研究課題/領域番号 |
23KJ1546
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分06010:政治学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
井坂 圭吾 神戸大学, 法学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
2024年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 腐敗 / 汚職 / 不正行動 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、日本において「どのような行為が政治・行政の『腐敗』と認識されるか」を明らかにすることである。政治・行政の「腐敗」とは、「私的利益のための公職の濫用」として何らかの基準から逸脱した行為のことである。 本研究では、その基準が「一般市民と公務員でどのように設定され・どのように異なるのか」をサーベイ実験から明らかにする。また、学生を対象として就職後までの継続的なサーベイ調査を実施し、その基準に「職業の特質や組織文化がどのように影響するのか」を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本において「どのような行為が政治・行政の『腐敗』と認識されているか」を明らかにすることである。令和5年度は次のように研究を実施した。 まず研究①「政治・行政の『腐敗』と認識される基準が『官民セクターそれぞれでどのように認識され・どのように異なるのか』」について、公務員を一定数含む回答者サンプルを用いて2波の調査を行った。調査では、サイコロの目を予測するというゲームを各波で行い、第2波で実験刺激として「他の参加者の予測成功結果」を表示した。分析の結果として「他の参加者の予測成功結果」を表示した実験群で、公務員の調査参加者はより良く予測が成功したと報告していたことが分かった。本研究の意義として、海外で実証されてきた官民セクターにおける不正行動の差異を、日本においても確認したことにある。日本の公務員は、国際比較では清廉とみなせる一方で、裏金問題のような大規模な不祥事も散見されてきた。本研究によって、大規模な不祥事が発生する条件の一部を明らかにしたといえる。 次に研究②「政治・行政の『腐敗』と認識される基準に対し『職業の特質や組織文化がどのように影響するのか』」について、調査準備は完了したものの年度内に学生を対象とした調査が実施できなかったため令和6年度に実施予定である。 さらにこれまでの研究成果の拡張・発表を行った。修士論文で行った分析について、国会図書館で更なる資料収集を行ったことで分析期間をさらに拡張し、より大規模なデータセットが作成できた。このデータセットを利用した分析から、日本の都道府県における公務員倫理条例等の制定によって、公務員の汚職事件件数が有意に増加することを明らかにした。これは組織文化による「腐敗」認識基準の影響について示唆を与える結果である。この分析結果については、公共選択学会での口頭発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の課題進捗状況としては、「おおむね順調に進展している」といえる。 まず研究①「政治・行政の『腐敗』と認識される基準が『官民セクターそれぞれでどのように認識され・どのように異なるのか』」については、当初予定していた「『腐敗』行動の類型から『腐敗』と認識される基準を考察する」手法から研究射程を広げ「実際の『腐敗』行動の把握から『腐敗』と認識される基準を考察する」手法へと変更を行ったが、予定していた調査実施まで順調に行うことができた。 次に研究②「政治・行政の『腐敗』と認識される基準に対し『職業の特質や組織文化がどのように影響するのか』」について、事務手続き上の予期せぬ障壁から年度内に学生を対象とした調査が実施できなかったものの、準備は無事整ったため令和6年度に実施が可能となっている。 またこれまでの研究成果の拡張し招待により公共選択学会での口頭発表を行えたことは、本研究課題全体の進捗としては当初予定より早い進捗であった。 これらの研究成果を踏まえると、総合して「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は次のとおりである。 まず研究①について、当初予定していた「『腐敗』行動の類型から『腐敗』と認識される基準を考察する」手法について追加的に調査を行う。その後、分析結果をとりまとめた論文を執筆し、令和6年度内に学術雑誌に投稿する。 次に研究②については、令和5年度内に準備を終えているため本調査を実施する。調査内容は研究①と同様のものとし、社会人についての研究①の調査結果や回答者の学部の年次から回答結果を比較し「職業の特質や組織文化がどのように影響するのか」を明らかにする。 さらに令和5年度の研究成果についても、ワークショップや学会での報告を予定しており、学術雑誌への投稿も行っていく。また令和6年度は採用期間の最終年度となるため、研究①と②を含む博士課程後期課程での研究成果をまとめ博士論文を執筆する。
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