研究課題/領域番号 |
23KJ1531
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分80040:量子ビーム科学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
JIN YUQING 大阪大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2025年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | パターン欠陥の画像認識 / 高分子溶解挙動 / ハフ変換 / レジスト材料 / 現像液 / 機械学習 / 計測手法の確立 / リソグラフィ技術 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、機械学習、シミュレーション、および実験を用いて、新しい極紫外線リソグラフィ工程で使用されるレジストの開発を提案する。まず、既存の合成ポリマーを用いて計測手法を確立する。次に、開発した解析手法を使用して、新しいレジスト材料の創成に応用しながら、プログラムをアップグレードする。最後に、材料の性能向上を目指して、様々な条件下でパラメータと欠陥の相関を取得し、精度を向上したシミュレーションを活用してプロセス最適化を行い、開発した材料の解像度をシングルナノに至るまで向上させる。得られた結果を、国内外の会議で発表する予定である
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研究実績の概要 |
半導体の回路線幅の微細化は、電子技術の進歩で重要な役割を果たしている。現在のリソグラフィ技術では17nmまでの微細化が可能だが、さらに進めるにはレジスト材料の開発が最重要課題となっている。微細化が進むにつれて、化学反応の確率過程によって生じるパターン欠陥が顕在化し、これが微細化を進める上での大きな障害となっている。これらの欠陥を抑制するには、まず欠陥の生成メカニズムを明らかにし、その後で緩和方法を見つけ出す必要がある。しかし、材料を改良する前には、レジストの性能を正確に評価するための新しい計測方法を確立することも必要である。パターンの微細化が進むと、走査顕微鏡(SEM)で撮影した画像のノイズが増え、コントラストが低下する問題が生じている。従来の手法ではノイズが多い画像を評価できず、新しいレジストの開発に使える情報が限られてしまう。さらに、シミュレーションでパターンの形状を再現する際にも、欠陥の確率的な発生によってシミュレーションでのパターン形状の完全再現が困難であり、比較が困難になっていた。
申請書に記載した「研究実施計画」では、「欠陥形状の自動認識と形状分析による情報抽出」と「モデルベース機械学習を用いたシミュレーション比較」の二つを設定。今年度、ハフ変換という画像解析技術を取り入れ、新たな計測方法を確立し、ラインアンドスペース(L/S)パターンの形状評価を可能にした。ハフ変換を利用して欠陥のある画像から特徴を抽出し、多くの欠陥を含むパターンでも評価できるようになり、シミュレーション結果と実験データの画像を比較する手法を開発した。
この研究成果は論文にもなり、カリフォルニアで開催された2023年10月の会議で発表され、「EUV Tech Student Award」で第2位を受賞した。さらには、2024年1月の第27回産研国際シンポジウムで招待講演に招かれた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はレジストパターンの欠陥形状の自動認識と形状分析による情報抽出手法を開発し、計画通りに順調に進展している。シミュレーションでレジストパターンを得られ、実験で得られたパターンとの比較がスムーズにできるようになった。この技術は国内外の会議で発表され、高い評価を受けて受賞するほどの注目を集めた。このことが業界内での新規性と実用性を証明し、今後の展開に大きな期待が寄せられている。この方法をさらに活用することができれば半導体製造過程での研究効率を向上させることができると考えられる。
しかし、今までの技術は主に画像解析に限定されており、化学的な情報を組み込むことで、さらに実用的な手法へと進化させる必要がある。リソグラフィで使用される高分子や現像液、基板材料などの化学材料に関する詳細な分析を行わないと、材料の改良に対する貢献は期待できない。現段階での研究はこの方向で順調に進行中であり、今後はこの化学情報を取り入れた研究へとシフトしていく予定である。最終的には得られた知見をレジスト材料の改良方針に活用する計画である。
この取り組みが半導体業界における技術進化にどれだけ寄与できるかは非常に期待されている。また、現段階の画像解析技術は主にライン&スペース(L/S)パターンに集中しているが、業界ではコンタクトホールのようなもっと複雑なパターンの解析が強く求められている。1次元のL/Sパターンよりも、2次元のコンタクトホール画像の解析はリソグラフィの理解を深める可能性を持っているため、これからの研究はそうした複雑なパターンにも対応できるよう画像解析技術のさらなる進化を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
レジストの開発において、現像液の変更は重要な課題となっている。特にメタルレジスト向けには、適した有機現像液が必要であり、その開発が進められている。しかし、従来の標準現像液を用いると、レジストの性能向上と微細化の限界に達してしまうという課題が存在する。現像液を変更する際の選択肢が多く、適切な選定にはコストと時間がかかるという問題がある。これを解決するために、現像液とレジストパターン間の関係を研究することが重要である。本研究では、水晶振動子マイクロバランス法(QCM)を使用し、レジストの現像挙動を分析している。従来の研究は主に現像速度に焦点を当ててきたが、同じ現像速度であっても高分子の溶け方には様々なパターンが存在する。現像プロセスでは、多数の小分子と高分子が複雑に相互作用する。この相互作用を解析するには、シミュレーションなどの技術が頻繁に用いられている。しかし、高分子の溶解性が時間の経過と共にどのように変化するか、現像液と溶解した高分子との界面の状態については、実験結果に基づいた詳細な考察が少ない。QCM法を利用することにより、現像速度をリアルタイムで測定すると同時に、高分子が溶解していく過程での現像液のインピーダンス変化を捉えることが可能である。このインピーダンス変化は、溶解境界の粘度と密接に関連しており、この粘度の変化から、レジスト材料と現像液の相互作用に関する貴重な化学情報を得ることができる。今年度は、現像液の種類を変更し、現像挙動の違いを検討するとともに、去年確立した計測手法と機械学習を活用し、現像挙動を分類する方法を開発予定である。データを基に機械学習を進め、高分子の組成や構造に関する提案を行い、新しいアプローチを見出すことが期待されている。
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