研究課題/領域番号 |
23KJ1668
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分17040:固体地球科学関連
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
小澤 佳祐 愛媛大学, 地球深部ダイナミクス研究センター, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 地球科学 / ダイヤモンドアンビルセル / XAFS |
研究開始時の研究の概要 |
鉄は地球マントルの主成分の中で最も重い元素であるため、含有する鉄の濃度が各相の密度に強い影響を与える。そのため、初期地球におけるマグマオーシャンの結晶化のダイナミクスを議論する上で、マグマと結晶相の間の鉄の分配挙動の理解が必要である。一方で、マントル中で酸化鉄は二価と三価が安定であるが、これまでに酸化数ごとに鉄の分配挙動が調べられたことはなかった。そこで本研究では高圧下で鉄の固液分配実験後の回収試料に対して、従来の電子顕微鏡による組成分析に加えてX線吸収分光測定による科学状態分析を行うことで、鉄の酸化数ごとに分配挙動を調べる。
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研究実績の概要 |
高圧力発生装置ダイヤモンドアンビルセルとレーザー加熱装置を組み合わせることで、高圧高温下でケイ酸塩液体-ブリッジマナイト間の鉄の元素分配実験を行った。STXM測定を行うために、集束イオンビームを利用して、回収試料を200nm厚の薄片状に加工した。STXM測定の結果、高圧高温下でケイ酸塩液体であったと考えられるケイ酸塩ガラス部分に鉄の酸化数の不均質が見受けられた。この不均質は、ケイ酸塩液体が急冷されガラス化される段階で、微小なブリッジマナイトの結晶が形成されることに伴い鉄の不均化反応が起こっている可能性が考えられる。そのため、先行研究で報告されている高圧下ケイ酸塩メルト中の鉄の不均化反応の影響は過大評価されていると考えられる。 また、ケイ酸塩液体とブリッジマナイトの間の鉄の分配挙動を考える上で、ブリッジマナイト中の鉄のスピン状態が与える影響を考慮する必要がある。スピン状態を明らかにするために、高圧下でブリッジマナイト中の鉄のXAFS測定を行い、EXAFS解析によってブリッジマナイト中の平均Fe-O距離の圧力変化を調べた。ブリッジマナイトの組成としては、Alを含むもの、含まないものの二つを採用した。その両方とも全鉄中のFe3+の割合は30%であった。結合距離の圧力変化を調べた結果、共に40GPa以上の圧力で急激に結合距離が減少する傾向が見受けられた。この結合距離の急激な減少は鉄のスピン状態の変化に由来することが考えられる。この結果から、ブリッジマナイト中のAサイトのFe3+が報告されているよりも低い圧力でスピン転移を起こしていることが期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ケイ酸塩液体-ブリッジマナイト間の鉄の元素分配実験の回収資料を分析するために、空間分解能の高い走査透過型X線顕微鏡(STXM)を使用する必要があった。そのため、高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリーにおけるSTXMが使用できるビームライン(BL-19A)に課題申請を行い、採択された。配分されたービームタイムを用いて、STXM測定を行い、高圧高温下元素分配実験において、ケイ酸塩中の鉄の酸化数が過大評価される可能性を見出した。また、ブリッジマナイトに含まれる鉄のXAFS測定を行ったところ、スピン状態の圧力変化を示唆する結果が見受けられた。この結果を考慮に入れて、鉄の分配係数測定結果を解釈できる。 上記の結果が得られたことを考慮して、現在までの進捗状況は概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
急冷時に微小なブリッジマナイトの形成によって鉄の不均化反応が進むことが起こりうるか確かめるために、非常に空間分解能の高い透過電子顕微鏡等を利用して、ケイ酸塩液体が急冷してガラス化した部分に微小な金属鉄が析出しているかを調べる。また、今回測定を行った下部マントルの上部に相当する圧力条件だけでなく、マントル最下部に相当する高い圧力でも実験を行い、回収試料中の鉄の酸化状態が圧力とともにどのように変化するか調べることを検討している。 また、ブリッジマナイト中の鉄のXAFS測定については、大まかに鉄のスピン状態が変化している圧力範囲を決定することができたので、今後の実験で、測定する圧力の間隔を狭めることで、より正確に鉄のスピン転移が起こる圧力条件を制約することを目指す。
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