研究課題/領域番号 |
23KJ1379
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分35020:高分子材料関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
黒田 啓太 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | ビニルポリマー / ラジカル共重合 / 分解性高分子 / 制御重合 / 配列制御 / 異性化反応 / 高分子反応 / 光分解 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,付加重合を用いたオンデマンド分解性高分子の合成基盤の確立を目指す。具体的には異性化反応と重合後変換を用いることで新しい物性や機能性を兼ね備えた分解性プラスチック材料の創出を行う。これまで困難であった付加重合系における機能性を兼ね備えた分解性高分子の合成が達成されれば分解性高分子の設計の自由度は飛躍的に増加し,プラスチック問題の解決のみならず,分解性と機能性をあわせ持つ材料の開発に資することが期待される。
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研究実績の概要 |
当特別研究員はこれまでの研究でオンデマンド分解性高分子の合成を目指し、「モノマー設計と特異的ラジカル共重合を用いた分解性配列制御高分子の合成」に関する研究を遂行してきた。 令和4年度までの研究で活性化エステルを有したアクリレートとベンジルビニルエーテルのラジカル共重合において、何らかの異性化反応によりポリマー主鎖中にエーテル結合が導入されることを見出していたが、詳細は不明であった。令和5年度は重合挙動と生成ポリマーの構造解析から異性化反応による成長活性種の極性変換により、モノマーがAAB周期的に消費される現象を明らかにした。こうして得られた配列制御高分子は熱的に安定でありながら、主鎖にベンジルエーテル結合が周期的に導入されていることで、酸性条件で分解可能であることを示すことに成功した。これらの研究成果をまとめた論文は化学分野全体において権威ある雑誌である”Angewandte Chemie International Edition”に受理された。また、第72回高分子学会年次大会(群馬)、13th SPSJ International Polymer Conference(国際学会,札幌)でポスター発表を行い、発表内容が評価され、それぞれ優秀ポスター賞、IPC2023 Poster Award: Polymer Chemistry Awardを受賞した。 また,光分解性を有するビニルエーテルモノマーを新たに設計・合成し、アクリレートモノマー類との配列特異的なラジカル共重合性によって、光分解性の配列制御高分子の合成に成功した。この成果に関して、第72回高分子討論会(愛媛)、日本化学会第104春季年会(英語口頭発表、千葉)にて口頭発表を行った。また、国際論文誌掲載に向けて成果をまとめた論文を準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画に沿って、令和4年度までの研究で見出したベンジルビニルエーテルの配列特異的異性化ラジカル共重合をベースとし、アリルメチル基を持つビニルエーテルの側鎖設計を行い、重合反応系を検討した。その結果、重合機構の解明及び酸を用いた分解機構の解明に至った。また、光反応性アリルメチル基を持つビニルエーテルモノマー設計を行うことで、令和5年度の研究計画の中心である光に応答して分解する配列制御高分子の合成に成功した。さらに、当初の計画には無い保護された光分解性側鎖を有するビニルエーテルジエンモノマーを新たに設計・合成し、アクリレートモノマー類との配列特異的なラジカル共重合性によって、光分解性の配列制御高分子の合成に成功した。この新しいモノマー設計指針は他の汎用ビニルモノマーユニット(エチレン・プロピレン・スチレンなど)を有する光分解性配列制御ポリマーにも拡張可能であり、令和6年度も引き続き検討を行なっている。以上の通り、当初の研究計画に沿った検討に加えて、新しいアプローチを用いた検討を行い、本研究課題の達成に向けて計画以上の進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、当初の計画通り、令和5年度までに明らかとした酸や光刺激による分解性をさらに展開し、ケミカルリサイクルやアップサイクルに向けたオンデマンド分解性高分子の開発を行う。有用な低分子への精密な分解のためには、分解反応の適切なコントロールに加えて、高分子の合成時にモノマーの定序配列をコントロールし、分解物が均一になるように設計することが重要となる。これまでの研究で得られた知見を踏まえて適切なモノマー設計・合成を行い、ビニルポリマーの精密分解に向けた検討を行う。
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