研究課題/領域番号 |
23KJ1602
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分15020:素粒子、原子核、宇宙線および宇宙物理に関連する実験
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
高瀬 祐介 岡山大学, 自然科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 宇宙物理 / ハイパーパフォーマンスコンピューティング / GPU / 宇宙マイクロ波背景放射 / インフレーション / 偏光 |
研究開始時の研究の概要 |
宇宙マイクロ波背景放射(CMB)のBモード偏光は宇宙インフレーションの証拠となる原始重力波を探索できる最も高感度な事象の一つであると期待されている。数万個の検出器素子による多重読み出しが可能となった現代のCMB観測では統計誤差よりも、観測装置の不定性を起源とする系統誤差がBモード偏光の観測を阻む支配的な要因であることが近年明らかになってきた。本研究では、この系統誤差を除去する手法を確立し原始重力波探索の感度向上を狙い、GPUクラスタにソフトウェアとして実装することで膨大な時系列データの処理を高速化することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究では宇宙マイクロ波背景放射(CMB)の偏光観測データから測定装置に起源を持つ系統的効果を除去することで高精度に宇宙全天の偏光地図を再構成する手法の開発に取り組む。CMB偏光の高精度地図は宇宙初期の情報を内包しており、インフレーション模型探索の高感度化に繋がる。 偏光は光の進行方向を軸に検出器を回転させることで測定することができ、180度ごとの回転対称性を持つ一方で、系統的効果は異なる回転対称性を持つことが知られている。 本研究では、この特徴を用いて真の偏光と特定の系統的効果を分離する新たな偏光地図作成法を開発した。また回転対称性が偏光と縮退せず、時間変化しない系統的効果に関しては完全に除去できることをシミュレーションで実証した。この結果はインフレーション模型探索の高感度化に向けた大きなマイルストーンとなった。 技術的な課題として、計算時間の肥大化があったが、時系列データ生成と地図作成のアルゴリズムを高速なJulia言語で実装し、GPUで超並列化を施すことでCPUコードと比べて40万倍の高速化を達成した。 交付初年度で偏光地図再構成の高精度化と高速化の両面で十分な研究成果が得られ、特にGPUの利用がCMB研究における数値計算で革新的な加速をもたらすことが明らかとなったことは意義深い。 本研究では2023年度に地図作成手法と、CMB研究におけるGPUの利用法などに関して国際ワークショップで1件のポスター発表、国内学会・研究会で2件の講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究で開発した手法により、期待する精度で系統的効果が除去できることが確認されたことに加え、GPUを用いた計算の高速化が期待以上であったことから計画は順調に進んでいると言える。 開発したコードはGPUを搭載したローカルの計算機でテストした後、宇宙航空研究開発機構(JAXA)のGPU搭載型スーパーコンピュータJSS3へ実装した。当初の予定通り、これらの成果を国際ワークショップでのポスター発表や国内学術会議での口頭発表を通して報告することも達成できており、研究計画全体から見ても大きなマイルストーンとなった。
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今後の研究の推進方策 |
交付初年度に開発したコードと環境を用いてCMB偏光観測で問題となる具体的な系統的効果に本手法を適応することでインフレーション模型探索の高感度化を推し進める。 次世代のCMB偏光観測実験としてJAXAが主導するLiteBIRD衛星があり、特にビームと呼ばれるアンテナパターンの方位角異方性が主要な系統的効果になり得ることが知られている。最終年度では系統的効果のモデルとしてこれを取り入れ、系統誤差を除去することでLiteBIRDが目指すインフレーション模型探索の感度向上を狙う。得られた成果を論文として学術雑誌に投稿するとともに、博士論文としてもまとめあげ、出版することを目指す。
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