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原子間力顕微鏡を用いたソフト多孔体への外力印加による物性評価とゲート吸着の体系化

研究課題

研究課題/領域番号 23KJ1198
研究種目

特別研究員奨励費

配分区分基金
応募区分国内
審査区分 小区分27010:移動現象および単位操作関連
研究機関京都大学

研究代表者

有馬 誉  京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2023-04-25 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
キーワードソフト多孔性錯体 / ゲート吸着 / 原子間力顕微鏡 / 自由エネルギー解析 / 構造転移 / 外力印加
研究開始時の研究の概要

Soft MOFは構造変形を伴うステップ状の吸着挙動(ゲート吸着)を示す。ステップ近傍での高い圧力応答性が工学的価値の一つだが,その挙動は材料毎に多様である。これまでに,吸着等温線を熱力学的に解析することで,ゲート吸着は細孔形状の変化に伴う相転移として体系化されてきた。しかし,粉末の集団的挙動として観測される吸着等温線では,粒子個々の特性が平準化されてしまう。ゲート吸着が粒子サイズに応じて変化する現象であることに鑑みれば,解析すべきは粉末の集団挙動ではなく,粒子個々の挙動である。本研究では原子間力顕微鏡でSoft MOF粒子を強制的に構造変形させることで,一粒子の構造変形過程を直接観察する。

研究実績の概要

(1)AFM実験の環境構築とELM-12系での検討:積層構造を有するELM-12のエタノール(EtOH)吸着系を対象にAFM実験の環境構築および結果の妥当性を検証した。ELM-12は積み上がった層の間隔を拡げることで構造変形し,ゲート吸着を示す。吸着状態のELM-12に対して,AFMを用いて外力を加えることで,ゲート脱着を強制的に誘起した。この際得られた粒子厚みvs.応力曲線を積分することで,ゲート脱着に要した仕事を算出した。種々のEtOH分圧下でAFM実験を行ったところ,圧力が高くなるほど,構造転移に必要な仕事が大きくなった。これは,高圧条件ほど吸着状態が安定となることに起因しており,熱力学理論に従う結果である。同一圧力においては,小さい粒子ほど,構造転移に大きな仕事を要した。この結果を熱力学的に解釈すると,サイズの小さい粒子ほど,ゲート脱着圧が低圧であると考えられる。この結果は,吸着等温線から得られた粒径依存性の傾向とも一致しており,本手法によって,一粒子ごとのゲート挙動測定が可能であると確認できた。
(2)別のMOFでの検討:ELM-12とは別の構造変形機構を示すDUT-8に対してもAFM実験を行った。両者の大きな違いは,粒子全体の構造変形が各層逐次的に生じるのか一斉に生じるのかであり,これらの違いに対応したような結果が得られた。熱力学的な理論展開を行うことで,この差異が妥当であることも明らかにした。
(3)粒子サイズ依存性の理論的検討:ELM-12系で確認されたゲート挙動の粒子サイズ依存性について検討した。吸着等温線測定において,ELM-12以外のMOF種でも同様の粒子サイズ依存性が確認されていたが,その要因は明らかになっていなかった。簡易的な相転移シミュレーションを行うことで,このサイズ依存性がMOFを構成するセル同士の協奏的な転移に由来した現象だと明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

当初の予定では,別の積層型MOFであるELM-11のCO2吸着系を対象に検討を行う予定だったが,比較的取り組みやすいELM-12のEtOH吸着系に系を変えて研究を進めた。その結果,上述の通り,一粒子ごとの吸着挙動の違いを観察することができた。構造変形機構に由来したAFM結果の違いまで確認することができたので,研究開始一年目としては十分な進捗であると考えている。関連の成果を含めて,国内で4度の口頭発表を行っており,現在論文執筆の準備を進めている。さらに,本論とはやや離れるが,ELM-12の粒子サイズ依存性を検討している際に生じた疑問を,分子シミュレーションにより解決している。こちらについても国内で一度の口頭発表を行なっていることに加えて,現在論文執筆中であり,十分成果として実ったと評価している。

