研究課題/領域番号 |
23KJ1432
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分24020:船舶海洋工学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
脇田 康希 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 自律操船 / 離着桟操船 / システム同定 / 強化学習 / ニューラルネットワーク / データ拡張 / アンサンブル法 |
研究開始時の研究の概要 |
操船の自動化制御の中でも離着桟操船では、障害物との距離が近いことから、繊細な操船制御が求められます。さらに、離着桟操船では、船が外乱から受ける影響が大きく、安全に離着桟することが不可能な状況が必ず存在します。そのため、外乱状況によっては目的地への到達を保留する柔軟な判断が求められます。本研究では、そのような判断を可能にするため、外乱状況に応じた離着桟操船の事故リスクの定量化に取り組みます。そして、定量化した事故リスクに基づいた離着桟操船制御アルゴリズムの構築手法の確立に取り組みます。この研究により、安全性の高い柔軟な判断を可能とする制御アルゴリズムの構築手法の開発を実施します。
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研究実績の概要 |
船舶の自動操船制御の中でも、離着桟操船では、障害物との距離が近く、繊細な操船制御が求められます。さらに、外乱状況によっては、目的地への到達を保留する柔軟な判断が必要です。このため、本研究課題では、船舶の操縦運動モデルの推定を行い、操縦運動モデルを利用して外乱状況に応じた離着桟操船の事故リスクを定量化することに取り組みます。そして、事故リスクに基づいた離着桟操船制御アルゴリズムの確立を目指します。初年度の研究実績を以下に記します。 まず、船舶操縦モデルの推定において、実用性向上を図るため、データ収集が困難な状況を考慮し、二つの研究を実施しました。一つ目の研究では、予測精度向上のため、操縦運動モデルの推定手法にデータ拡張技術を組み合わせました。そして、適切なデータ拡張技術を用いたデータの水増しにより、操縦モデルの推定精度が向上することを確認しました。一方、離着桟操船の事故リスク推定や操船制御アルゴリズム構築を考慮すると、実用的な精度には必ずしも到達するわけではないことが明らかになりました。そのため、二つ目の研究では、予測精度向上ではなく、データが不足している状態領域の不確実性を示すアンサンブルニューラルネットワークを用いた確率的な予測モデルの推定手法を確立しました。この研究により、事故リスクの推定における操縦運動モデルの推定結果の不確実性評価が可能となりました。 また、風外乱や観測ノイズの確率的変動を考慮した数値シミュレーション環境の構築を行い、推定された船舶操縦モデルを用いたシミュレーションが可能となっています。これにより、離着桟操船におけるリスク評価のための技術の基盤が完成しました。さらに、数値シミュレーション環境を用いて強化学習による離着桟操船の制御方策の獲得および検証を行い、離着桟操船制御アルゴリズムの構築における初期検討も実施しました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の現在までの進捗状況について以下に記します。 操縦運動モデルの推定については、ニューラルネットワークを用いた離着桟操船のための操縦運動モデルの推定手法を確立しています。特に、離着桟操船のための操縦運動モデルにおいて問題となり得るデータの不足に対処するための予測精度向上と予測精度の不確実性の推定手法を開発しました。そのため、実データに対しても実用的な手法となっています。現在は、模型船の計測データだけでなく実船の運航データを用いた検証に向けた検討を行っています。 離着桟操船の事故リスクの定量化については、風外乱や観測ノイズの確率的変動を考慮した数値シミュレーション環境の構築が完了し、推定された操縦運動モデルを組み合わせて利用することが可能となっています。そのため、事故リスクの定量化に向けて必要な準備は完了しています。現在は、シミュレーションを用いて適切な事故リスク指標について検討を行っています。 離着桟操船制御アルゴリズムについては、強化学習を用いた離着桟操船制御のための軌道追従制御方策の獲得手法を確立しました。これにより、推定された操縦運動モデルに基づいた制御方策の獲得が可能となり、有効性をシミュレーションにおいて検証を行いました。現在は、この手法を発展させ、事故リスク指標の組み込むための検討を行っています。 以上のように、計画通り概ね研究が進捗しています。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降では、以下の検討課題について取り組むこととしています。 まず、操縦運動モデルについては、確立した手法の実用性を示すため、模型船の計測データのみならず実船の運航データを用いて検証を行います。実際の運航データで得られるデータの質や分布を考慮し、得られるモデルの予測精度や不確実性の推定精度を明らかにします。 離着桟操船の事故リスクの定量化については、構築した数値シミュレーション環境を用いて、外乱状況や船体の速度状態を基に事故リスクを推定する手法の確立に取り組みます。さらに、最短時間問題として解かれた離着桟操船の事故リスクと熟練した船長が行う離着桟操船の事故リスクの比較を行いながら、事故リスク指標の評価を行い、有効性を明らかにします。 離着桟操船制御アルゴリズムについては、確立した強化学習による離着桟操船制御のための軌道追従制御方策の獲得手法に、事故リスク指標を適用します。さらに、安全に離着桟することが不可能な外乱状況をあらかじめ検知し、安全性の高い柔軟な判断を可能とする制御アルゴリズムの構築手法の開発を実施します。
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