研究課題/領域番号 |
23KJ1512
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分30010:結晶工学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
本田 啓人 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 窒化物半導体 / 導波路 / 非線形光学 / 量子光学 / 波長変換 |
研究開始時の研究の概要 |
スクイーズド光を用いると大規模な量子もつれ状態を量子計算にむけて室温・大気中において生成可能である。また、波長230 nm近傍の遠紫外光は皮膚最表面の角質層で吸収されるため人体に対して安全な殺菌・消毒が可能である。これらの光源の候補として、非線形光学結晶を用いた波長変換デバイスがある。非線形光学結晶のなかでも窒化物半導体は微細加工が可能なためデバイスの小型化・集積化に期待ができ、積層構造を導入することでデバイスの高効率化が期待される。そこで本研究では、窒化物半導体積層構造を用いた波長変換デバイスによるスクイーズド光発生の実証及び遠紫外光源の開発を目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究は窒化物半導体の量子情報処理及び紫外光源応用に向けて、これを用いた導波路型波長変換デバイスの開発を行うものである。本年度は量子情報処理応用にむけたスクイーズド光発生デバイスの構造と材料について検討を行い、デバイスの設計と作製に取り組んだ。 デバイス構造については、もともと想定していたメインコア上にサブコアを設置するという構造から、メインコアの左右にサブコア(サイドコア)を設置する構造に転換することによって、高次モード励振グレーティングカプラをより一般的な非対称方向性結合器に置き換えることが可能となった。2つめのデバイスの材料については、導波路材料としてより一般的な窒化ケイ素(Si3N4)、酸化タンタル、酸化チタンを新たな候補とした。このうちSi3N4についてはすでに成膜が可能な状況である。これらの検討のもと新たな材料と構造における数値解析によるデバイス設計とスクイージングレベルの見積もり行い、デバイス作製に移行した。 デバイス作製では、サイドコア形成のために反応性イオンエッチング(RIE)によるエッチングバックを利用したセルフアライメントプロセスを考案したがデバイスの最終形状の制御が難しかったため、化学機械研磨(CMP)と重ね合わせ描画及びRIEを組み合わせたプロセスに取り組んだ。現在は電子線描画とRIEによってAlNメインコアを形成してから、それをサイドコア材料のSi3N4で埋め込み、CMPで重ね合わせ描画用の面を形成するところまで成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画では、それまで行っていた遠紫外第二高調波発生(SHG)で用いた構造を踏襲して導波路のメインコアとなる窒化アルミニウム(AlN)上にサブコアとなる酸化ハフニウム(HfO2)を積層した構造を提案しつつ、スクイーズド光発生で用いる光パラメトリック下方変換(OPDC)ではポンプ光となる高次導波モードを励振するのに高次モード励振グレーティングカプラ(GC)の集積が必要であること、また加工が難しいHfO2が遠紫外SHG用のデバイス構造に比べて厚くなるため反応性イオンエッチング(RIE)によって導波路形状を彫り込みきるのが難しい可能性があることを指摘していた。これらのうち高次モード励振GCについてはサイドコアを用いた構造に転換することによって、より一般的な非対称方向性結合器に置き換えることが可能となった。またスクイーズド光発生の場合は遠紫外光発生に対して透明なHfO2を用いる必要がなくなったので、導波路材料として広く使われる窒化ケイ素を用いることにした。デバイス構造の設計においては窒化ケイ素に加えて酸化タンタルや酸化チタンについても行い、より高い屈折率の材料をサイドコア材料にすることで高い波長変換効率が得られることを明らかにした。 デバイス作製では、セルフアライメントプロセスを考案し試作を行ったが形状制御に難色を示したため、化学機械研磨(CMP)と重ね合わせ描画及びRIEを組み合わせたプロセスに移行し、CMPによる重ね合わせ描画面の形成まで行った。 当初の計画では本年度にデバイスの設計と作製の完成を目指していたため遅れが生じているが、一方で計画立案時からデバイス構造を更新しつつ設計が完了していること、それに合わせた従来とは異なる新たな作製プロセス開発がすすんだことから、おおむね順調に進展しているものと評価した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、顕微観察による容易な位置合わせが可能なマスクレス露光装置を用いて重ね合わせ描画を行い、反応性イオンエッチング(RIE)によってサイドコアの形成を行う。ここで重ね合わせ描画の位置合わせ精度が不十分な場合、電子線(EB)描画装置を使用する。これと並行して非対称方向性結合器(非対称DC)による高次モード励振を確認し、サイドコアと同時に非対称DCを形成することで光パラメトリック下方変換の実証を目指す。ただし、EB描画による重ね合わせ描画に時間を要する場合は、サイドコア形成に注力し、非対称DCが不要な第二高調波発生による波長変換実証を行う。加えて、本年度中に並行して行っていた窒化アルミニウム導波路を用いた連続波レーザ励起による遠紫外光発生の光学評価を進め、一定の結果を整理できた段階で対外発表を行う。
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