研究課題/領域番号 |
23KJ1724
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分25010:社会システム工学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
内海 忍 九州大学, 総合理工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,000千円 (直接経費: 3,000千円)
2025年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 感染症 / 数理疫学 / 進化ゲーム理論 / 複雑ネットワーク科学 / 遺伝的アルゴリズム / マルチエージェント / 社会物理学 / 最適化 |
研究開始時の研究の概要 |
世界各国の感染症対策の立案にこれほど数理モデルが利用された例は今回のパンデミックが初であるが,接触確認アプリ等との連携効果や社会的要因との相互作用については疑問が浮き彫りとなった.どの対策を,いつ,どこで実施することが社会最適か?当領域に対し,理論・数理分析を如何に現実の社会システムのデザインに結びつけるのかとの期待が一層高まりつつある. 本研究では,人間の意思決定機構を融合したより実社会に近い感染症数理モデルを構築し,現実には不可能な実証実験をスーパーコンピュータ内の人工社会実験で再現する.加えて,感染流行をダイナミックに制御する枠組みを導入し,諸対処策における最も効果的な実施方法を探索する.
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研究実績の概要 |
本研究では,感染症の人口動態を記述する数理疫学に加え,人間の意思決定機構の組み込みに向けた進化ゲーム理論や,人口集団内の物理接触ネットワークの再現に向けた複雑ネットワーク科学,また情報科学や複雑系社会物理学など,研究構想後半で掲げている“感染症のダイナミック制御へ向けた人工社会実験の構築”までには複数の研究分野に跨る準備が必須となる.初年度である令和5年度は,進化ゲーム理論および複雑ネットワークに関する研究から取り掛かり,前者においては個人の資産状況に応じた意思決定機構を再現するモデルを,後者においては人間の社会集団ネットワークが有する3大特徴を同時に発現する従来にないネットワーク生成アルゴリズムを考案し,各種研究集会等で現段階における進捗を報告した.また,数理疫学においても物理接触ネットワークの平均次数を減すことでロックダウンを再現する感染症伝播のマルチエージェントシミュレーションを構築・heuristicなアプローチに基づくロックダウン影響評価を試み,今後の感染症ダイナミック制御へ向けた基礎理論構成を行った.更に,将来的な感染症ダイナミック制御の社会実装を見据え,人口集団へ必要な行動変容を促すデバイス・ソフトウェア開発へ向けた基礎技能習得も並行して実施した. 次年度からは上記の研究成果を踏まえ,感染封じ込め効果を最大化するロックダウン実施タイミング・実施強度を,スーパーコンピュータ内に生成した人工社会システム上での数値解析により探索する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学際的アプローチに基づく本研究課題では特に研究段階前半において各領域毎の準備が必須となるが,数理疫学においては感染症流行期間中におけるロックダウン方策を再現するMulti Agent Simulationの構築とその特性解析を,進化ゲーム理論においては個人の利得(資産)の増減に基づいた意思決定機構を再現するモデルの実装を,複雑ネットワーク科学では人間の社会集団ネットワークが有する3大特徴(scale-free性・small-world性・community性)を同時に発現する従来にないネットワーク生成アルゴリズムを開発し,それぞれの領域で今後の足掛かりとなる十分な成果を得たため.
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究成果を踏まえ,まずは感染症流行期間におけるロックダウン方策に焦点を絞り,感染封じ込め効果を最大化する実施タイミング・実施強度を,スーパーコンピュータ内に生成した人工社会システム上での数値解析により探索する.具体的には物理接触ネットワークの平均次数(1人が何人と物理接触を有するかの平均値)の操作によってロックダウンを再現する感染症伝播マルチエージェントシミュレーションに集団全体のコストを最小化する遺伝的アルゴリズムを組み合わせ,ロックダウン方策実施に関する3つの入力変数(導入と解除のタイミング,および強度)の最適解を探索するシミュレーションプログラムを構築する.
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