研究課題/領域番号 |
23KJ1569
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分45040:生態学および環境学関連
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
平山 一槻 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 環境DNA / DNAメチル化 / バイサルファイトシーケンス / 繁殖 / 産卵 / 魚類 |
研究開始時の研究の概要 |
近年、生物分布や生物量推定の調査法として環境DNA分析が注目されている。しかし不変的なDNA配列の解析では、齢構造や繁殖の有無など解像度の高い調査が困難であり、新しいアプローチが求められる。そこで本研究は、「DNAメチル化修飾」を利用した手法の開発を行う。DNAメチル化修飾は生き物が遺伝子発現を制御する仕組みの一つであり、繁殖活動の痕跡を示す精子や卵に起こる変化、加齢と相関する変化などは重要な生態学的指標になる。環境DNAのメチル化解析により、種類や生物量だけでなく、齢構造、繁殖活動などの情報を非侵襲的かつ効率的に収集することができるため、環境保全や漁業資源管理などの分野での応用が期待される。
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研究実績の概要 |
環境DNAのメチル化解析によってゼブラフィッシュの繁殖活動(配偶子の放出)を追跡できることを水槽実験レベルで明らかにした。さらに野外で魚類繁殖活動の検出を行うためのマーカーとして、精子特異的な低メチル化状態のゲノム領域を探索した。対象種は絶滅危惧1B類のカワバタモロコとした。魚類で共通したメチル化パターンを示す候補遺伝子を過去の研究文献から整理し、カワバタモロコの上皮組織および精子から抽出したゲノムDNAを用いて領域特異的バイサルファイトシーケンスを実施した。カワバタモロコのホメオボックス遺伝子群を含むゲノム領域は精子特異的に低メチル化しており、うちいくつかのCpG塩基部位は殆どメチル化していなかった。
環境DNAにダメージを与えやすく塩基置換を生じさせるバイサルファイト(亜硫酸水素塩)を使用しないメチル化解析手法として、メチル化依存性制限酵素およびメチル化感受性制限酵素の使用を検討した。メチル化依存制限酵素でカワバタモロコのゲノムDNAを処理すると、上皮組織由来の高メチル化DNAは切断されてPCR増幅が起こりにくくなり、また反応時間を延長することで結果が明瞭となった。一方で、精子由来の低メチル化DNAはメチル化依存性制限酵素の影響を受けずPCRによって増幅された。
手法開発と並行して、環境DNAのメチル化解析の有効性を調べるためのサンプリングを実施した。野外環境でカワバタモロコの繁殖活動および個体群齢組成の変化をモニタリングするため、大学構内のビオトープで隔週の採水を1年間継続して行った。水サンプルをろ過、DNA抽出して環境DNA濃度を定量した結果、カワバタモロコのDNAは繁殖期の初夏にかけて増加しており、また精子DNAの放出を示す核DNA/ミトコンドリアDNA濃度比の変化も見られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
いずれの計画も順調であり、当初の予定通りに進行している。
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今後の研究の推進方策 |
バイサルファイトシーケンスを行ったカワバタモロコのゲノム領域中に、環境DNA検出用のプライマー・プローブを設計し、ビオトープの1年分の環境DNAサンプルでメチル化解析(精子特異的低メチル化DNAの検出)を実施する。また、ゼブラフィッシュの卵巣および成熟卵に多く含まれる卵型18SリボソームDNAの配列解析および特異的検出系の開発を並行して行う。
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