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電弱バリオン数生成の多角的検証に向けた理論的研究

研究課題

研究課題/領域番号 23KJ1460
研究種目

特別研究員奨励費

配分区分基金
応募区分国内
審査区分 小区分15010:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する理論
研究機関大阪大学

研究代表者

村 勇志  大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC2)

研究期間 (年度) 2023-04-25 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
キーワード電弱バリオン数生成 / ヒッグス / 電弱相転移 / CPの破れ
研究開始時の研究の概要

初期宇宙におけるバリオン数非対称性の起源の問題は、現在の素粒子物理学における未解決の問題である。この起源を説明する将来実験で検証可能な有力なシナリオとして、電弱バリオン数生成と呼ばれるものがある。電弱バリオン数生成には粒子-反粒子対称性(CP対称性)の破れが必要とされるが、実際に重要となるCPの破れには様々なバリエーションが存在する。本研究ではこのバリエーションに着目して、粒子それぞれのCPの破れがどの観測可能量と結びつくかを明らかにし、電弱バリオン数生成の各バリエーションと各種将来実験との対応関係を示したマトリクスを作成する。

研究実績の概要

(i)電弱バリオン数生成においては、電弱1次相転移の際に発生する真空の泡の壁の周りで、粒子と真空の壁がCPを破る相互作用をすることによりバリオン数の非対称性が生み出される。CPを破る源として、湯川結合定数が最も大きいトップクォークを考える場合が多いが、フレーバー構造が最も一般的になるTwo Higgs Doublet Modelにおいては、これ以外の粒子が重要になる場合があり、さらにフレーバー混合を用いた電弱バリオン数生成を考えることも可能である。通常、フレーバーを変える中性カレントからの制限により、フレーバー混合を引き起こす結合は実験的に小さく制限される。しかし、トップ-チャームセクターはその他の結合に比べて、実験的に未だO(1)の値を取ることが許されている。この点に着目し、トップ-チャーム混合による電弱バリオン数生成を研究した。
(ii)続けて、電弱バリオン数生成に関する理論的制限について研究を行った。電弱バリオン数生成の模型のいくつかは、スカラー場のある結合定数が比較的大きな値を取ることで、電弱1次相転移を実現する。この状況では、くりこみ群方程式におけるベータ関数の解析により、比較的低エネルギーで模型の結合定数が発散することが知られている。この点はランダウポールと呼ばれ、あるスケールよりも低エネルギーに現れてはいけないという事実から、模型のパラメータ領域の一部は制限される。この制限はトリビアリティ制限と呼ばれ、従来の先行研究の解析によって、電弱バリオン数生成を実現する模型は厳しく制限されると考えられてきた。しかし先行研究では、いくつかの理論的不定性に対する適切な取り扱いが十分に議論されていなかった。我々は、電弱バリオン数生成に関するトリビアリティ制限について再度考慮し、これを正しく評価するための研究を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

(i)における研究では、ある先行研究におけるフレーバー混合を用いた電弱バリオン数生成で用いられたCP位相は実は物理的では無いことを明らかにし、トップ-チャームセクターによる電弱バリオン数生成の為の正しい表式を与えることができた。さらに、実験的制限の下で、トップチャーム混合を用いた電弱バリオン数生成が可能なベンチマークポイントを作成し、将来フレーバー実験で測定可能な観測量、特にK中間子の稀崩壊との関連を明らかにした。これらの結果を論文としてまとめ、学術論文として出版した。
(ii)における研究では、理論のパラメータが物理的な量に常に一致するようなくりこみの方法を取り、それによって得られる質量に依存したベータ関数を用いたトリビアリティ制限の解析を行った。この方法においては、低エネルギー側ではベータ関数中の重い粒子の寄与が自動的に消える為、マッチング条件を立てる必要がない。加えて、各エネルギースケールにおける有効結合定数の値は常に物理的質量などの観測可能量と結びついている為、閾値効果と呼ばれるマッチング条件に現れる高次補正が自動的に取り込まれる。この質量に依存したベータ関数を用いて、電弱1次相転移を実現するような簡単なスカラー模型、およびInert doublet modelで解析を行い、ランダウポールおよびトリビアリティ制限を評価した。その結果として、マッチング条件や閾値効果などを考慮しなかった従来の方法に比べて、ランダウポールが現れるエネルギースケールが10倍ほど大きくなり、それによってトリビアリティ制限も大きく緩和することを明らかにした。これらの結果を論文としてまとめ、現在学術誌に投稿中である。

今後の研究の推進方策

現在、将来加速器実験を用いたCPの破れの検証可能性についての研究を行っている。これまでの研究で、模型の中の電弱バリオン数生成に重要なパラメータを特定するに至った。しかしながら、そのパラメータを直接測定するための物理量についてはこれまであまり議論されてこなかった。次年度はこのパラメータが関連する物理量の理論的研究を進めると共に、それを測定する為の現象論的な研究を行う予定である。
加えて、電弱バリオン数生成を実現する最小のセットアップの下での電気双極子モーメントについて現在研究を行なっている。研究計画を立案した当初は想定していなかったが、複数のCP位相のうち電弱バリオン生成を引き起こすCP位相のみに着目して議論をすることで、生成されるバリオン数と観測量の相関がつきやすいということに気がついた。この思想に基づいて、引き続き電弱バリオン数生成のバリエーションに対する多角的な検証可能性を探っていくつもりである。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (8件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Electroweak baryogenesis via top-charm mixing2023

    • 著者名/発表者名
      Kanemura Shinya、Mura Yushi
    • 雑誌名

      Journal of High Energy Physics

      巻: 2023 号: 9 ページ: 153-153

    • DOI

      10.1007/jhep09(2023)153

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 量子誘発されたH± → W± Z崩壊に現れるカストディアル対称性とCPの破れの効果2024

    • 著者名/発表者名
      村 勇志
    • 学会等名
      日本物理学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Topical theory talk: Electroweak baryogengesis2023

    • 著者名/発表者名
      Yushi Mura
    • 学会等名
      Workshop for Tera-Scale Physics and Beyond
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Electroweak Baryogenesis in two Higgs doublet model with alignment scenario2023

    • 著者名/発表者名
      Yushi Mura
    • 学会等名
      Higgs as a Probe of New Physics 2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] New theoretical constraints on the non-decoupling physics with the mass dependent beta function2023

    • 著者名/発表者名
      Yushi Mura
    • 学会等名
      KEK-PH2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Electroweak baryogenesis in aligned two Higgs doublet model and collider phenomenology2023

    • 著者名/発表者名
      Yushi Mura
    • 学会等名
      LCWS2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Mass-dependent beta function for new theoretical constraints on the extended Higgs models2023

    • 著者名/発表者名
      Yushi Mura
    • 学会等名
      Workshop on particle physics and cosmology
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 拡張ヒッグス模型における質量に依存したベータ関数を用いたランダウポールの解析2023

    • 著者名/発表者名
      村 勇志
    • 学会等名
      日本物理学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-26   更新日: 2024-12-25  

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