研究課題/領域番号 |
23KJ1748
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分55020:消化器外科学関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
小山 虹輝 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 膵癌 / Autophagy / 樹状細胞 / LAG3 / 免疫微小環境 |
研究開始時の研究の概要 |
膵癌において抗腫瘍免疫療法の有効性は示されていない。我々は膵癌では細胞内分解機構の一つであるAutophagy活性が持続的に高いため、がん抗原となりうるタンパクが分解されてしまい、腫瘍の抗原性が低下しているのではないかという仮説を立てた。癌細胞のAutophagyと抗原性の関係や、それに伴う樹状細胞の活性化との関連を明らかにした報告はこれまでにない。本研究の目的はがん細胞の抗原性と主要な抗原提示細胞であるDCに着目し、新たな免疫活性化機序を明らかにすることで、新規複合免疫療法を開発することである。
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研究実績の概要 |
本研究は膵癌細胞のautophagyを標的とした際の腫瘍免疫微小環境の変化を観察することで、autophagy阻害剤を併用する新規複合免疫療法を開発することを目的として開始された。 R5年度は、膵癌マウス同所移植モデルを用いて、Autophagy抑制膵癌(KPC-shATG7)とコントロール群の腫瘍免疫微小環境を、scRNA-seq解析を用いて解析した。すでに、共移植実験や、in vivo実験で予想していた通り、Autophagy抑制腫瘍において、樹状細胞(DC)の活性化に関連する、Antigen-presenting genes, Migration genes, Maturation genesの遺伝子群の発現が上昇していた。さらに、人工的ながん抗原としてEGFPを用いた実験により、Autophagy阻害剤を添加することで、膵癌細胞内にEGFPが蓄積することを示した。一方で、膵癌細胞とDCの間接共培養ではDCの活性化は認めず、癌細胞内に蓄積したがん抗原がDCの活性化に関与していることが示唆された。 Autophagy阻害剤(CQ)とDC誘導剤(Flt-3L)の併用療法の効果をin vivoで検証したところ、2剤の併用効果は認めたものの、腫瘍縮小は不十分であった。これらの結果から、さらにscRNA-seqによる解析を進めたところ、Autophagy抑制膵癌では、DCの活性化を伴う抗腫瘍免疫を惹起する一方で、TILのExhausted CD8+ TcellのクラスターにおいてLAG3発現の著明な上昇を特徴とする疲弊化が、コントロールと比較してより顕著に誘導されていることが明らかになった。 そこで、CQとFlt3Lに、anti-LAG3抗体を併用した3剤併用療法の効果を検証したところ、膵癌マウス同所移植モデルにおいて、著明に腫瘍を縮小させることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の仮説は、膵癌細胞のAutophagyを抑制することと、樹状細胞の活性化の関係に着目していた。この仮説通り、膵癌細胞のAutophagyを抑制することで、癌細胞内にがん抗原が蓄積することで腫瘍の抗原性が上昇し、抗腫瘍免疫が惹起されることを示したが、一方でscRNA-seqによる網羅的な解析の結果、LAG3発現を特徴とするT cellの疲弊化も誘導されることを明らかにした。Autophagy抑制とDC誘導を組み合わせるのみでなく、Exhausete T cellのLAG3を標的とした治療も有効であることを示すことができた。 以上より、当初の計画以上に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、膵癌細胞のAutophagyを抑制することで、癌細胞内のがん抗原が蓄積し、それによってDCの活性化が誘導されることを明らかにした。一方で、Autophagy抑制によりLAG3発現の著明な上昇を特徴とするCD8+ Tcellの疲弊化も誘導されることが分かり、Autophagy阻害剤(CQ), DC誘導(Flt3L), aLAG3抗体の3剤併用療法が著明な腫瘍縮小効果をもたらすことを明らかにした。現在、これらの知見をまとめて論文投稿中である。 今後は、論文投稿、学会報告を行いつつ、Autophagy阻害による癌細胞内のがん抗原蓄積のビジュアル化や、メカニズムの解明を続けていく予定である。
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