研究課題/領域番号 |
23KJ1188
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
黒田 直也 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 電子カイラリティ / PVED / ECCM / パリティ対称性の破れ / ホモカイラリティ / カイラル分子 / 電子励起状態 / 相対論的EOM-CCSD法 |
研究開始時の研究の概要 |
アミノ酸などの生体分子の多くは、鏡像が自分自身と重ならないカイラル分子であり、一方の鏡像異性体のみが過剰に存在する。この偏りはホモカイラリティと呼ばれ、生命の起源に関する未解決問題である。カイラル分子においては、電子カイラリティが有限値を持つため、一方の鏡像異性体は他方よりもニュートリノとの反応率が高い。本研究では、カイラル分子中の電子カイラリティを相対論的量子化学計算で求め、電子カイラリティが増大するカイラル分子の構造と電子状態を解明する。電子カイラリティの値を用いて、鏡像異性体間でニュートリノとの反応率を比較し、考え得るニュートリノ源の中からホモカイラリティの起源として適切な候補を示す。
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研究実績の概要 |
カイラル分子における鏡像異性体間エネルギー差(Parity-Violating Energy Difference; PVED)および電子カイラリティ密度の分子全体での積分値(Electron Chirality in Chiral Molecules; ECCM) が、いくつかの電子励起状態で顕著に増大することを示した。この結果は、今後の実験でPVEDを測定するための新しいアイディアを与える可能性がある。また、ECCMは鏡像異性体間の左巻き電子の個数差を与えるため、ホモカイラリティの起源と関連する可能性がある。 PVEDは非常に小さいため実験で未観測である。そこで申請者は、PVEDの増大機構を明らかにするため、最も単純なカイラル分子H2X2 (X=O, S, Se, Te) を用いて、電子励起状態のPVEDが二面角に対しどのように依存するかを、相対論的EOM-CCSD法という高精度相対論的量子化学計算で調べた。その結果、基底状態最適化構造の二面角付近で、電子励起状態における顕著なPVEDの増大が見られることがわかった。第一励起状態におけるPVEDの増大については、PVEDに対する各分子軌道からの寄与が基底状態では相殺し合っていたのが、第一励起状態では最高被占軌道からの電子励起により他の軌道との相殺が崩れPVEDの増大が起こる、という機構で説明ができることを議論した。また、実験でも使用されるカイラル分子CHFClBrや、CHFBrI, CHFClIについても、電子励起状態でPVEDが増大することを示した。 次に、カイラル分子における電子カイラリティ密度の積分値であるECCMについても、H2X2 (X=S, Se,Te) の電子励起状態において二面角依存性を調べた。ECCMの変化は、原子核における電子カイラリティ密度が支配的なPVEDとは振る舞いが大きく異なることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、カイラル分子H2X2 (X=O, S, Se, Te) や、実験でも使用されるCHFClBr, CHFBrI, CHFClIについて、いくつかの電子励起状態でPVEDおよびECCMが増大することを相対論的量子化学計算を用いて示した。計算結果については、精度が数パーセント以内に収まっていることを確認しており、特に第一電子励起状態のPVEDの値は、最高被占軌道からの電子励起により他の軌道との相殺が崩れるというモデル式で説明できることを議論した。したがって、第一電子励起状態におけるPVEDの増大機構を解明するという一つの課題は達成しており、本研究で立てたモデル式を用いることで、大きなPVEDの増大が得られるカイラル分子の探索に今後役立てることができる。
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今後の研究の推進方策 |
H2X2について、重元素を含むH2Te2やH2Se2では第一励起状態で特に顕著なPVEDの増大が見られたが、H2O2では第二励起状態で顕著な増大が見られるという違いが見出された。また、CHFClBr, CHFBrI, CHFClIについて、PVEDに対する各元素からの寄与に分解したところ、励起状態において各元素の寄与が強め合う場合と弱めあう場合が分子間で異なっていた。したがって、今後は、アミノ酸や螺旋型のカイラル分子にも対象を広げ、例えばシステインのような重元素を含むアミノ酸と、アラニンやセリンのような軽元素のみから構成されるアミノ酸の間で、励起状態におけるPVEDやECCMの増大の大きさを比較することで、大きなPVEDやECCMを得るのに適切な元素の組み合わせを理解する。その際、大きなPVEDやECCMの値が得られるカイラル分子の構造を調べるため、アミノ酸の官能基の回転に対するPVEDやECCMの依存性も明らかにする。また、カイラル分子のイオンについてもPVEDやECCMの値を求め、実験で対象とするのに適切な系の提案に役立てる。
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