研究課題/領域番号 |
23KJ1528
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分19010:流体工学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
松元 智嗣 大阪大学, 基礎工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 乱流 / 機械学習 / 乱流モデル / 数値シミュレーション / リザバーコンピューティング / シェルモデル / 次元削減 |
研究開始時の研究の概要 |
乱流モデルは乱流の統計性質に普遍性が現れる慣性領域内の任意のスケール以下をモデル化し,数値計算コストの大幅な削減を実現する.近年,急速な技術発展を遂げる機械学習を用いて乱流モデルを構築する試みが数多くなされているが,上記のような乱流モデルを実現した例はなく機械学習を用いた乱流モデリングは発展途上である.乱流モデルの構築には,機械学習を闇雲に利用するのではなく,乱流の物理描像に基づいて応用することが重要である.本研究では近年明らかになった乱流の維持機構に立脚してリカレントニューラルネットワークの一種であるリザバーコンピューティングを適切に応用することで乱流モデルの構築を目指す.
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研究実績の概要 |
本年度は,本研究課題の達成に向けて2つの課題に取り組んだ. 1つ目は,機械学習を用いた乱流モデルの安定性の検証である.近年,機械学習が乱流モデリングに役立つことが多くの研究によって示されている.しかし,機械学習を用いた乱流モデルは不安定になることがある.ここで,不安定とは,モデルを用いて得られる流速場が発散する現象を指す.この原因が,乱流と機械学習のどちらの性質に起因するのかはよくわかっていない.そこで,本研究では,乱流のカスケードモデルであるシェルモデルを対象に,リザバーコンピューティングを用いた乱流モデリングを行い,構築したモデルに対して大規模なパラメータサーベイを実施した.切断波数が0.2/η程度より大きい場合には,安定かつ精度の良いモデルを構築できる.ここで,ηはKolmogorov長である.その一方で,切断波数がそれよりも小さいと,モデルが確率的に不安定になる.つまり,臨界波数0.2/ηを境に,構築したモデルの安定性が切り替わることを示した.また,切断波数が0.2/ηより小さくても,適切な正則化を施せばモデルの寿命が実用上十分長くなることを示した. 2つ目は,乱流の大規模構造のみを解像する場合にも適用可能なモデルの構築である.従来のlarge-eddy simulationで,慣性領域よりも大きなスケールの流れのみを解像すると,直接数値シミュレーションとは異なる結果が得られる.そこで,本研究では,乱流の階層構造に立脚した次元削減手法とリザバーコンピューティングを組み合わせることで,周期箱乱流の最大渦のみの解像を可能にするモデルを構築した.構築したモデルは,最大渦の空間構造や準周期的な変動をよく再現する.さらに,その周期が直接数値シミュレーションの結果とよく一致することを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
乱流の階層構造に則して機械学習を適切に応用することで,周期箱乱流の最大渦のダイナミクスを再現するモデルを構築できた.これは,本研究課題の最終目標である,乱流の大規模構造のダイナミクスを予測する手法の確立に向けた大きな一歩であり,本研究課題はおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,本研究で提案する手法の(1)高Reynolds数の乱流および(2)壁近傍に発達する乱流への適用可能性の検証を行うことで,本研究課題を進展させる. (1)境界条件が固定されている場合,Reynolds数が高くなっても,大スケールの流れの空間構造やダイナミクスはほとんど変わらない.この性質に基づけば,低いReynolds数のデータで学習したネットワークをより高いReynolds数の乱流に転移できるはずである. (2)本年度は,壁面の影響がない理想化された乱流を対象にモデリングを実施した.その一方で,応用上重要となるのは,壁近傍や物体後流に発達する乱流である.これらの乱流では,非一様性により,機械学習の適用が難しくなる.しかし,適切な粗視化法を用いれば,これらの乱流に存在する秩序的な階層構造を同定できることが近年示された.この知見に基づいて機械学習を応用すれば,壁近傍に発達する乱流においても,その大規模構造のダイナミクスを再現するモデルを構築できるはずである. (1)と(2)の仮説の妥当性を示すことがまさに本研究課題の完成を意味する.
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