研究課題/領域番号 |
23KJ1191
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大塚 唯 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
|
キーワード | ヒラタケ / Pleurotus ostreatus / 担子菌 / 菌糸塊 / 細胞壁 |
研究開始時の研究の概要 |
担子菌門に属する木材腐朽菌は、廃材をはじめとした農産廃棄物を糧として育成が可能である。そのようにして得た菌体をタンパク質や繊維として活用していくことで、地球環境にやさしい代替食料、グリーンマテリアル生産を実現させる可能性を秘めている。細胞壁は、これらの食料や材料の性質を決める重要な構造体であるが、担子菌細胞壁の構造、機能、合成制御は、未解明な点が多く産業利用の妨げとなっている。本研究では多糖結合蛍光タンパク質による細胞壁の染色と分子遺伝学的手法を用いて、木材腐朽菌ヒラタケPleurotus ostreatus細胞壁の解析を行い、腐朽菌の産業利用におけるボトルネックの解消を目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究では木材腐朽菌の産業的利用の拡大に向けて、蛍光イメージングによる担子菌細胞壁構造の可視化、並びに同イメージング技術と遺伝子改変を用いた高密度培養株の作出の2つを主なテーマとして研究を行っている。 蛍光イメージングについては、キチンに結合する蛍光色素カルコフルオロホワイトと多糖結合性融合蛍光タンパク質であるDCD-tetraRFP(α-1,3-グルカン結合性)及びBGBD-GFP(β-グルカン結合性)を用いた担子菌細胞壁多糖の三重染色法の確立に至った。さらに、細胞壁の蛍光イメージングと加水分解酵素処理を組み合わせてヒラタケ細胞壁の解析を行い、これまでモデルとして示されていた子嚢菌の構造とは大きく異なる多糖の階層構造を明らかにするに至った。 遺伝子改変を用いた高密度培養株の作出については、先行研究で得られていたCRISPR/Cas9を用いたゲノム編集株が不安定であり、株ごとに大きな形態の差異が見られたことから、相同組み換えを用いた遺伝子破壊によって新たにリン酸化酵素遺伝子 (遺伝子X) 破壊株を作製した。本破壊株について基本的な特性評価を行った結果、液体培養時に菌糸塊が形成されずバイオマス量が野生株に比べて約2倍になっており、高密度培養(高分散性)株であることが確認された。また、蛍光イメージングを用いた解析により本破壊株における細胞壁構造の変化が確認されたが、菌糸分散に至った直接的な原因は未だ明らかになっておらず、現在分散メカニズムの解明に向けて、本破壊株のトランスクリプトーム解析とリン酸化の標的となるタンパク質をコードする遺伝子の破壊株作製を行っている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、初年度中に細胞壁染色技術の確立、ヒラタケをモデルとした白色腐朽菌細胞壁の解析、高密度培養株の作出を行った。菌糸塊形成メカニズムの解明に向けて、同株の細胞壁の解析を行ったが、直接的な原因の解明には至らなかった。そこで現在、分散株からRNAを取得し、RNA-seqによるトランスクリプトーム解析を行っている。 また当初の計画には組み込まれていなかった実験として、遺伝子Xによってリン酸化を受けると予想される転写因子の遺伝子破壊株作製を行った。現在、こちらの株についても特性評価を行い、菌糸塊形成との関連について検討している。
|
今後の研究の推進方策 |
ヒラタケ細胞壁構造の解析については、三重染色技術を用いた蛍光イメージングが完了したため、今後NMRによって詳細な多糖の分岐構造についての解析を行う予定である。 分散株に関しては、トランスクリプトーム解析で発現変動のあった遺伝子に着目し、菌糸塊形成の直接的な原因となる遺伝子の探索を行う。該当遺伝子について破壊株を作製し、遺伝子X破壊株との形態の比較を行うことにより、ヒラタケにおける菌糸塊形成メカニズムの解明を目指す。また、酵素生産や培養系のスケールアップなど分散株の産業利用に向けた実験についても実施を予定している。
|