研究課題/領域番号 |
23KJ1250
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
栗田 太一 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 環状ペプチド / ロタキサン / 分子動力学計算 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、力学特性に優れ、かつ生分解性を有するポリペプチド材料の創製を目指す。具体的には、ペプチドからなるロタキサン架橋剤を合成し、構造タンパク質の一種であるシルクに架橋することで、可動な架橋点を有するシルク材料を創製する。さらに得られた架橋シルクの力学特性、生分解性、階層構造を評価することで、ロタキサン架橋剤が力学特性および生分解性に与える影響を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、力学特性に優れ、かつ生分解性を有するポリペプチド材料の創製を目指している。この実現に向け、当特別研究員はロタキサン架橋剤に着目している。ロタキサン架橋剤は、架橋点の可動性に起因する応力分散効果により、得られるロタキサン架橋高分子の靭性を向上させる。そこで、今年度は、生分解性でかつペプチドやタンパク質との相溶性の良い架橋剤を実現するため、ペプチドからなるロタキサンの合成を行った。これまでに、ペプチドからなるロタキサンを化学的に合成された例はない。これは、ペプチドには強い結合性相互作用モチーフが存在しないため、軸分子が環状分子を貫通することができないためである。そこで、環内部で軸形成反応を行うことでロタキサンが形成するという着想に至った。各種検討の末、プロリンとグリシンを有する環状ペプチドが一級アミンと相互作用し複合体を形成することを見出し、さらに求電子剤を作用させることで、環状ペプチド内部で軸形成反応が生じ、ロタキサンが合成できることを見出した。また、コントロールとして一連の環状ペプチドを合成することにより、環状ペプチドの残基数や配列がロタキサン形成に与える影響を調査した。これらのコントロール実験の結果およびMDシミュレーションによる環状ペプチドの溶液構造予測により、カルボニル酸素が環の内側に配向しており、かつ内部空洞が広い環状ペプチドがロタキサン合成に好ましいことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は当初の計画に従って期待通りに研究が進展し、本研究の目標の一つである「ペプチドからなるロタキサンの合成」において着実な進捗が見られる。具体的には第一著者として執筆した論文が国際学術誌へ投稿し、査読対応中である。加えて、本研究課題の遂行を経て得た、ペプチド合成技術および構造予測技術を活用することで、数々の共同研究に携わり、今年度は共著論文、1報を報告、1報を投稿済みである。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本研究課題の目的である、力学特性に優れ、かつ生分解性を有するポリペプチド材料の創製に向けて、今年度得たペプチドからなるロタキサン架橋剤を用いてロタキサン架橋高分子を合成する。まずは、網目構造が明快なtetra-PEGゲルに、ペプチドロタキサンを導入し、力学特性および構造変化を調査する。これにより、ペプチドロタキサンが期待通り、可動な架橋点として振る舞うことを確かめる。その後、当研究室にて合成されたシルクタンパク質に対してペプチドロタキサン架橋剤を導入することで、高靱性かつ生分解性を有するポリペプチド材料を創製する。得られたロタキサン架橋シルクの力学特性、生分解性、階層構造を評価することで、ペプチドロタキサン架橋剤が力学特性および生分解性に与える影響を明らかにする。
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