研究課題/領域番号 |
23KJ1617
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分01020:中国哲学、印度哲学および仏教学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
藤井 明 広島大学, 人間社会科学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | Bhutadamaratantra / BBT / HBT / mantroddhara / 比較研究 / サンスクリット校訂テキスト |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、インドにおける仏教とヒンドゥー教がいかなる関わりを持っていたかを明らかにすることにある。その関わり方の具体的事例とその傾向を調査する為に主に扱う文献が、仏教とヒンドゥー教で同じタイトルを備える文献『ブータダーマラ・タントラ』である。この文献は仏教版とヒンドゥー教版で文献名を共有しており、ヒンドゥー教が仏教の文献を借用し、改変を加えたものであることを現在までに確認している。両宗教の具体的な交渉と関係を研究するには当文献は格好の対象であるが、仏教版とヒンドゥー教版を対照した研究はこれまでほとんど行われてきていない。校訂テキスト作成、読解、比較分析を通して相互関係の解明を行う。
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研究実績の概要 |
本年度は仏教版Bhutadamaratantra(BBT)とヒンドゥー教(Saiva)版Bhutadamaratantra(HBT)双方の比較研究を進める為のテキスト校訂並びに翻訳を進め、成果として提出した。主にHBTの第1章のテキスト校訂とその英訳を論文として発表した。この章はBBTには対応する記述が認められない章である。テキスト校訂並びに英訳の際には研究機関の受入研究員より助言を頂き、その完成度を高めることが出来た。テキスト校訂に伴い、扱う各写本の系統分析も行った。用いた写本は大まかに三つのグループに分類される。文章の欠落や順序から、N2、N3、Bo写本がグループIに分類され、N1がグループIIに分類される。グループIとグループII双方の特徴を併せて備えるBaがグループIIIに分類される。 校訂テキスト並びに英訳の公開に加えて、本年度はHBTを含めたタントラ文献内に見ることが出来るマントラの暗号化の方法であるmantroddharaに関して「タントラ文献における秘匿性の保持方法―マントラとムドラーの暗号化を中心として」という表題で2023年度密教研究会学術大会において発表した。その際、他研究者よりムドラーの暗号的要素についてのコメントを頂き、その内容の詳細を更に考究した上で『密教文化』に論文を投稿した。これによってマントラ、ムドラーの記述双方において、一見しただけでは内容を正確に理解できない記述を確認できた。また、マントラの暗号化の方法に関しては、いくつかの仏教タントラ文献において類似した方法を用いていることが明らかとなり、ムドラーの暗号化に関してはインド密教文献においてはその用語を用いて印を説明する記述は確認することが出来ず、このようなムドラーの暗号化がインドにおいては広くなされていなかった可能性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、HBTの第2章並びにBBTの対応する章の校訂テキスト作成並びに英訳作成、内容比較を進めているが、分量が多く未だ完成に至っていない。しかし、各尊格が描かれるマンダラの記述部分のテキスト校正と英訳と共に順次進めている為、今年度の研究成果として発表出来る見込みである。
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今後の研究の推進方策 |
研究に用いている各サンスクリット写本の読みが確定し難い箇所が複数個所確認できた。チベット訳、漢訳とも対照させて確定作業を行っているが、時代と地域毎に異なる文字を解読することが困難な場面があった。その為、次年度はサンスクリット写本の扱いに精通している海外研究員の方にも助言を仰いで研究を進めていく予定である。主に、HBT2章とそれに対応するBBTの記述部分の校訂テキストと英訳、並びにマンダラの記述箇所を提出予定である。提出する際には、BBTとHBTが相互に比較出来る形で提示する予定である。 また、他研究者との共同研究を通して、申請者が行っている研究に関連する記述や儀礼が他文献に確認された。この儀礼に関して調査を行い、当儀礼の記述が初期、中期、後期の密教文献を通して広く確認された。次年度はこの儀礼に関する論文も併せて提出予定である。
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