単結晶を得た。一方、NbRhTe4は理論的にその存在は予測されているものの、これまでに合成報告はなかった。そこでNbRhTe4の合成に取り組んだところ、液体窒素を用いて1000℃以上から急冷することで単結晶試料が得られることが分かった。 また、機械的剥離により得たABTe4及びTaRhTe4薄片試料に対して、イオン液体を用いてエッチングを行うことで極薄試料の作製を試みた。TaRhTe4では、エッチングによる試料の厚さの減少により抵抗値が増大し、厚さが25nmから17nmまで減少したことが示唆されたが、一方でこれ以上エッチングを進めることは困難であった。したがって、この手法による単層試料の作製は困難であると考えらえるため、今後は最近報告された手法を参考に単層試料の作製を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、イオン液体を用いてインターカレーションを行い、層間距離を増大させることに成功した。この層間距離を用いてバンド計算を行ったところ、2次元的なバンド構造が予測された。さらに、インターカレーションにより2次元性が向上したことを示唆する磁場中輸送特性の振る舞いを観測した。以上から、本手法を用いることで、ABTe4の2次元性を向上することに成功したと言える。研究対象をABTe4から、より2次元トポロジカル絶縁体状態の観測に適していると考えられるMRhTe4 (M = Nb, Ta)に変更したが、同様の手法を用いてインターカレーションを行うことで、MRhTe4に対しても2次元性を向上させる。 エッチングによる薄片化については、まずデバイスの作製条件を最適化したのち、得られたデバイスを使って試料厚さを減少させることに成功した。ただし一方で、この手法による単層試料の作製は困難であることが分かったため、今後は新たな手法を用いる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
新たに合成に成功したNbRhTe4の基礎物性測定を行う。まず、より良い結晶性の試料を得るために単結晶育成手法の最適化を行う。また、クエンチにより試料を得た後、アニールを行うことで金属的な抵抗率の温度依存性を観測したが、アニールする温度および時間を変えることで残留抵抗比が変化することが分かった。したがって、アニール条件の探索についても行う。以上により得られた試料を用いて磁場中輸送特性の測定を行い、バルクの電子状態について調べる。 それと並行して、MRhTe4に対して1)有機分子のインターカレーション、2)単層試料の作製をそれぞれ行うことで2次元化し、得られた試料の輸送特性を測定する。インターカレーションには、ABTe4に対して行ったものと同様の手法を用いる。さらに、異なるイオン液体を用いることで、異なる層間距離を持つ試料を作製し、輸送特性を比較する。これまで単層試料の作製には、剥離した薄片試料を、イオン液体を用いてエッチングすることで作製を試みたが、この手法では単層までエッチングを進めることが困難であることが分かった。そこでこれに代わり、金を用いた剥離手法を用いて単層試料を作製する。
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