研究課題/領域番号 |
23KJ1377
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
久田 雅人 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2025年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | カーボンナノチューブ / 筒状構造 / 七員環 / 非平面構造 / 歪みエネルギー |
研究開始時の研究の概要 |
多環芳香族化合物はその構造に由来して様々な物性を発現する。特に大環状構造を有するシクロパラフェニレン (CPP) は超分子ホスト材料として機能し、様々な分子と包接し機能化することが知られている。。ある筒状化合物を直鎖構造にするために必要な結合切断の最小数を最小幅Nとすると、N = 1の化合物の代表としてCPP、N = 2の化合物の代表としてカーボンナノベルト (CNB) が挙げられ、N = 3の化合物の合成は未達成で、重要な課題の1つである。七員環を適切な位置に導入することでその筒状構造の歪みエネルギーを小さくしたN = 3の七員環含有カーボンナノチューブの精密合成を目標とする。
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研究実績の概要 |
これまでの研究で2つの七員環が対面した縮環構造は柔軟で平面から大きくはずれた構造を小さな歪みエネルギーで誘起できると示唆する結果を得られていた。本質的に平面構造を有する六員環π共役系は曲がると歪みエネルギーがかかるため筒状構造の形成には大きな歪みエネルギーがかかると考えられる。これまでの研究で得られた結果から、七員環を適切な位置に導入することで筒状構造を比較的小さな歪みエネルギーで形成できるのではないか、と着想を得た。そこで本研究ではこれまで合成がされたことのないN = 3となる筒状構造を有する化合物の合成を目指した。本研究では新たに炭素と水素のみで構築された2つの七員環が対面した縮環構造を有するアセン誘導体の合成に成功した。単結晶X線構造解析の結果から、大きくねじれた分子構造とサドル型に湾曲した分子構造の2種類の分子構造が安定に単離できることがわかった。また構造の違いにより、光学特性が異なることがわかった。特にねじれ構造においてはその構造に由来して光学特性が発現しており、高い光学特性を示すことがCD測定から明らかになった。さらにDFT計算によりこれらの分子は大きな非平面構造ながら小さな歪みエネルギーを有するということが示唆された。また2つの七員環と八員環が連続して縮環した構造を有する化合物の合成にも成功した。DFT計算の結果から、これらの分子も大きな非平面構造を有しながら小さな歪みエネルギーを有するということが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は新たに炭素と水素のみで構築された2つの七員環が対面した縮環構造を有するアセン誘導体の合成に成功しており、七員環を有する非平面化合物の性質を計算だけでなく実測の側面から明らかにすることができており、これは3次元構造である筒状構造を有する化合物の合成に重要であると考えられるため。また本研究で合成に成功したアセン誘導体は、光物性の理解に大きな貢献が可能であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、七員環を導入したN = 3 となる筒状分子の合成に取り組む。具体的には、本研究で新たに合成したアセン誘導体の合成法を応用することを考えている。またアセン分子は小さな分子ながらも長波長吸収を示すなど、特異な光学特性が注目されている。新たに合成したアセン誘導体の物性を調べることで七員環を導入したことによる物性への影響を明らかにしたいと考えている。
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