研究課題/領域番号 |
23KJ1731
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分27040:バイオ機能応用およびバイオプロセス工学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 敬佑 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2025年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 経皮薬物送達 / 核酸医薬 / 計算化学 / 機械学習 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、核酸送達キャリアである脂質ナノ粒子(LNP)を界面活性剤で被覆し、肌に馴染みやすい油へ分散させることで皮膚浸透性、細胞内送達能を併せ持つLNP/O製剤を創製することを目的とする。 概要として、まずはLNPを構成する脂質を、細胞毒性・遺伝子導入効率の双方から評価し決定する。 その後、LNPを被覆する界面活性剤を計算化学と機械学習を活用し、界面自由エネルギー、HLB値、分子の表面電荷といったパラメータと、実際の粒子の粒子径や安定性を紐づけることで、最適なキャリア構成分子を決定する。 最終的には、動物実験にてコロナウイルス抗原であるRBDをコードしたmRNAを投与することで免疫反応評価を行う。
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研究実績の概要 |
昨年度より、申請者は皮膚を介してmRNA分子を体内へ送達することで、完全非侵襲な経皮mRNAワクチン製剤を創成することを目的とした研究計画を立案した。 具体的な研究計画として、初年度ではまず、申請者は、弾性リポソームと呼ばれる、柔軟な構造を有した脂質二分子膜からなる集合体から着想を得て、LNPへ界面活性剤を添加することで柔軟性を向上させた弾性脂質ナノ粒子 (eLNP) を考案した。調製したeLNPをはいずれの場合でも均一な粒子ピークを示した。さらに、電子顕微鏡での観察を行った結果、ある特定の組成のeLNPのみ特異的な内部構造が確認され、in vitroにおける皮膚浸透試験においても浸透効果を示唆する結果が得られた。 上記に並行して申請者は、さらに薬物の皮膚浸透を促進するための化合物を計算化学・機械学習を活用し行った。まず、既報の化学的浸透促進剤 (CPE) やCPEに類する化合物を経皮送達キャリアへ添加し、FITC-OVAの経皮送達挙動がCPEを添加しない場合とどのように異なるのか比較を行った。約25種類の化合物を用いて比較した結果、脂肪酸の添加でのみ有意にFITC-OVAの浸透を促進することが確認された。次に、ERを目的変数とし、計算科学によって計算された物性パラメータを元に回帰モデルを作成したところ、良好なフィッティングを示した。さらに、特徴量重要度解析を行ったところ、添加剤の酸解離定数が最も重要であることが確認された。既報のCPEで重要とされているアルキル鎖の構造と異なり、CPE分子の持つ電荷状態が重要である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は「経皮mRNA送達の為の新規キャリアの設計」および「計算化学・機械学習を活用し た経皮浸透促進剤の探索」に取り組んだ。申請者は、弾性リポソームと呼ばれる、柔軟な構造を有した脂質二分子膜からなる集合体から着想を得て、LNPへ界面活性剤を添加することで柔軟性を向上させた弾性脂質ナノ粒子 (eLNP) を考案した。調製したeLNPをはいずれの場合でも均一な粒子ピークを示した。さらに、TEM観察を行った結果、ある特定の組成のeLNPのみ特異的な内部構造が確認され、in vitroにおける皮膚浸透試験においても浸透効果を示唆する結果が得られた。
上記に並行して申請者は、さらに薬物の皮膚浸透を促進するための化合物を計算化学・機械学習を活用し行った。まず、既報の化学的浸透促進剤 (CPE) やCPEに類する化合物を経皮送達キャリアへ添加し、FITC-OVAの経皮送達挙動がCPEを添加しない場合とどのように異なるのか比較を行った。 約25種類の化合物を用いて比較した結果、脂肪酸の添加でのみ有意にFITC-OVAの浸透を促進することが確認された。次に、ERを目的変数とし、計算科学によって計算された物性パラメータを元に回帰モデルを作成したところ、良好なフィッティングを示した。さらに、特徴量重要度解析を行ったところ、添加剤の酸解離定数が最も重要であることが確認された。既報のCPEで重要とされているアルキル鎖の構造と異なり、CPE分子の持つ電荷状態が重要である可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
次年度では遺伝子導入効率を向上させるべく、脂質ナノ粒子のイオン化脂質の選定を行う。まず、文献調査から遺伝子導入効率を向上させる脂質分子を選定し、eLNPの遺伝子導入効率の向上を図る。その際にはin vitroの細胞に対してホタル由来ルシフェラーゼや緑色蛍光タンパク質をコードしたmRNAを用いた遺伝子導入効率評価を行う。得られた結果より、良好な遺伝子導入効率を有するキャリアを用い、in vivoにてマウス皮膚に対する経皮投与を行い、遺伝子発現を評価する。
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