研究課題/領域番号 |
23KJ1259
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分38020:応用微生物学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中島 有登 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | N-アセチルガラクトサミン / 腸内細菌 |
研究開始時の研究の概要 |
腸管粘液の主成分であるムチンの糖鎖は腸内細菌によって資化されることが知られているが、その構成単糖のうちN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)については不明な点が多い。すなわち、腸内細菌の大部分を占める細菌種においては、既知のGalNAc代謝経路上にある遺伝子のホモログが存在しない。本研究では主要な腸内細菌であるBifidobacterium属細菌がもつ新規GalNAc代謝経路の全容を解明する。
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研究実績の概要 |
腸内細菌は宿主の健康や疾患に対して影響を及ぼす。その作用機序は分子レベルで理解されるようになってきた一方で、細菌が如何にして宿主腸内に定着するかについては不明な点が多い。一部の腸内細菌が腸管粘液の主成分であるムチンの糖鎖を炭素源として利用することは知られているものの、ムチン糖鎖の構成単糖のうちN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)の代謝経路については理解が不十分である。本研究では、主要な腸内細菌の一種であるBifidobacterium属細菌が持つ新規GalNAc代謝経路の全容解明を目的とした。 Bifidobacterium longumを用いた試験によって、新規GalNAc代謝経路についてこれまでに得られていた知見をもとに、本年度はムチン糖鎖中の種々の糖結合様式に対して加水分解活性を呈するBifidobacterium bifidum JCM 1254株を用い、遺伝子欠損株のGalNAc代謝活性を野生株および当該遺伝子相補株と比較して標的遺伝子の新規GalNAc代謝経路への寄与を評価した。その結果、他種の腸内細菌において報告されていたGalNAc代謝経路に含まれない遺伝子がGalNAc代謝経路の初発酵素となっていること、および他の単糖の代謝経路の反応を担う酵素がGalNAc代謝に寄与することが明らかとなった。加えて、他種の腸内細菌においても同様の代謝経路が保存されていることが示唆される結果も得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Bifidobacterium属細菌を対象とし、腸内細菌がもつ新奇GalNAc代謝経路の解明に向けて一定の進展があった。その過程で遺伝子の機能的冗長性が見出されたため、当該代謝経路における標的遺伝子の寄与の解明に時間を要したが、想定していなかった遺伝子も含めて当該代謝経路の理解が進んだ。 また、同様の代謝経路をもつと推定される他の腸内細菌種についても解析を進めているが、Bifidobacterium属細菌を用いた実験と同様の手法では明瞭な結果が得られなかったため、実験系の確立に時間を要したものの、文献調査も併せて遺伝子発現の制御など単なる酵素活性に留まらない結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
異種細菌における新奇GalNAc代謝経路の同定を引き続き行う。また、特にBifidobacterium属細菌においては未解明であるGalNAcの輸送についても解析を行い、ムチンO-結合型糖鎖を構成する単糖群の利用をすべて明らかとする。加えて、当初予定していた既知のGalNAc代謝経路との比較、あるいは複数のBifidobacterium属細菌間の比較によってヒト由来糖質の利用における腸内細菌の進化についての理解を深める。
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