研究課題/領域番号 |
23KJ1194
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分02010:日本文学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
大山 恵利奈 京都大学, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 三河物語 / 三河記 / 徳川家康 / 日本近世文学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、『三河物語』の諸本の悉皆調査を出発点として、その受容の様相を明らかにするものである。『三河物語』とは、近世前期に譜代旗本大久保忠教によって編纂された、松平氏・徳川氏の事績を記す伝記的資料で、歴史学的・語学的・文学的に研究利用されたきた作品である。本研究では、諸本を悉皆調査し、系統分類し、系統ごとの関係性や流布状況を明らかにする。そして、本文の系統分化を踏まえて類書との比較を行い、当該作品が類書に与えた影響を、受容の実態に即して明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度は、『三河物語』と、それに類する徳川家康関係軍記および関ヶ原合戦・大坂の陣に関する合戦記を対象とした、資料調査ならびに本文分析を主に行った。資料調査は中部・近畿・北海道・東北地方を中心に行い、『三河物語』38点、『松平記』『徳川記(徳川伝記)』『三河記』『慶長記』『関ヶ原軍記』『大坂軍記』等86点の合計124点を調査した。 『三河物語』については、本年度までの諸本調査から、大別して4系統の本文があること、著者自筆とされる本の系統が近世を通じてほとんど流布しなかったことが判明している。4系統のうち最も流布したと目される系統は、通説で「草稿の姿を留める」とされている系統である。そこで、本書の受容史上重要な位置を占めると思しいこの系統について、他系統との間で本文を比較すると、実際には草稿から生じたのではなく、著者自筆とされる現存の本から派生したことが窺える。来年度は、上記の研究成果に加え、当該系統がいかなる人物によりどのような理由で手を加えられて生じたかについても考察し、査読雑誌に投稿すべく文章化をすすめる。 また、『三河物語』を受容したと考えられる例に、日本史学分野で「官本三河記」として知られる軍書がある。本書は、近世に広く流布した『徳川記(徳川伝記)』と極めて近い関係にあることから、徳川家に関する歴史叙述が近世にいかに伝播したかを追う上で、欠かすことのできない作品であると考えている。本年度は、本書の成立について、前述の資料調査を踏まえ、本文の編者と典拠について考察した。本書は松原自休という人物の手になり、その本文は『三河物語』の流布本と極めて近い関係にある堀正意編『三川記』ほか、『松平記』、山路自休『慶長記』、松原自休『大坂軍記』等を利用していることを明らかにした。以上の研究成果は、査読雑誌への掲載が決定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の成果は、研究会での口頭発表2件、論文1本(来年度刊行予定、査読あり)である。資料の書誌調査については、当初の予定よりも若干遅れが生じているが、既知の善本を本年度前半に調査できていることから、諸系統の関係については【研究実績の概要】に記した通り大枠で捉えることができている。論文については、当初本年度の投稿を予定していなかったものであるが、『三河物語』を間接的に受容した作品について論じており、『三河物語』の受容の一面を明らかにする助けになると考えている。以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は、本年度に引き続き資料調査を行う。調査は、中国・四国・九州・関東地方を中心に行う予定である。また、『三河物語』の諸系統のうち、最も流布したと思しい系統に独自に存する本文が、いかなる背景により誰の手で作成されたかについても考察する。以上から得られた成果については、文章化をすすめ、来年度中に査読雑誌に投稿することを目指す。
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