研究課題/領域番号 |
23KJ1383
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分33020:有機合成化学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
井芹 建太 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2025年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 金ナノクラスター / アルキニル金 / 触媒活性種 / 二重触媒作用 / ペプチドデンドロン / 脱水素クロスカップリング反応 / 超分子反応場 / 超原子 |
研究開始時の研究の概要 |
金属数十原子からなる超原子コアとそれを保護する有機金属部位により構成される金属ナノクラスターはバルクの金属や金属ナノ粒子,錯体と異なる電子状態・反応性を持つことから触媒としての応用が期待されている。これまでに金属ナノクラスターの超原子コアと表面構造のそれぞれが同時に異なる触媒作用を発現する二重触媒作用を示すことを見出している。本研究では,超原子コア,及び表面構造の構成元素制御に基づく反応性の開拓を行い二重触媒作用への理解を深める。その後,金属ナノクラスター触媒とその二重触媒作用の有用性を示すため,超分子反応場を構築する配位子に生体分子認識特性を組み込むことで,生体分子標識化手法への応用を行う。
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研究実績の概要 |
我々はこれまでに,チオラート保護金25核ナノクラスターが二重触媒作用を示し,アミンとアルキンの脱水素クロスカップリング反応を進行させることを見出している。チオラート保護金ナノクラスターは強い金―硫黄結合により熱力学的に安定であることから最も盛んに研究されているが,一方で強い金―硫黄結合によりチオラート配位子が触媒毒として作用することが触媒利用における問題となる。特別研究員の開発した触媒反応でも,強い金―硫黄結合に由来する長い誘導期間が存在することが最大の課題であった。そこで今年度は,配位子の配位部位の調整による金ナノクラスターの反応性の向上に取り組んだ。具体的には,1)反応系中における配位子交換による金ナノクラスター触媒の活性化,及び2)アルキニル配位子により保護された新規金ナノクラスターの合成,に取り組んだ。1)について,先述した脱水素クロスカップリング反応,及びアミン,アルキン,アルデヒドの三成分カップリング反応で誘導期間が短縮され,収率が向上することを見出した。また,単純なアルキニル金化合物だけでなくホスフィン配位子を持つアルキニル金錯体でも同様の効果が確認された。本手法は簡便に金ナノクラスターを活性化できることから将来的な応用も期待される。2)について,ペプチドデンドロン置換基を有するアルキニル配位子を4段階の反応を経て新規に合成した。今後,同配位子を用いた金ナノクラスターの合成を進める予定である。以上のように,本年度は金ナノクラスターの配位子の配位部位を変更することによる活性な触媒の創出に注力して研究を進めた。また,先述した金25核ナノクラスターの二重触媒作用によるアミンとアルキンの脱水素クロスカップリング反応について,結果を総括してドイツ化学会誌に論文を投稿した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
これまでに見出していた金ナノクラスターの二重触媒作用によるアミンとアルキンの脱水素クロスカップリング反応では,強い金―硫黄結合に由来する誘導期間の存在が最大の課題であった。当初の計画では,金ナノクラスター表面に異種金属原子を導入することにより金ナノクラスターの反応性を調整し,その課題を解決する予定であった。しかし,実際に新規ナノクラスターを合成し触媒として用いたところ,期待とは異なり誘導期間の短縮は見られなかった。そのため,本年度はより直接的に問題を解決できると推察される金ナノクラスター上の配位部位の変更に注力して研究を進めた。その結果,反応系中において配位子置換反応を行う手法によって誘導期間が短縮され,収率が向上することを見出した。同手法は当初の計画にはなく,追加で行う研究であり,当初の計画通りには研究が進展していない。また,基質適用範囲の拡張については未達成であるため,配位部位の調整により活性なナノクラスター触媒を創出した後,金ナノクラスター表面への異種金属原子の導入とともに基質適用範囲の拡大についても研究を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は最大の課題解決に繋がることから,当初の計画にはなかったが,配位部位の調整による活性な触媒創製に特に注力した。同手法について,一定の成果が得られているため,次年度も引き続き同研究を行う予定である。それらによって活性なナノクラスター触媒の創出を達成したのち,当初の計画にあったコア,ステープルへの異種金属の導入による金属ナノクラスターのも取り組む予定である。また,ステープルへの異種金属の導入に伴う基質適用範囲の拡張,及びコアへの異種金属原子の導入に伴う光物性の調整にも取り組む予定である。3年目には当初の計画通り配位子の変更により,ナノクラスター周辺の反応場に分子認識機能を付与した,分子認識超分子反応場の構築に取り組む予定である。以上の研究を通じて,最終的にはコア、ステープル,反応場,配位部位の四要素全てがチューニングできる,人工酵素の開発を目指して研究を進める。
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