研究課題/領域番号 |
23KJ1162
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡林 一賢 京都大学, 基礎物理学研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ブラックホール時空 / 熱力学第二法則 / エントロピー / 重力崩壊 / 量子重力 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、Hawking輻射のように熱的な分布にしたがう粒子生成がブラックホール時空に特有な現象ではなく、より広い強重力な系で現れる現象であるという事実に端を発し、重力場に起因する量子的な熱輻射の熱源は実際にどこに存在するかという問題を再提起するものある。そのために、ブラックホールに限らない時空におけるエントロピーを定義し、それが確かに熱力学第二法則を満たしているかを検証し、重力場に起因する量子的な熱輻射の熱源の解明に取り組む。
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研究実績の概要 |
重力崩壊の末にブラックホールが形成される過程で自由場の量子論を考えると、重力の強いブラックホール近傍から熱分布に従う粒子生成が起きることが知られている。これは古典的には生じ得ない量子論的な効果であるため、重力の量子論を探る手立てとして考えられているが、ブラックホールの存在は必ずしも必要ではないことが知られている。実際、重力崩壊している物体が将来ブラックホールにならないとしてもプランク分布に従う熱輻射を生じることが過去の我々の研究によっても明らかになっている。ブラックホール熱力学が量子重力理論への鍵だと考えられている現状を踏まえると、重力場に起因する量子的な熱輻射の熱源が実際にどこに存在するか見直すことは早急に取り組む課題である。この状況を踏まえ、本年度はブラックホール類似天体としてグラバスターを考えると、たとえ天体の表面が静的であっても熱輻射が生じるという非自明な現象を示した。これは天体内部の相転移によって生じる熱輻射であり、重力崩壊を伴わなくとも得られたという点において興味深い結果である。この模型は重力崩壊を伴わないため、熱源がどこに存在するか今後検討する際に有効な例になると期待できる。 そしてこの結果にとどまらず2023年度では以下の研究成果を得ることができた。(1)連星ブラックホールが衝突するときに生じる重力波は、最終的に形成するブラックホールの灰体因子によって特徴付けられることを示した。(2)長らく議論となっていた宇宙の波動関数の不定性(経路積分に寄与する鞍点の選び方)について、リサージェンス理論からその不定性を解消できることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
事象の地平面を持たないブラックホール類似天体が形成されたとき生じる粒子生成には、豊かな性質があることが明らかになった。特に、重力崩壊を伴わずとも天体内部の相転移によって熱輻射が生じることを明らかにしたことは、その非自明さだけでなくブラックホール熱力学を見直す必要性を認識させるという意味で重要である。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、今までに蓄積してきた例などから、ブラックホールが形成されないときの熱輻射がどこから生じているのか当初の予定通り検証していく予定である。また、新型コロナウイルス感染症の影響も大きく改善している状況なので、得られた研究成果に関して国内外の研究者との積極的な議論や共同研究を通して本研究の遂行を加速し、最終的な成果につなげたい。
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