研究課題/領域番号 |
23KJ1441
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分23030:建築計画および都市計画関連
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 翔也 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
|
キーワード | 漁業集落 / コモンズ『海』 / 漁業権 / 集落再編 / 共同関係 / 尾鷲市 / 九鬼 / 事前復興まちづくり |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は紀伊半島沿岸部の漁業集落群を対象に,如何に集落再編を行うのか考えるものである.本研究では,漁業集落間の【Ⅰ】【Ⅱ】【Ⅲ】の3種類の関係性と,地理的環境から集落再編を考えたい. 【Ⅰ】沿岸漁業を介した関係性,【Ⅱ】漁港や魚市場などを介した関係性,【Ⅲ】神社・寺院・墓地などを介した関係性をそれぞれ明らかにする. 明らかになったこれらの関係性から,紀伊半島沿岸部の漁業集落群の再編を考える.
|
研究実績の概要 |
本研究は,紀伊半島沿岸部の漁業集落群を対象に,集落再編のあり方を考察することを目的としている.これまでに三重県尾鷲市の11の漁業集落群を対象に,近代以降生じたコモンズ『海』(共同漁業権として設定される海)の再編と陸側要素(神社・寺院・小学校)の再編,及びこれらの関係性を明らかにしてきた. コモンズ『海』の再編としては,統合,分化,喪失の3種類の様態を,陸側要素の再編としては,統合,分化,移転の3種類の様態を確認することができた.また,コモンズ『海』の再編と陸側要素の再編が連関して生じている可能性も示すことができた.さらに,それぞれの漁業集落が再編を経験しながらも,“地先の海で魚を獲り続ける”という海との関係性を,近代以前より維持し続けていることが明らかになった.これらの内容はコモンズ『海』と漁業集落の再編の関係性に関する研究として,2023年11月に日本建築学会計画系論文集に発表した. コモンズ『海』と漁業集落の関係のみならず,コモンズ『海』とコモンズ『山』の関係性もこれまでに明らかにしてきた.これは三重県尾鷲市の漁業集落における海と山の関係性に関する研究として,2023年9月に日本建築学会大会(近畿)で発表した. さらに,コモンズ『海』における漁業と流通の仕組みを明らかにした研究も,2023年9月に日本建築学会大会(近畿)の研究懇談会資料集に掲載した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は研究を遂行するだけでなく,研究を物化するアウトリーチ活動として,「ボッチde流しそうめん」を三重県尾鷲市の漁業集落で開催した.「ボッチde流しそうめん」は,上水道敷設前のボッチ(河川上に立地する石で造られた水溜のこと)による取水を,流しそうめんという仕掛けで再現したまちづくりイベントである.ボッチを核としたかつての井戸端的風景を,今日的コミュニティの空間として創出,再生,更新することを意図している.また,当地域は来る南海トラフ地震発生時に深刻な水不足が想定されており,被災時にこれらの仕掛けが有効に機能することも意図している. 「ボッチde流しそうめん」の蓄積の先に,集落再編に“頼らなくてもよい”,集落の自立の未来があると考えており,この活動は本研究と密接に関わるものである.しかし,2023年度は想定以上にこの活動に時間を要したため,当初の研究計画より進捗はやや遅れている.
|
今後の研究の推進方策 |
昭和年代に自発的契機によって集落移転・集落統合が生じた漁業集落に対象を絞り,調査を進めている.これらの集落再編過程をコモンズ『海』やコモンズ『山』の変遷とともに解像度高く追うことで,漁業集落とその周縁領域の動的な関係性を明らかにすることができると考えている.さらに得られた知見から,周縁領域と一体となった新しい集落再編のあり方を考察することができると考えている. またこれと併せて,紀伊半島に立地する漁業集落の,過去の集落移転履歴を明らかにしていくつもりである.
|