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果実における成熟応答の多様化を駆動する進化学的コンテクストとそのモデル化

研究課題

研究課題/領域番号 23KJ1612
研究種目

特別研究員奨励費

配分区分基金
応募区分国内
審査区分 小区分39030:園芸科学関連
研究機関岡山大学

研究代表者

桑田 恵理子  岡山大学, 環境生命科学研究科, 特別研究員(DC1)

研究期間 (年度) 2023-04-25 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
2025年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2024年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
キーワード果実成熟 / クライマクテリック型果実 / トランスクリプトーム解析 / 深層学習 / 発現予測モデル / キウイフルーツ
研究開始時の研究の概要

植物は種分化において独自の形態構造や新規有用成分など幅広い形質を獲得し、一見して共通した形質であっても系統ごとに独立した新しい分子機構を成立させてきた。植物ホルモンであるエチレンを鍵とした幅広い果実作物の成熟様式であるクライマクテリック型成熟においても、鍵遺伝子群の分子機構は系統特異的なゲノム・遺伝子重複により種独自に成立してきた可能性も考えられている。つまり、果実の成熟過程における分子制御の理解においては画一的な共通モデルだけではなく、系統ごとの新規機能分子の探索が重要である。本研究では、種独自に形成された可能性が考えられる果実成熟の多様化機構を明らかにするとともに作物への実装を目指す。

研究実績の概要

深層学習系を基盤として、シロイヌナズナのcistromeデータを学習させることでキウイフルーツ全遺伝子プロモーター配列におけるcisモチーフの包括的予測を行った。さらに、2段階目の深層学習として、多くの種の果実成熟において律速的シグナルとなるエチレンへの応答・非応答性を応答変数に、各遺伝子プロモーター領域における370転写因子認識の物理推移を説明変数として、1次元畳み込みモデルによる深層学習モデルを構築した。Guided-backpropagationによる逆伝播によって発現応答への寄与率の高い転写因子チャンネルおよびその認識配列を可視化した。これまで果実成熟への関与が報告されていないbZIP、G2-like、MYB因子結合cisモチーフの寄与を予測し、ベンサミアナタバコにおけるトランジェントレポーターアッセイによってこの新規寄与cisモチーフの生理学的な証明に至った。
また、被子植物全体をカバーするクライマクテリック型果実における成熟応答の最上流・最下流鍵遺伝子群の進化系統解析と種横断的トランスクリプトームデータの比較解析を行うことで、果実成熟における分子経路の起源とその収斂進化を検証した。最上流鍵遺伝子のエチレンレセプターでは、果実成熟時に高発現する遺伝子が同一のクレード群に分布する傾向にあり、被子植物種間において共通した由来の発現応答機構が存在する可能性が示唆された。一方、細胞壁に直接作用する酵素遺伝子群であるPGはゲノム中の重複遺伝子群のごく少数がエチレン応答しており、果実成熟時に高発現する遺伝子がウリ科・バラ科以外の種で独立した最近共通祖先(MRCA)に由来していた。つまり、果実成熟の最下流経路においては、エチレン応答によって誘導される被子植物共通の細胞壁分解機作を利用しているにも関わらず、その成立は種独自の発現制御メカニズムに基づく収斂進化であることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

深層学習によって果実成熟への関与が報告されていないbZIP、G2-like、MYB因子結合cisモチーフを特定した。ベンサミアナタバコでの一過的発現系を用いた証明実験を行い、深層学習の予測を実証した。さらに、Plant & Food Research との共同研究において、形質転換から6 か月以内で開花・結実に至る早期開花キウイフルーツへの形質転換技術を現地にて共有した。現在、深層学習による解析で予測されたcisモチーフをゲノム編集によりピンポイント改変を行っている。また、Chat-GPTなどの自然言語処理に用いられているtransformerモデルを用いることで、現在まで用いているCNNモデルと同等の予測精度ではあるが、異なる制御系を予測できており、今後、生物学的実証をする予定である。
クライマクテリック型果実における成熟応答遺伝子の進化学的解析では、被子植物全体をカバーする果実の成熟時における経時的なトランスクリプトームデータを取得した。エチレンレセプター・果実成熟に関与する代表的な転写因子・エチレン生合成・細胞壁修飾に関わる遺伝子について発現データ・系統進化解析を統合した。エチレンレセプター・エチレン生合成といったエチレンシグナルもしくはそのフィードバックに関与する制御系は種間で共通した起源を有することが示唆された一方で、転写因子・細胞壁修飾酵素遺伝子では、種間で独立した起源を持っており、収斂進化といった形で発現応答性を獲得していることが示唆された。

今後の研究の推進方策

現在、深層学習によって予測された新規cisモチーフについて、早期開花キウイフルーツへのゲノム編集を行っており、果実での表現型を確認する予定である。Transformerモデルにおける予測因子についてもベンサミアナタバコにおけるトランジェントアッセイ、早期開花キウイフルーツにおけるゲノム編集を行う予定である。
果実応答遺伝子の進化学的解析では、収斂進化をしている遺伝子群の傾向を検証するために、画一的な遺伝子群だけでなく、果実成熟の制御系全体における遺伝子群における解析を実施する予定である。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (5件)

すべて 2024 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件)

  • [国際共同研究] Plant and Food Research(ニュージーランド)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] Collaboration with AI in horticultural science2024

    • 著者名/発表者名
      Eriko Kuwada & Takashi Akagi
    • 雑誌名

      Horticulture Journal

      巻: -

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] 情報学x農学から見るAIゲノムデコード;果実成熟に関わるcis-transネットワークの解明2024

    • 著者名/発表者名
      桒田恵理子, 赤木剛士
    • 学会等名
      日本植物学会第87回大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] Evolutionary commonality and convergence in the molecular pathways of fruit ripening2024

    • 著者名/発表者名
      Eriko Kuwada, Takashi Akagi
    • 学会等名
      Plant and Animal Genome Conference 31
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Explainable AI-based cis-decoding spots kiwifruit-specific fruit ripening regulatory networks2024

    • 著者名/発表者名
      Eriko Kuwada, Kanae Masuda, Kouki Takeshita, Taiji Kawakatsu, Naoko Fujita, Koichiro Ushijima, Seiichi Uchida, Takashi Akagi
    • 学会等名
      XI International Symposium on Kiwifruit
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会

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公開日: 2023-04-26   更新日: 2024-12-25  

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