研究課題/領域番号 |
23KJ1717
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分35030:有機機能材料関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
宇治 雅記 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | フォトン・アップコンバージョン / 三重項-三重項消滅 / ダイマー |
研究開始時の研究の概要 |
三重項-三重項消滅に基づくフォトン・アップコンバージョン(TTA-UC)は長波長(低エネルギー)の光を短 波長(高エネルギー)の光に変換する方法論であり、人工光合成や太陽電池、バイオイメージングなどへの幅広い応用が期待されている。しかしながら、従来のTTA-UC系では、発光体色素から与えられる理論限界により UC 効率の最大値は制限されており、実用化には至っていない。そこで本研究では、多重励起状態の制御に基づき、従来の理論限界を上回る発光体色素の開発を目指す。開発した発光体色素を用いて高効率な UC 系を構築し、TTA-UC 材料の実用化を図る。
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研究実績の概要 |
フォトン・アップコンバージョン(UC)は、長波長の光をより短波長な光へ変換する方法論である。フォトン・アップコンバージョン機構の中でも、太陽光程度の低強度光を用いて駆動できる三重項-三重項消滅(TTA)に基づくUC(TTA-UC)は、光触媒や人工光合成、オプトジェネティクスなどへの応用が期待されている。TTA-UCは光を吸収する光増感剤(センシタイザー)と三重項-三重項消滅によって高いエネルギーの光を生成する発光体(エミッター)の2種類の分子によって達成される。我々の研究グループでは、TTA-UC効率の向上に向けて、TTA過程におけるエミッター間の距離・配向の制御が重要であることをシミュレーションにより明らかにしている。しかしながら、従来の研究の多くはエミッター間の距離・配向がランダムな系に限られてきた。そこで、一分子内に二つのエミッター部位を有する新規ダイマー分子を設計し、分子内TTAに基づくTTA過程の高効率化を試みた。 本年度は、二つのエミッター部位が平行配向した新規ダイマー分子の合成に成功した。適切な増感剤と組み合わせることで、ダイマー分子のTTA-UC発光特性の評価を行った。その結果、新規ダイマー分子では分子内TTA過程に基づくTTA効率の向上としきい励起光強度の低下が確認された。したがって、エミッター間の距離・配向の制御がTTA-UCの性能向上に重要であることを、実験的に証明することができた。 さらに、可視光→紫外光(UV 光)、近赤外光・赤色光→青色光への波長変換といった、幅広い波長域におけるTTA-UC材料の開発にも注力しており、UVBエネルギーを有する新規エミッター分子の開発や、金属を含まないTTA-UC材料による生体内オプトジェネティクスに初めて成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は、新規ダイマー分子の設計および合成を行い、分子構造の最適化を図る計画であったが、合成に加え光学特性の調査やアップコンバージョン特性の評価まで行うことができた。二つのエミッター部位間の距離・配向と、アップコンバージョン特性間の相関関係を実験的に調査した例はほとんど無く、本分野における新たな分子設計指針となりうる。今後は、理論化学計算やシミュレーションと組み合わせることにより、さらに詳細な分子設計指針が確立されることが期待される。 加えて、可視光→紫外光(UV 光)、近赤外光・赤色光→青色光への波長変換といった、様々な波長域に対応するTTA-UCシステムを構築することができた。したがって、当初の計画以上に進展したと評価をしている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では平行配向ダイマーがアップコンバージョン特性に与える影響を実験的に調査することができた。しかしながら、アップコンバージョン過程の最大量子効率は、依然として100%にほほど遠い値に制限されている。したがって、本年はさらなるアップコンバージョン効率の向上を志向した新規エミッター材料の開発を試みる。加えて、本研究で提案した平行配向ダイマーを、近赤外光・赤色光~紫外光といった幅広い波長域に適応させ、汎用性の高い分子設計指針の確立を目指す。 また、平行配向ダイマーは、フォトン・アップコンバージョンに限らず他分野の光学材料としても魅力的な光・スピン機能を示すことが期待される。
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