研究課題/領域番号 |
23KJ1798
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分59020:スポーツ科学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
須田 祐貴 東京都立大学, 人間健康科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,000千円 (直接経費: 2,000千円)
2024年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
2023年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | 障害物回避 / 歩行 / 協調性 / 高齢者 / 転倒予防 / 柔軟性 |
研究開始時の研究の概要 |
高齢者の転倒リスクである状況に応じた歩行調整の苦手さの背景には,動作の多様性の喪失がある。申請者は歩行調整能力低下の要因が,日常の衝突回避場面で見せる「衝突回避を優先した,過度な回避」にあると考えた。本研究では過度な回避行動の反復により,動作の多様性が低下するという仮説を,筋骨格系の協調性を定量化できるUncontrolled manifold解析を用いて検証する。さらに,バーチャルリアリティ環境下で状況に応じた回避動作の誘導が動作の多様性を改善し,歩行機能にも波及するかを検討する。これらの成果から,高齢者の歩行調整能力低下機序の一端を解明する。
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研究実績の概要 |
実験1は過度な衝突回避と動作の多様性の関連性を検証することであった。高齢者26名・若齢者21名を対象に段差跨ぎ動作を三次元動作解析装置で計測した。動作の多様性の定量化にはUncontrolled manifold(UCM)解析を適用した。実験の結果,高齢者は若齢者と比較して動作の多様性が低下していること,過度に足を挙げて段差を跨ぐ人ほど動作の多様性が低下しているという関係性を明らかにした。 実験2は,当初は過度な衝突回避の反復により動作の多様性が低下するかを検証する予定であったが,特定の動作を複数回反復するという実験プロトコルの実現が困難であったため,計画を変更した。変更した計画は,段差跨ぎ動作時の多様性を向上させる方法について検討することであった。高齢者15名,若齢者14名を対象に,環境制約によって多様な動作を誘導することと動作の目的(例えば,段差を跨ぐ瞬間のつま先の挙上高)を一定に保つことを両立することで,多様性の向上が図れるという仮説を検証した。実験の結果,環境制約と動作の目的を一定にする仕掛けを両立した条件にて,他の条件よりも多様性が向上することが明らかとなった。 実験3の内容は,Virtual reality(VR) を利用し形状の異なる段差を跨ぐ経験によって動作の多様性が向上するかを検証することであった。本研究内容は,2024年度に実施予定であったが,実験1.2が予定より早く進行したこと,システムの調整がスムーズに完了したことを受け,2023年度内にデータ計測まで終了した。高齢者20名を対象にし,介入群と統制群にそれぞれ10名ずつ分け,VR環境で段差跨ぎトレーニングを実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の目標は実験1,2の実施並びにデータ解析であった。いずれも本年度内に完了している。また,2つの実験がスムーズに進行したことを受け,2024年度に実施予定であった実験3についてもデータ計測まで完了している。実験3では,スクリーン型VRシステムを段差跨ぎ動作用にシステム構築する必要があったが,すでにシステム検証を終え,実験ができる状態となったため,計画を前倒してデータの取得まで進むことができた。以上より,本年度については予定していた以上の進捗があったと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に実施した,実験1.2の結果から,動作の多様性の低下は単調な動きを反復することが関連していることを示した。実験3では,単調な動きから脱却することで動作の多様性を改善できる可能性を検証する。実験3は2024年度に実施する予定であったが,すでにデータ計測まで完了している。このため,2024年度には,データの分析を中心的に行っていく。実験3では,形状の異なる段差を跨ぐことによって,動作の多様性が引き出され,結果的に歩行にも汎化するか検討を進めていく。2024年度は,実験2や実験3で得られた成果を発表することに加えて,より発展的な内容の研究を遂行していく予定である。
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