研究課題/領域番号 |
23KJ1405
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分33010:構造有機化学および物理有機化学関連
|
研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
隅田 滉史 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
|
キーワード | 非対称ヒ素化合物 / 非対称アルソール / ヘテロアセン |
研究開始時の研究の概要 |
不斉配位子を有する遷移金属錯体は医薬品合成や偏光材料といった機能性材料を合成開発するうえで重要である。近年研究が活発な不斉リン配位子は酸素や熱に対して敏感であり、取扱いが難しい。一方で同族のヒ素配位子ではリンより安定した孤立電子対を有しているため不斉配位子として魅力的である。また私はこれまでにヒ素配位子を用いた高活性遷移金属触媒や発光性材料の開発に成功している。これらの知見を基にヒ素配位子に不斉を導入することで更なる高機能化を目的として本研究を行う。まず非対称ヒ素配位子の合成法の確立を行う。そして確立した手法を用いて遷移金属との錯形成を行い、触媒反応や光学材料としての応用を行う。
|
研究実績の概要 |
本研究では非対称ヒ素化合物の合成法の開発およびそれを用いた発光特性や触媒活性について調査を行った。合成法においては様々な脱離基を有するヒ素前駆体の合成を行ったが、前駆体の安定性と求核剤に対する反応性を両立する脱離基の設計は困難であった。そのため現状可能な合成法を用いて非対称アルシンの合成を行い発光特性を評価した。ベンゼンおよび種々のヘテロールを縮環した非対称アルソール及びその酸化体を合成した。これらの化合物のラセミ体ではπ共役の大きさにかかわらず全ての化合物で77Kにおいて蛍光と燐光発光の二十発光特性を有することがわかった。また酸化しヒ素の孤立電子対を潰した化合物においては77Kにおいても燐光は示さず、優れた蛍光特性を示すことが判明した。そのためヒ素の孤立電子対の就職による発光特性のチューニングが可能である。また同属のホスホールや銅周期元素のゲルモール及びシロールと発光特性を比較したところ、ヒ素のみで燐光発光を示すことが分かった。この現象を理解するために理論計算を行った。その結果アルソールでは第一励起一重項と第二励起三十項のエネルギーギャップが小さいうえにスピン軌道カップリングが大きいため効率よく酸受講励起子が生成することが分かった。一方で同周期のゲルマニウムではエネルギーギャップは適当な一方でスピン軌道カップリングが小さいことがわかった。リンではスピン軌道カップリングは大きい一方でエネルギーギャップが大きいことが分かった。またアルソールの酸化によって燐光特性が失われた事実から、アルソールのみ燐光を示した理由は重原子効果及びn-π*特性に由来することが分かった。また種々の光学分割を試みたが現在までにまだ成功していない。 またBINAPのヒ素類縁体を合成し、バックボーンにキラリティを有するヒ素配位子の合成を試みたが、現在合成条件を検討中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたジチオール脱離基を用いた非対称ヒ素化合物の合成法の開発は難航しているが、現在利用可能な合成法によって非対称ヒ素化合物の光学特性を見出すことに成功した。またこの研究をきっかけに共役系ヒ素化合物の物性に興味を持ち、アルサベンゼンの合成及び物性調査を行うに至った。 またヒ素配位子を用いた触媒では、非対称のヒ素配位子は合成できていないもののC-H直接アリール化やチオフェンの2,3-2官能基化反応にヒ素配位子を適用することでヒ素配位子の特徴やメリットについて明らかにすることに成功した。
|
今後の研究の推進方策 |
合成法の開発においては単座のチオールを用いることで安定性を担保し、それを用いて求核剤との反応性とチオールの骨格の関係を調査し適正綱脱離基の開発及び反応条件の最適化を行う。 1年目で合成した非対称アルソールの光学分割を引き続き進める。その後、円偏向発光特性などを評価することでヒ素配位子を用いた際に円偏向発光に及ぼす効果を調査する。
|