研究課題/領域番号 |
23KJ1800
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 国内 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
草薙 志帆 東京都立大学, 人文科学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2023-04-25 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,800千円 (直接経費: 1,800千円)
2024年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2023年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
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キーワード | 戦後政治史 / 高度成長期 / 自由民主党 / 党近代化 / 選挙制度改革 / 審議会 / 小選挙区比例代表制 / 政治改革 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、従来自民党政治の盤石な基盤が完成しつつあった時期とされる1960~70年代初頭の衆議院選挙区制改革論議の実態を明らかにし、そうした議論が生じた政治・社会的背景の分析を通じて、高度成長期の自民党政治構造を解明するものである。 高度経済成長に伴う社会変動による農村部地盤の「動揺」に着目し、1973年第2次田中角栄内閣の小選挙区比例代表併立制導入の試みについて問い直すことで、当該期選挙区制改革の動きに対する従来の一面的な評価を塗り替えるとともに、高度成長期自民党政治構造のあり方に対し、社会全体を見据えた総体的な視点から新たな知見を提示することを目指す。
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研究実績の概要 |
2023年度は、①1960~70年代初頭の自民党組織改革論、②1960~70年代初頭の選挙制度審議会における議論、③カクマンダー批判をめぐる世論形成過程、④関係者へのインタビューを中心とした調査、分析に取り組んだ。 ①については、「森山文庫」(栃木県立図書館所蔵)収蔵の党内資料の分析に取り組み、自民党近代化と選挙制度改革をめぐる言説の多様な側面に注目することで、当該期の議論を段階的に捉え直した。その成果は、「「保守の危機」時代における自民党組織改革論―選挙制度改革をめぐる党内議論を中心に―」(『日本歴史』913号、2024年6月)として刊行予定である。 ②については、『選挙制度審議会議事速記録』の網羅的分析に取り組んだ。1961~72年の審議会では、政局の安定と民意の反映という2つの要請を達成すべく、小選挙区制と比例代表制の併せ方をめぐり、理念面・技術面双方から具体的な議論が深められ、多様な区制改革案が提示されていたことを明らかにした。その成果は、近現代史研究会にて口頭報告を行った。さらに、野党の選挙制度改革に対する姿勢の変化も含めた改革論議の動向については、2023年12月、Asia Pacific Conference 2023において英語での口頭報告を行った。これらの報告内容は論文化し、現在学術誌に投稿中である。 ③については、「日本社会党国民運動局旧蔵資料」や野党機関紙誌の分析に取り組み、第2次田中角栄内閣の併立制導入の試みを、人びとが「カクマンダー」として批判する論理について分析した。その成果については、2023年度選挙学会にて口頭報告を行った。 さらに、④1970年代に政治家秘書をつとめた方や政治記者として活躍した方々へのインタビューにも取り組み、①~③の文献資料による実証に加え、口述資料も用いることで、実証水準を高めることに努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画の予定通り、1960~70年代初頭の自民党組織改革や選挙制度改革をめぐる議論の実態分析に取り組み、その成果を査読誌に投稿、また英語での口頭報告を行ったことは成果である。一方で、当初予定していた農村部地盤をめぐる問題の検討について、関連史料の調査・収集はしたものの、その詳細な分析に取り組むことができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
来年度の課題としては、今年度明らかにした②の議論と関連づけて、各論者の選挙制度改革構想の個別分析に取り組み、1960~70年代初頭を通じた選挙制度改革論議のより重層的把握に取り組む。 また、高度経済成長に伴う農村部地盤の「動揺」をめぐる問題の分析に取り組み、今年度明らかにした①②③の問題との相互関連性について、総体的見地から検証することに努める。
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