研究課題/領域番号 |
23KJ1340
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分01010:哲学および倫理学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
鳥居 千朗 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | メルロ=ポンティ / 政治 / マルクス / ペシミズム / オプティミズム / アーカイブ / フランス / 草稿 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、20世紀フランスの哲学者モーリス・メルロ=ポンティ(1908-1961)の思想を、ペシミズム(厭世観・悲観主義)の問題という観点から解釈しなおすことである。 従来、芸術論や政治論や身体論といった諸々の視点から切り取られてきた彼の思想は、その実、一つのペシミズム克服の試みであったと言うことができる。 このことを証明し、その思想の内実を解明することにより、鬱や自殺や反出生主義、人類絶滅への危機感などの今日的状況において、メルロ=ポンティ思想が持つ価値を示すことが目指される。
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研究実績の概要 |
本研究課題の目的は、モーリス・メルロ=ポンティの哲学をペシミズムとの関連から解き明かすことである。 そのためには第一に、メルロ=ポンティの著作内部において「ペシミズム」や「オプティミズム」の語がどのような意味で用いられているかを確定させる作業が必要になる。その研究成果が3月の実存思想協会で発表された。そこでは「不幸な意識」や「悪霊」といった語句にも注目することで、前期メルロ=ポンティにおいて、マルクス主義によるペシミズム克服の試みが或る独特のアポリアを抱えていたことが明らかにされた。 また、この作業はメルロ=ポンティのマルクス主義的政治哲学=実存論への理解を深めることとなり、本課題のためにも重要な役割を果たした。その政治哲学的議論の複雑さを、「(なぜ)メルロ=ポンティは自らの政治的立場を批判し撤回したのか?」という観点から解きほぐしたものを3月の日仏哲学会で発表した。 加えて、実施計画通り、最新の未刊草稿群を入手し、研究仲間と共に読解作業を進めている。上記の発表にも、この作業の成果が反映されている。 また、当初の計画よりも早まったが、冬季にはフランスのパリとノルマンディーにある書庫を訪問し、メルロ=ポンティの未公開の資料を直接閲覧、その解読成果を専門家にも共有したほか、現地の現象学関連のシンポジウムにも出席して意見交換を行った。 最後に、当該年度を通して、京都大学の高大連携事業に参加することで、全国の高校生を対象に、研究成果も盛り込んだ講演を複数回実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
未刊草稿の内容が主に政治哲学に関わるものであったこともあり、予想以上に、当該年度の研究は特にメルロ=ポンティの政治哲学に集中することとなった。とはいえ、これは彼の「ペシミズム」「オプティミズム」の用語法を正確に理解する上では必要不可欠の作業であったため、本来の研究課題も順調に進んでいるし、ある面では、解明を目指していたメルロ=ポンティの思想をより大きな範囲に拡張して具体的に捉えることができるようになった面もある。 また、諸般の事情からフランスでの資料調査が計画より一年早まったため、第二年度の研究計画が食い込んでいる面がある。しかしそれによって専門家と交流することもでき、今後の国際的研究活動の素地を作ることができた。さらにそこで閲覧した未公開文書は、第二年度の研究作業の良い参照点となるため、続く研究作業を触発・進展させることにもなった。
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今後の研究の推進方策 |
第二年度は、実施計画通り、特にメルロ=ポンティの現象学に注目して研究を進める。なかでも、中後期の現象学思想の展開を分析することで、フッサールやフィンクとの関係がどのように変化・継続していったのかを追跡することが目指される。最終的に、メルロ=ポンティの現象学論の論理構造を解明することによって、これが第一年度の政治哲学-実存論の研究成果とも一致することが証明されるだろう。 また、第一年度に政治哲学やマルクス主義論を扱ったことで、本研究課題の最終的な目標として見据えられていた、今日の社会的情況(自殺、鬱、絶滅など)への応答可能性も先取りされることとなった。ここで開かれた射程を踏まえることで、第三年度の研究も一層具体的なものとなり、21世紀の情勢を的確に反映させたものとなることができるだろう。
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