研究課題/領域番号 |
23KJ1659
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分32020:機能物性化学関連
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
坂井 ありす 山口大学, 大学院創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2025年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 水分解触媒 / X線吸収分光 / ニッケル触媒 / 吸着作用 |
研究開始時の研究の概要 |
環境負荷の少ない再生可能エネルギーを水素エネルギーへ変換する方法として、水の電気分解反応を利用した水素製造法が存在する。しかし、この方法で用いる水分解反応では酸素生成側の反応効率が低いことから、全体の反応効率を向上させるため、酸素生成触媒の高効率化についての研究が多数行われてきた。本研究では、安価で豊富に存在する遷移金属を利用し、アニオンの表面吸着を応用した高効率な水分解触媒の開発を目指す。触媒の高効率化に向けて、水分解反応下でのX線吸収分光法(XAS)による観測や理論計算による活性状態のシミュレーションを活用する。
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研究実績の概要 |
本研究課題では、水分解反応のための酸素生成電極触媒の高効率化に向けて、反応下における触媒の状態を観測するオペランド観測と全元素を対象とするX線吸収分光(XAS)法を組み合わせた「オペランド全元素観測」を利用して、触媒の反応メカニズムを導出することを目的としている。本年度は炭酸溶液中で電析させたニッケル電極触媒に焦点を当てて、反応下の触媒内のニッケル金属や炭酸イオンの状態の変化を調べた。具体的には、炭酸溶液中でニッケル触媒を電析させて水分解反応を行いながら、放射光施設SPring-8のビームラインでニッケル原子の、UVSORのビームラインで炭素原子のオペランドXAS観測を行い、それぞれの電子状態や局所構造を分析した。また、反応で用いる水溶液をリン酸溶液に交換し、同様に状態の変化を観察した。その結果、このニッケル触媒は通常β-NiOOH型構造をとるところ、活性電位下で炭酸イオンが触媒表面に吸着することによってγ-NiOOH型構造へ変化することが示された。また、リン酸溶液下でも炭酸イオンの吸着によるγ-NiOOH型構造の形成が維持され、酸素生成活性を示し続けることが明らかになった。したがって、触媒表面への炭酸イオンの吸着作用が触媒の活性サイトの発現要因となることが示唆され、そのため酸素生成触媒として機能すると結論付けた。以上の成果は触媒学会や電気化学会で口頭発表を行ったほか、学術誌への投稿に向けて現在論文を執筆している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度では、電解質溶液から遷移金属触媒を電析させ、オペランドXAS観測の分析結果から、活性状態における触媒内全元素の化学状態や局所構造を調べることを目標とした。実際に、炭酸溶液中からニッケル触媒を電析させ、触媒内の各元素に対してオペランドXAS観測を行った。その結果、活性電位下や溶液交換後の触媒の構造変化を捉えることに成功し、電解質イオンの触媒表面への吸着と触媒活性の発現に関する重要な知見を得られたことから、本研究課題は順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降はオペランドXAS観測に加えてXASシミュレーションや量子化学計算ソフトを用いた3次元空間構造の決定および活性化エネルギーの見積もりを計画しており、計算機やソフトウェアの導入、操作の習得を進めている。また、台湾成功大学の研究室を訪問し、反応下における触媒の状態を分析するための新たな測定手法の習得を検討している。
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