研究課題/領域番号 |
23KJ1175
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分26020:無機材料および物性関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
辻 流輝 京都大学, 化学研究所, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ペロブスカイト太陽電池 / 炭素電極 / カーボン材料 |
研究開始時の研究の概要 |
ペロブスカイト太陽電池(PSC)は安価な塗布プロセスで作製でき,既存のシリコン太陽電池に匹敵する高い光電変換効率を持つことから,近年非常に注目されている.PSCを広く実用化するためには,価格と耐久性の大きな課題を解決することが非常に重要である.本研究では,一般的に用いられる有機-金属電極を非真空プロセスで印刷塗布可能な無機-炭素電極に代替することで,太陽電池価格の大幅低減および30年を超える耐久性の大幅向上が可能となる.そして,1)フレキシブルな電極材料の高機能化技術,2)電荷収集層の構造制御技術,3)シンクロトロン放射光を用いた高度分析技術の開発に取り組むことで,価値ある学術研究を展開する.
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研究実績の概要 |
炭素電極を用いた薄膜型ペロブスカイト太陽電池の作製実験を実施した。太陽電池の構造は<ITOガラス/SnO2電子輸送層/ペロブスカイト層/spiro-OMeTAD正孔輸送層/炭素電極>であり、ここでは炭素電極が正孔輸送の役割を担うことが報告されているためspiro-OMeTADの有無で性能がどのように変化するかを示している。結果として、spiro層がない方が、太陽電池性能が高くなることが判明した。これは、炭素電極の堆積時に、溶媒の影響でspiro層が破壊され、正しく機能しなくなるためであると判明した。しかしながら、spiro層がある方が、最終的なデバイス性能が高くなると考えられたため、炭素電極の堆積方法を工夫した。堆積方法として、一度エタノール溶液中に晒すことで溶媒を取り除いた炭素電極シートを作製し、これをspiro層上に設置し、圧着によって炭素電極を接着させた。この手法により、カーボンペースト中に含まれる溶媒の下層への悪影響を無視できる。なお、圧着は封止剤とカバーガラスを炭素電極上に設置し、100 Pa、100度の圧力温度条件で封止することで達成した。結果として、圧着することで、spiro層と炭素電極間の密着性が向上し、接触抵抗が低減し、性能が向上した。光電変換効率値としては、圧着前が1.8%であったのに対し、圧着後は6.7%であった。しかしながら、金電極を用いた場合は16.5%とさらに高いため、炭素電極ではまだ未完全と言える。今後の目標としては、炭素電極と下層との密着性をさらに向上させながら、炭素電極に異種元素ドープ(特にp型半導体系材料)し、更なる性能の向上を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記研究実績の概要のとおり、当初計画していた内容の研究を開始することができているためである。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策としては、本年度で得られた炭素電極を備えたペロブスカイト太陽電池の基礎的な物性、デバイス特性情報を基に、さらに光電変換性能と耐久性を向上させる取り組みを実施する。具体的には、1炭素電極中にp型半導体性質を有する酸化ニッケル、酸化タングステン、酸化モリブデンなどをドープし、仕事関数を調整することで、正孔抽出性能向上に基づく効率の向上を目指す。2炭素電極を圧着する際に、下地層との密着性が重要になるが、これは凹凸が少ないほど接着性が低下するため、化学的に敢えて下地層を凸凹にすることで、接着性の向上を図る。また、下地層と炭素層の間にp型半導体性質を有する二次元材料を挟むことで、性能の向上を目指す。
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