研究課題/領域番号 |
23KJ1502
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中村 瞭弥 大阪大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | ヘリカル超伝導体 / 原子層接合系 / スピン輸送測定 |
研究開始時の研究の概要 |
物性物理学では、金属や絶縁体など電気的性質による分類、強磁性や常磁性など磁気的性質による分類が行われてきた。近年、分類の一つとして数学のトポロジーという概念が導入され、新たな物性や機能を創出する研究が活発に行われている。そのなかでも、ヘリカル超伝導体は、量子コンピュータや超伝導スピントロニクス分野への応用が期待されている。本研究課題では、ヘリカル超伝導体候補物質を、様々な機能を持つ原子層ヘテロ接合に組み込み、ヘリカル超伝導体の実証と機能創出を行う。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、原子層ヘリカル超伝導体の実証と機能創出を行います。ヘリカル超伝導体とは、超伝導体ギャップ中にヘリカル表面状態を示す準粒子状態が存在する超伝導体であり、量子コンピュータ分野などでの応用が期待されている。しかし、トポロジカル絶縁体のヘリカル表面状態の検出で威力を発揮した角度分解光電子分光は超伝導ギャップに対する分解能は不十分であるなど、ヘリカル超伝導体の実証は困難であることが知られています。そこで本研究課題では、スピン拡散長やコヒーレンス長程度の薄膜が容易に作製できる原子層薄膜に着目しました。原子層薄膜であるヘリカル超伝導体候補物質に対してスピン輸送測定やジョセフソン接合を用いることで、表面状態に起因した現象の観測や機能の創出が可能になります。 本年度は、ヘリカル超伝導体の実証として異常スピンネルンスト効果の観測を目指しました。この効果は通常のs波超伝導体には現れない現象であるため、ヘリカル超伝導体を実証できる有力な実験手法と言えます。しかしながら、観測には基板に対して垂直なスピン蓄積を検出する必要があります。そこで垂直磁化を持つ原子層強磁性体Fe5GeTe2を用いた垂直スピン蓄積の検出法を確立しました。さらに、ヘリカル超伝導体のもう一つの実証方法として、スピン緩和時間の測定も試みました。ヘリカル超伝導体候補物質の母物質であるPtTe2をスピン輸送素子に組み込み、逆スピンホール効果とスピン吸収時のスピン信号の観測を行いました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度はヘリカル超伝導体の実証として、ヘリカル超伝導体候補物質における異常スピンネルンスト効果の観測とスピン緩和時間の測定を目指しました。異常スピンネルンスト効果を観測するには、基板に対して垂直な方向に生じるスピン蓄積を検出する必要があります。そこでまず、垂直磁化を持つ原子層強磁性体Fe5GeTe2のスピン物性の評価を行いました。その結果、面直方向のスピン蓄積を検出できることが分かりました。 それと並行して、PtTe2におけるスピン物性の評価も行いました。PtTe2はヘリカル表面状態を持つディラック半金属であり、PtサイトのIr置換やPd置換によって超伝導を示すことから、ヘリカル超伝導体の候補物質です。スピン輸送測定の結果、明瞭な逆スピンホール効果とスピン吸収時のスピン信号を観測しました。この結果は、ヘリカル表面状態に起因したスピン輸送現象である可能性があるため、今後、電流-スピン流変換効率やスピン緩和時間を定量的に評価する予定です。本実験結果は当初の計画には含まれていなかったものであり、ヘリカル表面状態の実証に向けた重要な成果です。以上の成果から、「おおむね順調に進展している」と評価しました。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、Fe5GeTe2が面直スピン蓄積の検出に用いることができることが分かりました。今後は、原子層ヘテロ接合に必要な接合界面の清浄性に向けて、歩留まり良く接合素子を作製する方法の開発を行います。その後、Fe5GeTe2とヘリカル超伝導体候補物質を積層し、異常スピンネルンスト効果の観測を行います。 また、PtTe2におけるスピン緩和時間を定量的に評価するとともに、Fe(Te,Se)やPdTe2などのヘリカル超伝導体に対してもスピン輸送測定を行います。異常スピンネルンスト効果とスピン輸送測定の二つの観点から、ヘリカル超伝導体の表面状態の実証を目指します。
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