研究課題/領域番号 |
23KJ1783
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分45030:多様性生物学および分類学関連
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
中島 広喜 琉球大学, 理工学研究科 理学系, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 生物多様性 / 甲殻類 / シャコ / 穴居生物 / 系統分類学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では海産甲殻類シャコ類のうち、先行研究と申請者の研究から低緯度の浅海域で急速に巨大化したことが示唆されているトラフシャコ上科において、信頼度の高い系統関係を推定し、体サイズ・食性・捕脚形態の進化史を復元することを目指す。これによってシャコ類の食性の進化、餌を捕獲するために用いる捕脚形態の進化が巨大化の駆動要因であるという仮説を検証する。これにより、深海での巨大化を経て浅海域に再進出している可能性を否定しつつ、種多様性の中心である低緯度・浅海域における海洋生物の巨大化という進化プロセスに迫ることが本研究の大きな目的である。
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研究実績の概要 |
本研究では、トラフシャコ上科シャコ類を中心に信頼度の高い系統樹を推定し、その体サイズ・食性・捕脚形態の進化史を復元する。それによって食性と、それに関わりの深い捕脚形態の進化がトラフシャコ科に見られる体サイズの巨大化を駆動したかどうかを検証することを目的としている。2023年度には、主にトラフシャコ上科を対象に、野外での標本収集や博物館等での標本調査を重点的に進めると同時に、標本の外部形態観察による分類学的検討とDNA部分配列を用いた系統解析を行うことに重点を置く計画であった。このトラフシャコ上科において、体の小さいヒメシャコ科という分類群が知られるが、その中では最大種のシマトラフヒメシャコが日本では沖縄から本州にかけて知られていた。しかし本研究の結果、九州・四国・本州に分布する種は形態的・系統的に沖縄のものと異なる未記載種であることが分かった。本結果は6月に行われた学会にて発表を行った他、2月末にはこれを新種として記載する主著論文を査読付き国際誌に投稿した。その他にも本研究の系統分類学的観点から重要であったオヒロシャコ上科に分類される種を沖縄島で発見した。これは日本で初めてのオヒロシャコ上科の発見であり、重要な知見であった。本結果は8月末に行われた学会で報告し、主著論文として査読付き国際誌に投稿、1月に出版された。以上の結果は、可能な限り多くの種、分類群を検討することで信頼性の高い系統樹推定を行うという本研究の目的の1つにも合致している点でも、重要な発見となった。特に前述のシマトラフヒメシャコは国内で絶滅危惧種としても知られていたが、2種が含まれていたという重要なことが解明できたのは大きな意義がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
状況として、収集した標本の核DNAまたはミトコンドリアDNAなどの複数領域の配列決定について、DNA抽出がうまくいかないものがあったことや、海外産の標本利用について確認が必要なため、想定より進行が遅れている。また野外調査では、食性分析のための新鮮なサンプルを収集し、消化管内容物からDNAを抽出、その解析を始められるように手筈を整える計画であった。しかし、現時点までに冷凍保存できているサンプルは種に偏りがあるほか、解析環境の準備が遅れており着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに手に入れられているサンプルのDNA解析を率先して進める。ミトコンドリアDNAのCOI、16S rDNA, 12S rDNAや核DNAの28S rDNAなどの配列決定を行う予定である。また、現在までに得られている冷凍サンプルから消化管を摘出し、胃内容物のメタバーコーディング解析用に全DNA抽出を行う。海外産の標本利用については、指導教員と相談しつつ優先的に進める。
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