研究課題/領域番号 |
23KJ1233
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中須賀 さとみ 京都大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | ハドロン質量起源 / カイラル対称性 / 媒質効果 / 電子対測定 / 鉛ガラスカロリーメータ / ハドロンブラインド検出器 |
研究開始時の研究の概要 |
クォークの多体系である陽子・中性子などのハドロンの質量生成には、ヒッグス粒子だけでは説明できない未解明の部分が存在する。この自明でない質量は、宇宙初期のような高温・高密度環境から、真空(最低エネルギー状態)の構造が動的に変化することによって生成すると考えられている。 本研究では、高密度な環境である原子核内にて、ハドロンの一種であるφ中間子の質量スペクトルを測定する。先行研究を上回る高統計・高質量分解能によって、有限密度効果によるφ中間子質量スペクトル変化を確立する。
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研究実績の概要 |
本実験に使用するビームラインと検出器のコミッショニングと性能評価、及び翌年度のビーム利用の準備を実施した。 本研究では、原子核内におけるφ中間子不変質量分布を高統計かつ高分解能で測定し、真空中の質量分布から変化していることを実証する。質量分布の変化の起源を明瞭にするために、終状態相互作用のない電子対崩壊を測定する。先行研究を上回る大統計を実現するには、高計数率環境下で動作し、100倍程度の背景事象を抑えて電子を効率よく検出する電子識別検出器(鉛ガラス検出器とハドロンブラインド検出器)の性能が重要となる。今年度のコミッショニングでは、特に鉛ガラス検出器について、高計数率耐性の評価、及び2021年に増設したスペクトロメータ後方領域における増幅率のオンライン較正を完了した。このコミッショニングにて、φ中間子収量評価のためのデータを取得する予定であったが、実験施設火災に伴うビーム利用時間の大幅な短縮によって取得が困難となった。2024年4月に予定されているビーム利用にて、再度収量評価を実施する計画である。 コミッショニングと並行して検出器性能評価を実施した。鉛ガラス検出器について、特に背景事象との識別が困難になる低運動量の粒子に対して応答を評価し、想定性能を達成していることを確認した。この成果を含む本実験全体の検出器性能及び実験状況について、第6回日米合同物理学会にて口頭発表を行った。 さらに翌年度のビーム利用に向けて、ハドロンブラインド検出器の修理及びインストール、トリガーレベルのノイズ評価を行い、オペレーション準備を完了した。またφ中間子データ取得時のフェイクトリガーを減らす試みとして、新たにシンチレーションカウンターを使用したシステムを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までのコミッショニングで、供給されるビームの強度に時間構造があることが判明し、その結果DAQ効率の低下やフェイクトリガーの増加という問題が生じていることが分かっていた。そこで本年度のコミッショニングでは、時間構造を改善したビームに対して再度φ中間子の収量評価を実施する予定であったが、前述の理由から約10か月程度の延期となり計画にやや遅れが生じている。すでに検出器の準備は完了しているため、ビーム利用時には検出器立ち上げ後速やかにトリガーレートの評価を行う。また、フェイクトリガーの状況が改善しない場合は、前述のシンチレーションカウンターを試験的に導入することで対処する。
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今後の研究の推進方策 |
2024年4月のビーム利用にて、φ中間子収量評価のためのデータ取得を行う。加えて、検出器応答の詳細な評価を行うためのデータも取得する。具体的には、電子サンプルを高統計で収集し、鉛ガラス検出器応答の運動量依存性や位置依存性を詳細に評価する。検出器の総合的な性能評価と収量評価によって実験の感度を決定したのち、10月には物理データ取得に移行する。
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