今後の研究の推進方策

令和5年度に行った研究により,AFM実験の妥当性は十分に確認できたので,今後は,AFM実験とその結果を用いた理論展開を試みる。ELM-12と同構造で構成配位子の異なるELM-11およびELM-22に対する検討から,MOFの骨格構造とゲート挙動の相関を熱力学的に明らかにする。特に,ELM-11のCO2吸着系においては,全原子モデルを対象に行われた自由エネルギー解析によって,熱力学物性が明らかになっている。そこで,同系に対してのAFM実験で得られる物性との定量的な比較を行う。研究実施者としては,本検討では,正しい熱力学物性よりも小さな値が算出されていると予想している。それは,AFM実験の技術的な誤差であり,その差を埋めることは困難であると考えられるが,正確な値との比較を通して,本実験手法の適用範囲を明確にしたい。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (9件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Validating the mechanism underlying the slacking of the gate-opening behavior in flexible metal-organic frameworks arising from the application of external force2023

    • 著者名/発表者名
      Homare Arima, Shotaro Hiraide, Minoru T. Miyahara, and Satoshi Watanabe
    • 雑誌名

      ACS Appl. Mater. Interfaces

      巻: 15 号: 30 ページ: 36975-36987

    • DOI

      10.1021/acsami.3c05923

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [雑誌論文] Theoretical isotherm equation for adsorption-induced structural transition on flexible metal-organic frameworks2023

    • 著者名/発表者名
      Shotaro Hiraide, Yuta Sakanaka, Yuya Iida, Homare Arima, Minoru T. Miyahara, and Satoshi Watanabe
    • 雑誌名

      Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A.

      巻: 120 号: 31

    • DOI

      10.1073/pnas.2305573120

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 異方性相転移モデルを用いた協奏的な吸着誘起構造転移挙動の解明2024

    • 著者名/発表者名
      有馬誉, 庄田寛, 平出翔太郎, 渡邉哲
    • 学会等名
      化学工学会第89年会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Shaping of flexible metal?organic frameworks and less distinct gate adsorption caused by restricted volume expansion2023

    • 著者名/発表者名
      Homare Arima, Shotaro Hiraide, Minoru T. Miyahara, Satoshi Watanabe
    • 学会等名
      1st Mediterranean Conference on Porous Materials (MEDPore 2023)
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 原子間力顕微鏡を用いたソフト多孔性錯体への外力印加によるゲート物性評価2023

    • 著者名/発表者名
      有馬誉, Leilla Abylgazina, Irena Senkovska, Ilka Hermes, 平出翔太郎, Gunter K. Auernhammer, Stefan Kaskel, 渡邉哲
    • 学会等名
      化学工学会第54回秋季大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Flexible MOFの成形体が示す緩慢なゲート吸着挙動の熱力学解析2023

    • 著者名/発表者名
      有馬誉, 平出翔太郎, 宮原稔, 渡邉哲
    • 学会等名
      第32回吸着シンポジウム
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 原子間力顕微鏡によるソフト多孔性錯体単粒子への外力印加とゲート型脱着挙動の解析2023

    • 著者名/発表者名
      有馬誉, 永野拓幸, 平出翔太郎, 渡邉哲
    • 学会等名
      第36回日本吸着学会研究発表会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] AFMを用いたソフト多孔性錯体が示す構造転移挙動の強制誘起と熱力学的解析2023

    • 著者名/発表者名
      永野拓幸, 有馬誉, 平出翔太郎, 渡邉哲
    • 学会等名
      化学工学会福井大会2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] 研究室HP

    • URL

      http://www.cheme.kyoto-u.ac.jp/2koza/

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2023-04-26   更新日: 2024-12-25  

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