研究課題/領域番号 |
23KJ1738
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分34010:無機・錯体化学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
山田 果歩 九州大学, 工学府, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,700千円 (直接経費: 2,700千円)
2025年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 逆水性ガスシフト反応 / NiFe一酸化炭素デヒドロゲナーゼ / CO酸化反応 |
研究開始時の研究の概要 |
現在報告されている水素と二酸化炭素から一酸化炭素を生成する反応(逆水性ガスシフト反応)は、高温高圧条件が必要である。本研究では、自然界で類似の反応を触媒する酵素を模倣した人工触媒を開発し、温和な条件下で進行する逆水性ガスシフト反応の開発を目指す。具体的には、二酸化炭素を一酸化炭素に変換する一酸化炭素デヒドロゲナーゼと、水中でH2から電子を抽出するNiFeヒドロゲナーゼを模倣した触媒を開発する。二つの酵素の共通するNiFe2核ジスルフィド骨格をもつ新規触媒を開発し、天然を模倣した触媒サイクルを構築する。
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研究実績の概要 |
本研究では、天然酵素であるNiFe一酸化炭素デヒドロゲナーゼの構造と機能を範としたモデル錯体による逆水性ガスシフト反応の達成を目指している。これまでの研究では天然酵素と同様である、柔軟なスルフィドで架橋されたNiとFeを反応中心としたモデル合成に取り組んできた。モデル錯体の合成では、配位子の検討、およびその配位子を用いた錯体と水素との反応性の評価を行ってきた。特に、Fe側の配位子は柔軟性の異なる様々なホスフィン2座配位子の検討を行い、水素との反応性の評価を行った。その結果、現在、開発した本研究のモデル錯体は水素と反応し、2電子がヒドリド体として錯体に取り込まれた状態になることを確認することができている。二酸化炭素との反応を行うためにはヒドリド体からプロトンとして脱離することで電子貯蔵体を形成する必要がある。現在、脱プロトン化をするために様々な塩基を用いた検討を行っている。 また研究を進めていく中で、本モデル錯体により一酸化炭素の酸化により一酸化炭素の電子を錯体に貯蔵可能であることが新たに示唆される結果を得ている。この反応は本研究で着想を得たNiFe一酸化炭素デヒドロゲナーゼも行うことのできる反応である。天然での反応機構は現在も議論の最中であるため、本モデル錯体による一酸化炭素の酸化反応のメカニズムを提示することは学術的な観点からも価値のある報告になると考えている。現在は一酸化炭素の酸化反応に関しても反応メカニズムを明らかにすることを目指して研究を行っている。この反応では一酸化炭素と反応した際の中間体を単離および同定に成功しており、反応生成物である二酸化炭素の生成も確認している。更にこの反応は触媒的に進行することも示唆されている。今後は、一酸化炭素の電子を貯蔵した状態の観測を行うことを考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の水素を電子源とした二酸化炭素の還元は報告例のない新規性の高いアプローチである。この課題の達成においては(1)水素の電子を貯蔵可能であり、(2)高い還元力を示す触媒を開発する必要がある。これまで(1)である水素からの電子抽出を目指して研究に取り組んできた。その結果として、水素電子貯蔵体の前駆体であるヒドリド体の合成に成功しており、この結果は本研究課題において大きな進展があったと言える。また二酸化炭素還元触媒を開発する中で、開発した錯体が一酸化炭素の電子貯蔵触媒として機能することを明らかにし、電子貯蔵状態の観測に成功している。生体的に有害であり、触媒毒として作用する一酸化炭素から電子を取り出した例は、1報のみでの報告となっており一酸化炭素の電子を貯蔵した状態の詳細な観測には至っていない。今回の発見は学術的にも工業的にも新規性の高い発見である。今後、反応中間体の単離により詳細なメカニズムの解明を行なっていき、最終的には論文化することを目指す。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で開発した触媒で二酸化炭素の還元を行うためには、現在生成可能であることを確認しているヒドリド体から塩基を用いた脱プロトン化により電子貯蔵体を形成させる必要がある。この反応ステップにおいて用いる塩基の強さや種類を今後検討していき、電子貯蔵状態の形成および二酸化炭素の還元を試みていく。また、同触媒による一酸化炭素からの電子抽出反応は、論文に必要なデータを現在収集している。その中で最も重要な一酸化炭素の電子を貯蔵した状態の中間体の単離および同定を行うことを目指して研究に取り組んでいく。
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