研究開始時の研究の概要 |
六面体かご型炭化水素クネアンの不斉合成反応開発を中心に, クネアンの物性や反応性を総合的に解明する。不斉合成で得られるキラルなクネアンの絶対構造や光学特性を明らかにし, 液晶材料や医農薬分子へ組み込むことでキラル分子骨格としての有用性を検討する。また, クネアン自体の反応例が極端に少ないため, 反応パターンを総合的に知るために近年注目されているGRRMプログラムを適用し, クネアンの新規変換反応や置換基導入反応を予測・開発する。
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研究実績の概要 |
令和5年度は,修士2年次に達成したキュバンの修飾反応による不斉環境導入に変わるカゴ型分子の不斉合成として,アキラルな二置換キュバンの非対称化を伴う骨格異性化に着目し進展させてきた。 特別研究員DC1申請書に記したようにアキラルな1,4-二置換キュバンを光学活性な2,6-二置換クネアンに触媒的に変換する手法を既に開発していたので,令和5年度は,1) 1-クネアンアミドの2位のアニオン生成による1,2-クネアン合成(Chem. Lett. 2023, 52, 358), 2) 1,4-二置換キュバンから1,3-二置換クネアンを経て,1,3-セミブルバレンに変換する方法(Chem. Lett. 2024, 53, 10.1093/chemle/upas010),3) キュバンおよびクネアンに対する環拡大反応によるビスホモキュバン及びホモクネアンへの転位触媒の開発(Chem. Eur. J. 2023, 10.1002/chem.202303063)を達成した。この3つの手法で得られたカゴ型分子は全てキラル分子である。このように,キラルカゴ型炭化水素分子骨格を合成用意な二置換キュバンの骨格異性化により網羅的に合成する手法は,新規な合成手法であり,”Cubane Scaffold Editing”と命名し,この合成戦略をまとめて報告することもできた。また,これらの一連の合成を,データベースとして記録することにも着手した。
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