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BCC構造を有する次世代Ti-Zr-Nb系耐熱ミディアムエントロピー合金の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23KJ1302
研究種目

特別研究員奨励費

配分区分基金
応募区分国内
審査区分 小区分26040:構造材料および機能材料関連
研究機関京都大学

研究代表者

韓 恕  京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2023-04-25 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2025年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
キーワードハイエントロピー合金 / 力学特性 / 塑性変形 / 降伏強度 / 脆性-延性遷移 / 変形組織 / 転位
研究開始時の研究の概要

体心立方(BCC)構造を有するハイ/ミディアムエントロピー合金(H/MEAs)は、従来のBCC材料と異なって高温強度と低温延性が確認された。本研究では、比強度が高いTi-Zr-Nb系BCC-MEAsの多/単結晶試料を用いて、圧縮/引張などの材料試験及び透過電子顕微鏡法により、強度、延性、すべり挙動、微細変形組織などの分析/評価を行うことで、その基礎となる塑性変形機構を解明する。さらに、組成、温度、結晶構造を考慮した第一原理計算の補助によりTi-Zr-Nb系MEAsの力学特性の制御因子を解明し、耐熱構造材料として利用可能なBCC-H/MEAsの合金設計理論を確立するのを目指す。

研究実績の概要

本年度の研究では, 典型的な体心立方(BCC)構造を持つハイエントロピー合金(HEA)であるTiZrNbHfTaとVNbMoTaWの力学特性を調査した. 圧縮試験から, 全試験温度においてVNbMoTaWが高い降伏応力を示すが, 温度と降伏応力をそれぞれ, 融点とせん断弾性係数で規格化した強さをみると, TiZrNbHfTaの方が全ての温度域で非常に高くなることがわかった. TiZrNbHfTaが低い温度でも高い延性を示し, 脆性-延性遷移が室温よりも低い温度で生じることが確認された. 電子状態計算により, TiZrNbHfTaはVNbMoTaWよりも大きな格子歪を持っており, 低い弾性係数であるにもかかわらず実験で示されたTiZrNbHfTaの高い強度は, 大きな格子歪によってもたされることが明らかになった. さらに, Ti, Zr, HfなどのHCP元素がこのような格子歪の上昇に寄与することもわかった. 転位構造の直接解析により, TiZrNbHfTaの転位芯は不均質に広がっており, VNbMoTaWと比較すると転位芯エネルギーは明らかに低いことが確認され, その低温においても優れた延性をもつ要因が転位の安定性にあることが明らかになった. このような特性も, 格子歪と同様にHCP元素が引き起こす特性であることが示された. HCP元素の役割とその濃度の影響を解明するために, Ti-Zr-Nb系ミディアムエントロピー合金(MEA)から異なるHCP元素濃度を持つ研究対象を選び, 圧縮試験と透過電子顕微鏡法を用いた研究から, Ti-Zr-Nb合金の降伏強度と変形組織を評価した. HCP元素濃度が高い合金ほど規格化降伏応力が高くなり, 変形組織中のらせん転位と刃状転位の移動度が近づくことが明らかになり, HCP元素濃度-変形組織-強度の相互関係を築いた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

高い融点を持ち, 超高温用途の新しい合金候補として期待されているTiZrHfNbTaとVNbMoTaWの2つの代表的なBCC-HEAsの降伏強度や延性が全く異なることが報告されているが, その要因はこれまでに解明されていない. 本年度の研究では, 優れた合金設計の指針を得るため, 両者の違いを温度変化を考慮した詳細な実験と原子レベルのシミュレーションから解明した. 実験で TiZrHfNbTaは室温以下の低温でも優れた規格化した降伏強度と延性を示すことが確認された一方, 電子状態計算に基づくシミュレーションにより, TiZrHfNbTaで観察される高い規格化した降伏強度と低温における延性は, Ti, Zr, HfのHCP元素の添加による電子の結合状態に基づく効果によってもたらされることが明らかになった. 実験と電子状態計算の連携を通じて, BCC-HEAsの複雑な力学特性を決める本質を捉えることに成功し, 本知見を生かした元素戦略に基づく合金設計により, より軽量化されたTi-Zr-Nb系ミディアムエントロピー合金のような次世代の高温構造用途に向けた新しい構造材料の開発が期待される.

今後の研究の推進方策

本年度は, 典型的な2つの5元系ハイエントロピー合金に関する包括的な調査を完了したことから, 来年度(以降)は, 異なるHCP元素濃度を有する3種のTi-Zr-Nb系ミディアムエントロピー合金の多結晶に焦点を当てる. 転位論に基づき, 透過電子顕微鏡法による微細変形組織の直接観察と密度汎関数理論による転位芯構造の直接解析を通じて, 組成と温度に伴う塑性変形メカニズムの変化を原子レベルで解明し, 力学特性の制御要因を明確化することを目指す. さらに, 高温での変形時に多結晶材料において粒界すべりが発生するため, 結晶粒界の存在が合金の強度および靭性の低下に寄与することが一般的に認識されている. 粒界の影響を排除するため, Ti-Zr-Nbの3成分系平衡状態図を参考にし, 一方向凝固法を用いてTi-Zr-Nb系ミディアムエントロピー合金の単結晶を育成する. 体心立方構造を持つ材料の塑性変形挙動は強い異方性を示すため, 異なる荷重軸方位を用いて単結晶材の圧縮試験を行い, その高温での塑性変形挙動および力学特性の荷重軸方位依存性を調査する予定である.

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (6件)

すべて 2024 2023 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] ジョンズ・ホプキンズ大学/米国空軍研究所/テネシー大学(米国)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Intrinsic factors responsible for brittle versus ductile nature of refractory high-entropy alloys2024

    • 著者名/発表者名
      Tsuru Tomohito、Han Shu、Matsuura Shutaro、Chen Zhenghao、Kishida Kyosuke、Iobzenko Ivan、Rao Satish I.、Woodward Christopher、George Easo P.、Inui Haruyuki
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 15 号: 1 ページ: 1706-1706

    • DOI

      10.1038/s41467-024-45639-8

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 20-1173 KにおけるBCC型 Ti-Zr-Nb系MEAs の降伏応力の温度依存性2023

    • 著者名/発表者名
      韓 恕、李 楽、陳 正昊、岸田 恭輔、乾 晴行
    • 学会等名
      日本金属学会2023年秋期(第173回)講演大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] BCC構造を持つTi-Zr-Nb系MEAsの変形組織お よび強化機構2023

    • 著者名/発表者名
      韓 恕、李 楽、陳 正昊、岸田 恭輔、乾 晴行
    • 学会等名
      日本金属学会2024年春期(第174回)講演大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] BCC構造を有するTi-Zr-Nb系ミディアム エントロピー合金単結晶の塑性変形2023

    • 著者名/発表者名
      恩田 翔平、韓 恕、李 楽、陳 正昊、岸田 恭輔、乾 晴行
    • 学会等名
      日本金属学会2023年秋期(第173回)講演大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] 耐火ハイエントロピー合金の脆性と延性を支配する因子の解明 ―多様な元素が拓く優れた合金の開発―

    • URL

      https://www.t.kyoto-u.ac.jp/ja/research/topics/20240306

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2023-04-26   更新日: 2024-12-25  

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